ベクトルについて(本文)
1 ベクトルとは何か。
ベクトルは一般には、一定の「位置」と「向き」と「長さ」を持った「矢印」で表わされます。
そしてこの「ベクトル」で表現できるものには「速度」、「加速度」、「力」また一定の「エネルギー」などがあります。
それでは「何故」、「速度」、「加速度」、「力」、「エネルギー」などが「ベクトル」で、すなわち「矢印」の「向き」や「長さ」で表わすことができるのでしょうか?
また二つのベクトルは「何故」「合成」して、「一つの」ベクトルと考えることができるのでしょうか?
また「ベクトルの合成」において、「何故」「平行四辺形」を使えば、簡単に「合成」」できるのでしょうか?
2 距離ベクトルについて
その為にはやや遠回りですが、「距離ベクトル」というものを考える必要があります。
「距離ベクトル」といっても特に他の「ベクトル」と特段に変わるものではありません。
「距離ベクトル」もまた「位置」、「向き」、「長さ」の三要素で構成される「矢印」で表されます。
具体的には、まず「起点」となる「O点」(オー点)について考えます。
次に「終点」となる「A点」を定めます。
そしてO点からA点へ向けて線を引き、この向きに「矢印」を付けます。
これで「距離ベクトル」(これを「OA→」と表現するとします。)の完成です。
3 距離ベクトルの合成
しかしこれだけでは何の変哲もありません。
距離ベクトルが意味を持つのは、距離ベクトルを「合成」する時です。
ベクトルを合成する為には、少なくとも2つ以上のベクトルが必要です。
したがってもう一つのベクトルOB→を考えます。すなわちOA→と「共通」の「起点」から、「終点B」へと到るベクトルを考えます。
そしてベクトルOA→とベクトルOB→との、「ベクトルの合成」について考えます。
ここでこの「合成ベクトル」の「終点」を「C点」とします。
すると、その「始点」はベクトルOA→もベクトルOB→もベクトルOC→も、同じ「O点」ですので、結局この「合成ベクトル」はベクトル「OC→」と表現できます。
ここでベクトルの「終点」である、「A点」、「B点」、「C点」を、それぞれ「x y座標」に表わしてみます。
ここでA点のxy座標を「A(x)、A(y)」、B点のxy座標を「B(x)、B(y)」、C点のxy座標を「C(x)、C(y)」とします。
ここで合成ベクトルOC→のx座標の成分C(x)は、ベクトルOA→のx座標の成分であるA(x)にベクトルOB→のx座標の成分B(x)を加えたものです。
他方、合成ベクトルOC→のy座標の成分C(y)は、ベクトルOA→のy座標の成分A(y)にベクトルOB→のy座標の成分B(y)を加えたものです。
すなわち、「C(x)=A(x)+B(x)」、「C(y)=A(y)+B(y)」となります。
したがって、ベクトルOA→とベクトルOB→の「合成ベクトル」はOC→となります。
すなわち合成ベクトルOC→は、「図 距離ベクトルの合成」のようになります。
ここでベクトルOA→を「平行移動」して、ベクトルOA→の「始点」をベクトルOB→の「終点」に移動させるとします。
するとその時、ベクトルOA→とベクトルBC→とが「重なり」ます。
同様にして、ベクトルOB→を「平行移動」して、ベクトルOB→の「始点」をベクトルOA→の「終点」に移動させるとします。
するとこの場合もまた、ベクトルOB→とベクトルAC→とが「重なり」ます。
これにより四角形OACBは、2対の「平行線」で構成されていることになります。
したがって、四角形OACBは「平行四辺形」である、ということになります。
しかしここで注意を要する点は、ベクトルOB→とベクトルAC→とは「同じ」では「無い」という点です。
確かに、ベクトルOB→とベクトルAC→とでは、互いにその「向き」も「長さ」も「同じ」です。
しかしその「始点」と「終点」の「位置」が「異なり」ます。
したがって、ベクトルOB→とベクトルAC→とは、互いに「異なる」ベクトルです。
しかし、このベクトルAC→を「利用」することによって、「容易に」「C点」の「位置」を「作図」できます。
ここに「便宜」ベクトルAC→を「利用」する意味があります。
ちなみにベクトルOA→とベクトルAC→との「関係」は、ベクトルの「合成」では無くて、ベクトルの「連続」とでも呼ぶべきものです。
したがって、この「ベクトルの連続」を「利用」して、「ベクトルの合成」を、「容易に」作図できます。
このことはまた、ベクトルOA→についても同様です。
ベクトルO A→を「平行移動」して、ベクトルBC→の位置に移動させます。
するとこのベクトルBC→の「終点」が、合成ベクトルOCの「終点」であるC点になります。
ここで「ベクトルの3要素」として、「位置」、「向き」、「長さ」を挙げましたが、この「3要素」のうち、「位置」についてはしばしば「省略」されることがあります。
ベクトルの「内容」、「状況」、「利用条件」等によって、それが「可能」な場合があります。
例えば、「ひも」を伝って「張力」が伝達していく場合のように、物体中における「力の単純伝達」においては、考察の「簡略化」のために、「便宜」、一定の条件の下でこのベクトルの「位置」を無視することができます。
他方、「偶力」や「回転」、「モーメント」や「均衡」等について考察する場合は、このベクトルの「位置」が重要となってきます。
ここで「ベクトルの合成」についての考察を終えて、「ベクトルの分解」についての考察へと移ります。しかしその前に、もう少しこの「ベクトルの合成」と、その時に生じる「平行四辺形」について考察を深めたいと考えます。
4 ベクトル平行四辺形について
ここで、ベクトルOA→とこれに連続するベクトルAC→、およびベクトルOB→とこれに連続するベクトルBC→、以上4ベクトルによって構成される「平行四辺形」を「ベクトル平行四辺形」と呼ぶこととします。
そして、「合成ベクトルOC→」の「中間点」を「M点」とします。
するとこの「M点」は、「線分AB」の「中間点」でもあることが分かります。
したがって「線分AM」と「線分BM」とでは、その「長さ」が「同じ」です。
このことは極めて重要であり、次に考察する「ベクトルの分解」において、考察の「根本的基礎」となります。
またちなみにこの「M点」はベクトルOC→の中間点、したがって「線分OC」の「中点」です。
そしてこの「M点」は「線分AB」の「中点」でもあります。
したがってこの「M点」は、この「ベクトル平行四辺形」そのものの「中心」である、ということが、できます。
以上を踏まえて「ベクトルの分解」についての考察へと移ります。
5 ベクトルの分解について
ここで先の図と同様な次の「図 距離ベクトルの分解」に移ります。
ただしここでベクトルOF→は「合成ベクトル」ではなくて、「分解されるベクトル」、すなわち「被分解ベクトル」であるものとします。
またベクトルOD→およびベクOE→もそれぞれ「分解ベクトル」であるものとします。
ここで、一つの「被分解ベクトル」OF→に対応する「分解ベクトル」OD →及びOE→は、は様々なベクトルが考えられます。ただし、その「被分解ベクトル」と各「分解ベクトル」の「始点」は「同じ」O点です。
ここに「被分解ベクトル」に対応する「分解ベクトル」の「多様性」があります。
しかし、それではこの「分解ベクトル」はただ「多様」であって、そこに一つの規則なり法則なりが存在しないのか、が問題となります。
そしてその「法則」がもしあるならば、それは一体どのような法則であるかが、問題となります。
ここで被分解ベクトルOF→に対応する分解ベクトルOD→及び分解ベクトルOE→には、ベクトルであるので「向き」があります。したがって、ベクトルOD→及びベクトルOE→は、それぞれ被分解ベクトルOF→に対して、一定の「角度」を有します。
ここでこのベクトルOD→がベクトルOF→に対して成す「角度」、すなわち角度DOFをθ(シータ)とします。
またベクトルOE→がベクトルOF→に対して成す「角度」、すなわち角度EOFをθ′とします。
これで、被分解ベクトルOF→に対する分解ベクトルOD →と分解ベクトルOE→の成す「角度」が、まず定まりました。
ここで次に問題となるのは、これによって、分解ベクトルOD →また分解ベクトルOE→の「終点」もまた定まるのか、ということです。
ここで先程の「図 距離ベクトルの分解」が「意味」を持ってきます。「図距離ベクトルの分解」において、ベクトルO Aの終点はA点でした。またベクトルOB→の終点はB点でした。
そして、その終点Aと終点Bとが成す「線分AB」は、ベクトルOC→の「中点」を通り、かつ、「線分AM」と「線分BM」の「長さ」は「同じ」でした。
したがって、被分解ベクトルOF→に対応する分解ベクトルOD→また分解ベクトルOE→を特定する為には、先ずは被分解ベクトルOF→の「中点」Nを特定する必要があります。
そして次に、この中点Nを貫いて通る「線分DE」を特定する必要があります。
そして更に、「線分DN」と「線分EN」との「長さ」を「同じ」にする必要があります。
以上を踏まえて、「ベクトルの分解」について考察を進めます。
まず、ベクトルOFの中点Nを考えます。
次にその中点Nを通る線分DEを考えます。
ここでD点はベクトルOD →の終点であり、E点はベクトルOE→の終点です。
ここでまず、D がE点に比べてO点に「近い」ものとします。
すると線分DE上の線分DNと線分ENとを「比べると」、線分DNの方が線分ENより「短く」なっていることが分かります。
すなわちこの場合において、「線分DN<線分EN」となっています。
そして次に、このD点が角度θ、すなわち角度DOFを「変えることなく」、O点から「離れて」いくものとします。
するとこの結果、「線分ED 」は、回転しながら「長さ」を変えていきます。
その結果、この線分ED 上にE点も移動し、E点はD点とは「逆に」O点へと「近づいて」いきます。
ただし、この場合において角度θ′(角度EON)もまた「変わらない」ものとします。
この結果、全体として線分D Nは次第にその長さを「増し」、逆に線分ENはその長さを「減らし」ていきます。
そして、「ある1点」において、線分DNと線分ENとの長さは、「等しく」なります。
すなわちこの場合において、「線分DN=線分EN」となります。
そしてその後もD点がO点から「離れて」いくとすれば、今度は線分DNの方が線分ENに比べて「長く」なっていきます。
すなわちこの場合において、「線分DN>線分E N」となります。
6 分解ベクトルにおける角度決定性とベクトル同時性
以上のことから次のことが分かります。
線分DNが線分ENに「等しく」なる点、すなわち「線分DN=線分EN」となるようなD点は、角度θ(角度DOC」)が「一定」であれば、「ある一点」に収束・決定すること、が分かります。
②そして、このD点が「ある一点」に収入・決定する決果、ベクトルOD→の「長さ」が決定します。
③そして、このベクトルOD→の向き(角度)、位置(始点及び終点)、「長さ」という「ベクトルの3要素」が「決定」することによって、ベクトルOD→そのものが決定します。
④このことにより、同時にまたベクトルOE→もまた決定します。
7 ベクトルと作図
以上により、被分解ベクトルOF→に対して、分解ベクトルOD→と分解ベクトルOE→の角度θと角度θ′が定まるだけで、分解ベクトルOD→及び分解ベクトルOE→とが「一義的に」かつ「同時に」「決定」します。
この分解ベクトルの「角度」が決定すれば、分解ベクトルそのものが決定することを、「分解ベクトルにおける角度の決定性」あるいは単に「角度決定性」と呼ぶこととします。
また、この際、分解ベクトルOD→が定まれば「同時に」分解ベクトルOE→が定まり、逆に、分解ベクトルOE→が定まれば「同時に」分解ベクトルOD →が定まります。
このことを「分解ベクトルにおける同時性」あるいは単に「ベクトル同時性」と呼ぶこととします。
したがって、「ベクトルの分解」において、その「分解ベクトル」は、「角度決定性」と「ベクトル同時性」を持ちます。
この「角度決定性」により、角度さえ決定すればその分解ベクトルを一義的に決定・特定することができます。
また、「ベクトル同時性」によって、分解ベクトルの「一方」さえ決定すれば、分解ベクトルの「他の一方」もまた一義的に決定します。
以上のことは、「思考の省略化」に大きく貢献します。
さてこれに加えて「作図」を用いれば、「複雑な計算」をすることなく容易に分解ベクトルを決定・特定することができます。
ここで「図 距離ベクトルの分解」において、線分D N=線分EN、線分ON=線分CN、角度DNO=角度ENOです。したがって、三角形DONと三角形ECNとは、二辺一角を同じくするため「合同」です。
同様にして、三角形EONと三角形DCNもまた「合同」です。
ここで三角形DOEは三角形DONと三角形EONが「合体」したものです
また三角形DCEは三角形DCNと三角形ECNとが「合体」したものです
したがって三角形DOEと三角形DCEもまた「合同」です。
ここで「四辺形DOEC」は、三角形DOEと三角形DCEとが「合体」したものです。
したがってこの四辺形DOECは、「平行四辺形」となります。
したがって、D点を求める為には、C点からベクトルOE→に「平行」に「直線」引いていきます。そしてこの「直線」が、ベクトルOD 上の「直線」が「交差」する点を求めます。
するとその「交差点」が、D点となります。
ここでD点はベクトルOD→の「終点」ですので、分解ベクトルOD →が決定・特定されます。
同様にして、E点と分解ベクトルOE→を求めることができます。
以上により、「被分解ベクトル」に対する「分解ベクトル」を求めるには、「作図」の手法を用いれば、被分解ベクトルの終点から、単純に「平行線」を二本引くだけで良い、ということになります。
8 距離ベクトルの転化と展開
以上により、「ベクトル」を用いれば、「複雑な計算」をすることなく、「作図」のみで、容易に「分解ベクトル」の両方を決定・特定することができます。
そして以上の考察は全て「距離ベクトル」について考察したものです。
しかし、この「距離ベクトル」の考察は、一定の条件の下で「速度ベクトル」、「加速度ベクトル」、「力ベクトル」、「エネルギーベクトル」にも適用できます。
それは、これらのベクトル「全て」が、その「距離に「基礎」を置いているからです。
ここで「距離」をs、時間をt、速度をv、加速度をa、質量をm、力をf、エネルギーをEとすると、次のようになります。
s=v×t よって
v=s÷t・・・・・① (※このsは「等速運動」における距離sです。)
s=1÷2×a×t2 よって
a=2×s÷t2・・・② (※このsは「加速度運動」における距離sです。)
f=m×a=m×2×s÷t2・・・③
E=f×s=m×a×s=(m×2×s÷t2)×s=2×m×s2÷t2・・・④
ここで時間を「一定時間」とし、その「時間」を「1」とすると、
式①、②、③、④はそれぞれ、次のようになります。
v=s・・・⑤
a=2×s・・・⑥
f=2×m×s・・・⑦
E=2×m×s2・・・⑧
となります。
ここで「一定時間」において、速度v、加速度a、力f、エネルギーEは「全て」その内部に「距離s」を含み、「距離s」をその「基礎」としています。
したがって「距離」における「関係」は、速度、加速度、力、エネルギーにおける「関係」に適用・応用できるはずです。
したがって、「距離ベクトル」を、速度、加速度、力、エネルギーに適用・応用できるはずです。
そして実際に、速度、加速度、力、エネルギーについて「ベクトル」を適用できます。
このように、「距離ベクトル」は、「速度ベクトル」、「加速度ベクトル」、「力ベクトル」、一定の「エネルギーベクトル」に「転化」します。またこれらの転化により、「距離ベクトル」は速度、加速度、力、エネルギーなど、物理学上の様々な分野へと「展開」する、ということが言えます。
9 力ベクトルとエネルギーベクトル
しかしとは言え、力fには「距離s」だけでなく「質量m」も含まれています。
したがって実際に「力f」について考察する場合には、この「質量m」を斟酌して適用・応用することが必要となってきます。
しかし、「同一の物体」に対して、「複数の力」が作用する場合には、ここにおける「質量m」の値は「同一」なので、この場合、「力ベクトル」は「加速度ベクトル」と同様に扱うことができます。
他方「エネルギー」のベクトル化には、更に一層注意が必要です。
式⑤、⑥、⑦における「s」は、一次のsですが、⑧式における「s」は「s2」と2次の「s」となっています。
ここで例えばEを「位置エネルギー」とすれば、
E=m×g×h (gは重力加速度、hは高さ)ですが、ここで高さhとは、結局上下方向のsなので、位置エネルギーは結局E=m×g×s となります。
しかし、Eを「運動エネルギー」とすれば
E=1÷2×m×v2=1÷2×m×s2÷t2 より t=1とすれば、
E=1÷2×m×s2 となり、sが2次の値となります。
したがって、「距離ベクトル」を「運動エネルギー」に適用・応用するのは、やや困難と考えられます。
さらにEを「熱エネルギー」と考えれば、もはや熱エネルギーを「ベクトル」として捉えるのは極めて困難と考えられます。
以上により「一般的」には、「距離ベクトル」を適用・応用できるのは、「速度」、「加速度」、「力」ということになります。
したがって「物理学」の分野においては、「速度ベクトル」、「加速度ベクトル」、「力ベクトル」が成立し、「距離ベクトル」と同様に扱うことができます。
10 力ベクトルと作用・反作用
ここで「力ベクトル」については、「距離ベクトル」の適用・応用を踏まえながら、さらにもう一歩考察を進める必要があります。
何故ならば、一般に「力」には「作用・反作用」が伴うからです。
したがって「力ベクトル」においては、単純に「距離ベクトル」を当てはめるだけでは足りません。
「距離ベクトル」を適用・応用しつつも「作用・反作用」をベクトルに組み込むことが必要となってきます。
「力」による「作用」があれば、それに対して「クーロン力」が発動し、その結果、「反作用」が生じます。
ここで「作用する力」を「作用力」とし、「反作用によって生じる力」を「反作用力」と呼ぶこととします。
すると「作用」によって「作用力」が生じ、「反作用」によって「反作用力」が生じます。
そして、この「作用力」も「反作用力」も同じ「力」であり、しかもその力の大きさは「等し」く、その「向き」は「逆」なのです。
したがって、作用「力」の「向き」を「矢印」で表わすとするならば、反作用「力」の「向き」もまた「矢印」で表わすべきこと、となります。
しかし、一般に「ベクトル」の「矢印」は「作用力」の「向き」のみを表わしています。
しかしこれでは、「作用・反作用」を踏まえて正確に力を分析することが困難となります。
したがって「力ベクトル」においては、ベクトルの「片端」だけではなく、その「両端」に「矢印」を配置する必要が生じてきます。
ここで、ベクトルの「片端」にだけ「矢印」のあるベクトルを「片ベクトル」と呼ぶこととします。
そして今述べた、ベクトルの「両端」に矢印のあるベクトルを「両ベクトル」と呼ぶこととします。
11 張力ベクトルと押力ベクトル
さてこの「両ベクトル」には、その「矢印」が二つあり、かつその「向き」は「作用・反作用」により、互いに「逆向き」となっています。
ここでさらに分析を加えると、この「両ベクトル」は「二種類」あることが分かります。
すなわちこれらの「矢印」が互いに「内向き」となっている場合と、これらの「矢印」が互いに「外向き」となっている場合との、二種類があることが分かります。
ここで「矢印」が互いに「内向き」となっている場合とは、このベクトルにおいて、「収縮」しようとする「張力」が働いていることが分かります。
したがってこの「内向き」矢印のベクトルを「張力ベクトル」と呼ぶこととします。
他方「矢印」が互いに「外向き」となっている場合とは、このベクトルにおいて、「拡張」しようとする「押力」(おうりょく)が働いていることとなります。なおここでこの「押す力」を「圧力」と呼ばず、あえて「押力」と呼ぶのは、「圧力」とは厳密には「単位面積あたりに作用する力」を意味していますが、ここでの考察においては「単位面積」にはかかわりが無いからです。
したがってこの「外向き」矢印のベクトルを「押力ベクトル」と呼ぶこととします。(
しかしこのままでは、この「張力ベクトル」と「押力ベクトル」をベクトルとして活用できません。そこでこの「張力ベクトル」と「押力ベクトル」を「記号化」することとし、「張力ベクトル」の記号を「→●←」とし、「押力ベクトル」の記号を「←●→」とします。
これにより「張力ベクトル」と「押力ベクトル」をを「作図」に組み込むことができます。
しかしそうすると今度は、「作用・反作用」の「果てしない連鎖」が生じる場合があります。
ですがこうした「作用・反作用」について無限に考察し続けることはできません。したがって考察の便宜上、どこかでキリをつける必要が生じます。そしてこの場合には「片ベクトル」を使用して、キリをつけることとなります。
したがって実際の考察・分析においては、この「両ベクトル」と「片ベクトル」とを「使い分けて」、考察を進めることとなります。
なおまたf=m×aにより、複数の力が「同一」の物体に(したがって同一の質量に)作用する場合には、この「質量m」を考察から省略することができます。するとこの時「力ベクトル」は「加速度ベクトル」に転換することができ、思考を省力化することができます。
以上をもって。ベクトルについての考察を終え、次の考察へと移ります。