てこの「本質」について

(本文)

 

1 「てこ」の原理の本質とは何か

 

「てこ」の原理とは、一般に「物体にかかる力は距離に反比例する」という原理とされています。具体的には、次の図のように作用することを言います。

 

(図1)

 

【文書に図面をうまく貼付できないため、ご面倒ですが、参照図(てこ)をご参照ください。】

 

 ここで支点O(おー)点から作用点P点までの「距離」をaO点から力点Q点までの「距離」を、bとし、作用点に働く力をF1、力点に働く力をF2とします。

 

 すると、おなじみのa✕F1=b✕F2 ・・・

 

となります。

 

 ここで問題なのは、「何故そうなるか」ということです。

 このページでは、この「てこの原理」の「本質」を順次解明していきます。

 

 そして、図1に示された「てこの原理」は、物体と物体との「つりあい」の場合にも応用されます。。

 具体的には、次の図のようになります。

 

(図2)

 

【文書に図面をうまく貼付できないため、ご面倒ですが、参照図(てこ)をご参照ください。】

 

 ここでは、「人が」力を加える「力点」や、人のその力によって「作用」を生ずる「作用点」という概念がなくなります。

 代わって、「重点」という概念を用いることとします。

 

 そしここで、てこの物体Aの「質量」をW1kg、物体Bの「質量」をW2とします。

 

 ここで、物体A、物体Bがともに「静止」しているとすれば、ここに生じる「重力」は次のようになります。

 質量Aの物体AにはW1キログラム重の力(重力)が生じる。

 質量Bの物体BにはW2キログラム重の力(重力)が生じる。

 

 したがって、物体Aと物体Bとの間の「質量の関係」を、物体位Aと物体Bとの「力(重力)の関係」に変換することができます。

 したがって、式の「てこの原理」の公式を、「質量のつりあい」の公式に「変換」できます。

 すると、次のような公式となります。

 

  a✕W1=b✕W2   ・・・・

 

 以上、②式のようになります。

 

 このように、①式を変換して②式を導くことまではできましたが、「何故そうなるのか?」については、依然「謎」のままです。

 

 このページでは、この謎を順次解明していきます。

 

 

2 「にんじん」の不思議

 

 式、また②式の「謎」の解明の前に、まずこの①式なり②式が、とりわけ②式が、人間の「感覚」からかなり「奇妙」なものであることを、お示ししたいと思います。

 

 ここに、姿ぶりの良い1本の「人参」があるとします。

 そしてこの「にんじん」を、図のように左右の「バランス」と取れるところ吊り下げて見ます。

(図3)

 

【文書に図面をうまく貼付できないため、ご面倒ですが、参照図(てこ)をご参照ください。】

 

 そして、そのバランスの取れた場所で、その「にんじん」を「二つ」に切り分けて見ます。

 そこで、この人参の、「あたま側」と「しっぽ側」とでは、いったいどちらが重いでしょうと問いかけて見ます。

 すると、かなりの人が、「しっぽ側」だとか、「どちらも同じ」と答えます。

 「あたま側」と正答する人は少ないのです。

 

 このように、「人」の「感覚」にとって、この式は、かなり「奇妙」なものなのです。

 もっとも、「にんじん」は「立体」ですから、式が単純に当てはまるものではなく、②式を元に左右のモーメントの「積分」をしなくてはなりません。

 しかしその場合であっても、「考え方」については、②式とまったく共通するものがあります。

 

 

3 「つりあい」の不思議

 

 さて、図2と式とにもどります。

 この図2は不思議に満ちています。「実験」をすれば、式が成り立つことが分かります。

しかし「何故」そうなるのか。このことがなかなか分かりません。

 しかもこの②式は、「計量」」・「計測」の「基本中の基本」なのです。

 

 

 根本的な「不思議さ」は、物体Aと物体Bが「空中」にあることです。

 もっとも、この物体Aも物体Bも、支点O点によって、支えられてはいます。

 しかしそれであっても、「直接」には、この物体Aも物体Bも、「空中」にあります。

 

 そこで、「空中」から一体どんな「力」が、物体Aや物体Bに生じるのだろうかと考えてしまいます。

 

 そこで次に、支点O点から物体Aまでの距離aと、支点O点から物体Bまでの距離bとの関係に目が行ってしまいます。

 すると次に、支点O点を中心に線分PQが「回転」する時の、P点及びQ点の「軌跡」や、P点やQ点に生じる「加速度」の関係に目が行ってしまいます。

 確かに、P点やQ点の「軌跡」に着目すれば、P点に生じる「軌跡」の長さはaに比例し、Q点に生じる「軌跡」の長さはbに比例します。

 これに「仕事」(エネルギー)の考え方を応用すれば、物体Aによる「仕事」と物体Bによる「仕事」とが一致する、したがって②式が成立する、との一応の結論を出すことはできます。

 しかしこれでは「証明」が「間接的」で、どうも満足ができない、と思えてしまいます。

 

 P点及びQ点に生じる「加速度」についてはどうだろうか。

 P点及びQ点に生じる「加速度」は、a及びbに比例する、そしてこの加速度が「抵抗」となって、それぞれの「重力」と吊り合うのだろうか、とも考えてみました。結論は、「重力」と吊り合うだけの「抵抗」は生じない、ということでした。

 

 あれこれ考えた結果が、全て「徒労」に終わりました。

 

 その時、「奇策」はない、やはり「鉛直抗力と重力」との本質的関係を踏まえながら、この「吊り合い」の問題を解決するほかない無い、との結論に至りました。

 

 その時初めて、はるか遠くの山の頂へとたどる道がようやく見え始めてきました。

 

 

4 「さおの原理」と「てこの原理」

 まずここで、「てこの原理」には「、第1種てこ」から「第3種てこ」まで「3とおり」の型がありますが、ここでは、その「基本」となる「第1種てこ」を中心に考察します。

 「第1種てこ」とは、要するに「支点」が、「力点と作用点の間」や「重点と重点の間」にある「てこ」のことです。

 

 

 さて「てこの原理」また①式・②式の分析・解明を行う中で感じたことは、この「てこの原理」の要因が「一様」ではない、ということです。

 ①・②式という「結論」については、ほぼ「同じ」結論となりますが、「状況」によって、その結論に至る「過程」が微妙に異なっていることが分かってきました。

 

 「てこ」とは、要するに「一本の棒」です。

 ここでは、この1本の棒を、支点で「吊るす」場合には、「さお」と表現します。

 そしてまたここでは、この1本の棒を、支点に「載せる」場合を「てこ」(狭義の{てこ})と表現します。

 

 また、この「さお」を用目的」によっても区分します。

 この「さお」を「計量」・「計測」用として、要するに②式として、使用する場合は、「計測さお」と表現します。

 他方、この「さお」を重たいものを動かすときに使用するような場合は、「力学さお」と表現します。

 同様に、「てこ」も「計測てこ」と「力学てこ」とに区分します。

 この「計測さお・てこ」と「力学さお・てこ」とに「区分」する「区分の利益」は、「計測さお・てこ」が基本的に「吊り合い」(均衡)を利用するのに対し、「力学さお・てこ」は基本的に「吊り合わないこと」(不均衡)を利用することにあります。

 

 また「吊り合い」の「要因」についても、「張力」・「押力」・「弾力」等があり、なおかつそれらが「複合」する場合もあります。

 

 ということで、状況は様々に複雑となりますが、それらの全てについては考察し切れませんので、基本的なパターンについてのみ考察を進めて行きます。

 

 まずは、「張力」と「さお」との関係で、考察を進めていきます。

 

 

5 「水平均衡」について

 

 まず、「さお」の「吊り合い」の一番単純な形態について、下図を見ながら考えてみます。

 下図では、支点Rから重点Pへ、また支点Rから重点Qへと、それぞれ「ひも」が伸びています。

 ここでそのそれぞれの「ひも」の「長さ」は同じだとします。

 また、この「さお」は、その中心点をO(オー)点とし、中心点O点から重点Pまでの長さをa、中心点Oから重点Qまでの長さをb、とします。

 するとa=bとなっています。

 また、物体Aの「質量」をW1、物体Bの「質量」をW2とし、W1=W2であるものとします。

 そして物体Aに生じる「引力」をU1、物体Bに生じる「引力」をU2、とします。

 すると、W1=W2ですので、U1=U2 となるはずです。

 

 こうすると、物体Aと物体Bは、「吊り合う」はずです。

 しかし、それでは一体「何故」「吊り合う」のでしょうか?

 これを、解明するために、図4を「ベクトル図」に転換してみます。

 

 

(図4)

 

【文書に図面をうまく貼付できないため、ご面倒ですが、参照図(てこ)をご参照ください。】

 

 

 次の図が、図4を転換した「ベクトル図」となります。

(図5)

 

【文書に図面をうまく貼付できないため、ご面倒ですが、参照図(てこ)をご参照ください。】

 

 この「ベクトル図」を見れば明らかなように、「引力」によって、「落下」しようとする物体Aと物体Bを、まず「ひも」RPと、「ひも」RQとが、「張力」によって吊り上げています。

 すると物体A及び、物体Bには、それぞれに作用する「張力」と「引力」とによって、それぞれ「さお」の中心点Oに向かおうとする「合力」が生じます。

 そしてこのそれぞれの「合力」を、まずは「さお」の「押力」が支えます。

 しかしここでもし、合力POが合力QRより「大き」ければ、さおの中心点Oは右にずれようとします。

 逆に、合力QOが合力POより「大きい」ければ、さおの中心点Oは左にずれよとします。

  いずれにしても、この場合には、さおは「水平」にはなりません。

 

  しかし上記の場合は、左右の「合力」は「等しい」結果、さおの中心点Oは、右にも左にもずれず、結果、さおは「水平」を保っています。

 

 次に、ここでもし。何らかの理由で合力POが、さおの中心点Oを目指さず、例えばやや「右肩上がり」のベクトルとなったらどうでしょうか。その場合はP点に対して、やや「上向き」の力が作用する結果、P点が「上」に向かおうとするでしょう。すると、この場合にも、さおは「水平」にはなりません。

 逆に、もし何らかの理由で合力POが、さおの中心点を目指さず、やや「右肩下がり」のベクトルとなったらどうでしょうか。この場合は

P点に対して、やや「下向き」の力が作用する結果、P点が「下」に向かおうとするでしょう。すると、この場合にも、さおは「水平」にはなりません。

 

 以上、さおと吊り合いの「基本形」について、考察してきました。

 この「基本形」においては、前提条件として、W1=W2であり、かつa=bでした。この場合においては、「さお」」が「水平」に吊り合うことがわかりました。そしてこの「水平」に「吊り合う」状態を「水平均衡」状態と呼ぶこととします。

 

 しかし、この「さお」を「計測さお」として使用する場合、必ずしもW1=W2であるとも、またa=b とも限りません。

 

 そこで、物体Aが物体Bより、「少しだけ質量が多い」場合を考えてみます。

 するとW1=W2+ΔW

 となります。

 

 そして、この場合における、「さお」の「吊り合い」について、考察を進めてみます。

 

 

6 「傾斜均衡」について

 

 まず、下の図を見てください。

(図6)

 

【文書に図面をうまく貼付できないため、ご面倒ですが、参照図(てこ)をご参照ください。】

 

 

 まず、ここで考察の簡便化のために、この「さお」自体には「質量」が無いものと想定します。

 

 

 そして、物体Aが物体Bより「やや重い」とすると、物体Aと物体Bとの「水平均衡」状態が破れ、P点に「下向き」の力が作用し、この結果この場合「さお」は、「反時計回り」に回転しようとします。

 そしてこの「回転」とともに、これに応じて「合力」POにベクトルも「回転」します。

 そうするうちに、「合力」OPの矢印のベクトルの方向が、「さお」の方向と「一致」する状態に至ります。

 ここで、なお物体Aが「落下」をしようとすると、「合力」POのベクトルはさらに「回転」、さおの方向に対して、さらに「右肩上がり」の方向となります。

 すなわち、さおの左側部分を、今度は吊り上げる方向に作用します。

 このため、今度は「さお」は「時計回り」に回転しようとします。

 

 結果、「合力」POのベクトルの方向と、「さお」の方向とが「一致」する状態で、さおの振動は「収れん」し、「さお」は「傾斜」の状態で「吊り合い」(均衡)ます。

 この状態を、「傾斜均衡」と呼ぶこととします。

 

 さて、ここまで考察を進めてきたところで、いよいよ荷重する「質量」と「支点」からの「距離」とのの関係に、考察を進めます。

 

 

7 荷重する「質量」と、「支点」からの「距離」との関係について

 

 ここで、上記の図をに手を加えて、「質量と距離との関係図」を作成します。

 すると、下図のようになります。

 

(図7)

 

【文書に図面をうまく貼付できないため、ご面倒ですが、参照図(てこ)をご参照ください。】

 

 

ここで、D点、E点、F点をそれぞれ図に付け加えました。

そしてP点からD点までの「距離」を「a’」、D点からO点までの「距離」を「d」としました。すると、図形から明らかなように、Q点からE点までの「距離」も「a’」であり、E点からO点までの「距離」も「d」であることが、分かります。

またQ点からD点までの「距離」を「b’」とすれば、b’=2d+a であることが、わかります。

 

 

順次考察を進めて行くと、まず物体Aの質量W1で、物体Bの質量がW2です。

ここで、物体に生じる「引力」は、その物体の「質量」に「比例」するとされています。

したがって、W1:W2=U1:U2 です。

 

よって、W÷W2=U÷U2  ・・・・   です。

 

 ここで、図から明らかなように、「引力U1」の成す「線分」は、支点RD点取が成す「線分RD」に「等しい」ことが分かります。

 よって、U1=RD   ・・・④  です。

 同様にして、

     U2=RF   ・・・⑤  です。

 

ここでこの図で、特に重要なのは、支点のR点、D点、重点のQ点とで形成される「三角形」です。

 

 そしてこの図から明らかなように、「三角形RDQ」と「三角形FDE」とは「相似」です。

 したがって、「線分RD」:「線分FD」の「比」は、「線分DQ」:「線分DE}の「比」とに「等しく」なります。

 したがって、RD÷FDDQ÷DE  ・・・・⑥  となります。

        ここでFD=RD-RF です。

        また④式より RD=U1 であり、

               RF=U2 です。

 

        そして DQ= であり、 

            DE=b-a です。

 

 よって⑥式は、次のようになります。

        U1÷(U1-U2)=b÷(b-a)  ・・・⑦

 

 ⑦式を展開して行くと、

       U1×(b-a)=(U1-U2)×b

       b×U1-a×U1=b×U1-b×U2

           -a×U1=-b×U2

            a×U1=b×U2  ・・・・⑧

 

 ここで③式より、  U1=W1÷W2×U2  ・・・・⑨

 この⑧式に、⑨式を代入すると

       a×(W1÷W2×U2)=b×U2

 よって

       a×W1=b×W2   ・・・・⑩

 

 このように、上図のような「傾斜均衡」の状態において、⑩式が成立することが分かりました。

 

 

8 「支点」の位置と「傾斜」について

(図8)

 

【文書に図面をうまく貼付できないため、ご面倒ですが、参照図(てこ)をご参照ください。】

 

 

 上の図をご覧下さい。

 図が非常に複雑になってきたため、細かい点までは記入しきれず「省略」してあります。

 しかし、基本的な流れとして、「支点R」の位置が次第に下がってくるにつれて、「さお」に「回転」の力を生じ、それにつれて「傾斜」も「急」になってくることが見てとれると思います。

 そして、この新たな「支点」の下で、「さお」の「傾斜」の大きさがさが定まりますが、一旦その傾斜の大きさが決まれば、その状況に応じて上記の⑩式が成立することとなります。

 

 ここで支点と中心点Oとのい「距離」を「c」とすれば、cが小さくなれば、「鋭敏的」となり、cが大きくなれば「安定的」となります。

 

 ここから、いよいよ本題へと入って行きます。

 

9 てこの原理について

 

 さて、ここでcの値がどんどん「小さく」なって行くとどうなるでしょうか?

 そうです。「支点」はついに「さお」の「中」へと入って行きます。

 これによって、「ひも」が担っていた「張力」の役割を、今度は「さお」がその「張力」の役割を担うこととなります。

その「イメージ図」は、下図のようになります。

 

(図9) 

 

【文書に図面をうまく貼付できないため、ご面倒ですが、参照図(てこ)をご参照ください。】

 

これにより、「ひも」無しで、「さお」単体で、「さお」における「てこの原理」②式また⑩式が成立することが、明らかとなりました。

 

 

 ここで「ひも」を使った場合と、「さお単体」の場合とを「比較」してみます。

 すると「ひも」使用の場合に比較して「さお単体」の場合は、「c」の値が非常に「小さい」。

 結果、この「さお単体」の場合は、荷重する「質量」に対して、「非常に鋭敏」に反応するところとなります。

 このため、「質量」の「精密」な計量・計測には、非常に役立つこととなります。

 

 同時に、このさお式の場合には、ある程度の範囲であれば、「傾斜」して吊り合います。

 いわば多少の「あそび」の部分があります。

 このことも、「さお」を計量・計測に使用するに際して、非常に好都合な要素となります。

 

 以上、「さお」における「てこの原理」を用いて、この「さお」を「計測器」として使用できることが分かりました。

 しかし、そうはいっても「傾斜」した状況では、「正確」な「計量・計測」は困難です。

 したがって、「正確」な「計量・計測」のためには、「水平均衡」の状態で、「さお式計量・計測器」を使用すべきことは言うまでもありません。

 

 この「さお」における「てこの原理」を使用した「はかり」には、「棒はかり」などがあります。

 

さて、「水平」の問題が出てきたところで、次には「水平均衡」状態における、荷重質量と支点からの距離との関係について、考察を進めます。

 

 

10 荷重質量と支点から距離との関係について(水平均衡)

 

(図10)

 

【文書に図面をうまく貼付できないため、ご面倒ですが、参照図(てこ)をご参照ください。】

 

 

互いに質量の異なる物体Aと物体Bとが、上記の図のように、「水平」状態で「吊り合って」いるとします(水平均衡)。

 

この図で得に重要なのは、「三角形PDE」と「三角形POR」です。

 ここで明らかなように、この三角形PDEと三角形PORとは、「相似

です。

 したがって、線分PD:線分PO=線分DE:線分OR

ゆえに、線分PD÷線分PO=線分DE÷線分OR ・・・⑪となります。

 

 ここで、この「さお」は「吊り合って」いるので、ベクトルPDとベクトルQOとは、互いにその「向き」は「反対」で、その「値」は「同じ」となっています。

 したがって、線分PD=線分QO=b となります。

 また、線分PO=a です。

 さらに図から明らかなように、線分DE=引力U1 であり

               線分OR=引力U2 です。

 

 したがって、⑪式は次のようになります。

 

 b÷a=引力U1÷引力U2  ・・・⑫ となります。

 

 ここで物体に生じる引力の大きさは、その物体の「質量」に比例します。

 したがって、引力U1÷引力U2=質量W1÷質量W2 したがって⑫式は次のようになります。

 

     b÷a=W1÷W2   

 これを変形して、

 

     a×W1=b×W2

 となりますが、これは②式と「同じ」です。

 

 ここで支点Rから「さお」の中心点Oまでの「距離」を「c」とします。

 そして、この「c」をどんどん短くしていきます。

 

 すると、この「支点R」は、「さお」の「中」に入って行きます。

 それとともに、「ひも」が担っていた「張力」の役割を、今度は「単体のさお」自体が担うこととなります。

 

 かくして「さお」の「中」に「張力」が生じ、この張力によって、「さお」についての「てこの原理」が成立するところとなります。

 

 以上により、少なくとも「さお」については、「てこの原理」の「本質」が見えてきました。

 

 「てこの原理」とは、結局、「引力」を除けば、全て「物的な力」と「物的な力」との「均衡」であり、「組み合わせ」のことです。

 「てこの原理」が、一見不可解なものに見えるのは、「a」と「b」との関係だけを見て、肝心の「c」について、考察しないからです。

 

 「てこの原理」の「本質」を解明するためには、「a」や「b」だけでなく、「第3項」であり、「媒介項」である「c」についての考察が必要だったのです。

 「c」がなければ、そもそも「てこの原理」が成り立ちません。

 確かに「観念上」は、「c」なしで、②式により、物体Aと物体Bとが「吊り合う」と考えることができるでしょう。

 しかしそれはあくまで「観念上」のことで、実際には「限りなく不可能に近い」ことです。

 具体的には、「細い針」を、床に突き刺さすことなしに、針の先端を下にしてその針を「立たせよう」とするのと同じくらい、「限りなく不可能に近い」ことです。

 また、よしんば「吊り合った」としても、「水平」になるとは限りません。

 

 以上、「てこの原理」の本質を成すものは、「空中」に生じる「不可解な力」ではなく、「引力」を除けば、「物体中」に働く「物的な力」と「物的な力」との均衡であり、またその組み合わせであることが分かりました。

 

 

 以上、物体Aと物体Bとが、「水平」に「吊り合う」場合については、その状況とその状況において成立する「てこの原理」について、解明できました。

それでは、物体Aと物体Bとが「吊り合わない」場合につえ、もう少し分析を進めて行きます。

 

10 荷重質量と支点から距離との関係について(水平不均衡)

 

 まず、a=b である場合において、物体Aと物体Bとの「吊り合い」については、「傾斜均衡」の高において、分析を済ませてきました。

 この場合には、荷重する「質量」が相対的に大きい側に、「斜め下方」への「ベクトル」が生じ、この「さお」に「回転力」を与え、「均衡点」に至るまで、回転を続け、その「均衡点」で静止(あるいはその均衡点を中心に「振動」)することが分かりました。

 

 また、a<>bである場合における、物体A及び物体Bに生じる「引力」と「張力」とが、「さお」を媒介して、互いに真正面から同じ大きさで相対し、その結果、「さお」が「静止」(あるいはその中心Oを軸として「振動」)することが分かりました。

 

 

 次には、物体Aと物体Bとが「同じ質量」であって、かつa<>b の場合での、「水平不均衡」について、考察を進めていきます。

 

(図11)

 

【文書に図面をうまく貼付できないため、ご面倒ですが、参照図(てこ)をご参照ください。】

 

 

 上の図が、物体Aと物体Bとの「質量」は「同じ」だが、a<>b の場合を表しています。

 ここでは、 a>b の場合を想定しています。 

 すると図で明らかなように、物体Aと物体Bの「質量」は「同じ」であり、従ってそこに生じる「引力」の大きさが「同じ」であるにもかかわらず、 a>b であるために、物体Aによって生じる「張力」の大きさが、物体Bによって生じる「張力」より、「大きく」なっています。

 その結果、物体Aによる「引力」と「張力」との「合力」である「ベクトルPD」の値が、物体Bによる「飲料」と「張力」との「合力」である「ベクトルQE」の値より大きくなっています。

 ここでベクトルPDとベクトルQEとは、「水平線上」を、互いに「逆向き」に作用しています。

 「この限りにおいては」、このさおに「下向き」のベクトルは生じず、結果、この「さお」は「回転しない」、つまり「水平均衡する」はずです。

 しかし、ベクトルPDとベクトルQEとが、「水平線上」で相対するとしても、図から明らかなように、ベクトルのその「大きさ」が違います。

 すなわちベクトルの「値」で見れば、ベクトルPD>ベクトルQE となっています。

 

 この結果、「さお」は、この図では「右方向」に「押され」ます。

 その結果、結局この「さお」は、この「押力」によって、「水平均衡」状態は破れ、「さお」は「回転」をはじめます。

 

 以上のように、物体Aと物体Bとの、「質量」の違いによっても、物体Aと物体Bとの「位置」の違いによっても、「水平均衡」の状態は破れて、「さお」を「回転」を始めますが、その「回転」の「要因」は互いに「異なる」のです。

 

 つまり逆に言えば、「水平均衡」をもたらす条件、すなわち「a×W1=b×W2」の公式を成立させる「要因」は、「質量」での要因(質量要因)と、「位置」での要因(位置要因)とでは、互いに異なる現象であり、ただその「結果」が「同じ」であるだけのことなのです。

 

 以上により、「さお」における「てこの原理」(さおの原理)の解明は、一応尽くされました。

 あとはこの「てこの原理」と、鉛直抗力、重力、重力作用との関係の分析が残されていますが、取りあえずこの分析は「後回し」にして、次には「てこ」(狭義)における「てこ(狭義)の原理」の分析へと進みます。

 

 

11 「てこ(狭義)の原理」の分析について

 

 以上、「一本の棒」を、「支点」から「吊るす場合」について「てこ(広義)の原理」を「さおの原理」として、解明を行ってきまました。

 

 次には、この「一本の棒」を、「支点」の上に「載せる」場合についての「てこ(狭義)の原理」について、解明を行います。

 以下、このページで「てこ」という場合については、「さお」を含みません。

 基本的には、「一本の棒」を「支点」に「載せる」場合についてのみ、「てこ」と表現することとします。

 

 ここで「吊るす」か「載せる」か、どちらでも良いではないか、と思われるかもしれませんが、実は「吊るす」と「載せる」とでは「大違い」なのです。

 ここに「さお」と「てこ」とを「区分」する「区分の利益」があるのです。

 

 まず、「さお」については、「c」の作用により、半ば自動的に「さおの原理」が働きます。

 しかし「てこ」においては、そのままでは、全く「てこの原理」自体が「成立しません」。

 少なくとも「計測てこ」については、「てこの原理」が成立しません。「力学てこ」については、別途考察します。

 

 「てこ」において、「てこの原理」が成立しないとは、おかしな話だと思われますが、実際そうなのです。

 何故でしょうか?

 

 「力学てこ」においては、「てこ」は重いものを動かしたりするの利用されます、つまり「力学てこ」は基本的に、「力」と「力」との「不均衡」を利用するものです。

 これに対し、「計測てこ」は、「力」と「力」との「不均衡」ではなく、基本的に「力」と「力」との「均衡」を利用するものです。

 

 しかしこの「計測てこ」においては、原理的にこの「均衡」そのものが存在しないのです。

 より正確にいえば、この「均衡」が限りなく不可能に近い状態、と言えます。

 何故ならば、「均衡」に必要な「安定」が存在しないからです。

 

 試しに、支点の上に棒を載せてみます。

 するとその棒は、「安定」を失い、一瞬で回転を始めます。

 「静止」しているようにみえても、それは「てこの原理」の「吊り合い」によるものではなく、「てこ」の「慣性」によって、一瞬「静止」しているように「見える」だけであり、「てこの原理」とは全く関係がありません。

 

 そこで、この「てこ」に「てこの原理」を成立させるためには、それに先立って、何らかの「安定機構」が必要、ということになります。

 

 

12 計測てこにおける「安定機構」について

 

 計測てこにおける「安定機構」については、様々なものがあります。

 順次それを見て行くこととします。

 

 まず「摩擦」を利用する方法があります。しかしこれでは「子供のおもちゃ」には利用できても、精密な「計測てこ」としては使用できません。

 

 次に、「支点」の「曲面」を利用する方法があります。

 つまり、「支点」をあえて「鋭利」とせずに「鈍く」する方法です。

 この「支点」の「曲面」を利用する方法はさまざまありますが、「軸受け」を使用する方法もその一つです。「軸受け」は「曲面」を成しているので、この「曲面」をある程度利用できるのです。

 

 この「曲面」を「安定機構」として利用する具体例は、次のようなものです。

 まず、単1の乾電池と、30㎝程度の直線定規とを用意します。

 そしてこの乾電池を、両面テープなどを使用して、机に固定します。

 そのうえで、この直線定規をこの乾電池の上に載せてみます。

 この際、この直線定規の「中心部分」が、乾電池の上に来るように、注意を払います。

 するとその直線定規は、ゆらゆらとゆれながらも、左右のどちらにも落ちようとはしません。

 「安定」が成立したのです。

 

 この「安定」の原理は次のとおりです。

 まずこの直線定規が左に(反時計回りに)傾いたとします。

 すると、この乾電池上の「実質的な支点」が、やや左へとずれます。

 このことによって、この直線定規の左側部分に「上向き」の力が生じます。

 このため、この直線定規は今度は時計回りに回転しようとします。

 この回転が行き過ぎると、今度は実質的な支点がやや右にずれます。

 その結果、この直線定規の右側部分に今度は「上向き」の力が生じます。

 こうしてこの直線定規は、ゆらゆらと揺れながらも一定の安定「動的安定」・「動的均衡」の状態となります。

 

 ここで、「1円玉」がほぼ「1グラム」であることを利用し、この直線定規を「はかり」として使うことができます。この「はかり」を私は「1円玉はかり」と呼んでいますが、この「1円玉」はかりを用いて、「消しゴム」などの「質量」を結構正確に測ることができます。

 

 

 それはともあれ、このように「支点」における「曲面」を得る方法があります。

 しかし、この「曲面」を成す部分はかなり狭い部分に局限されています

 したがって、この「曲面」を安定機構として利用することには、一定の「限界」があります。

 またこの方法は、「支点の移動」を伴うため、その「測定結果」に一定の「誤差」を生ずることとなります。しかしそうであっても。この「支点」における「曲面」の利用は、「はかり」の「安定」・「均衡」にとって、重要な役割を果たしています。

 

 また「安定」のための別の方法として、一本の棒を、無理無理「くの字」に折り曲げる方法があります。

 

 

(図12)

 

【文書に図面をうまく貼付できないため、ご面倒ですが、参照図(てこ)をご参照ください。】

 

 こうすれば、「安定」は良くなります。これを「変形てこ」と呼ぶこととします。

 そして、この「一本の棒」は、確かに「支点」の上に「載って」います。

 その意味では、この「一本の棒」は「さお」ではなく「てこ」ということができます。

 しかし、ここに働く「てこの原理」は、むしろ「さおの原理」です。

 

 何故ならばこの場合、「計測さお」における「傾斜均衡」と全く同じ現象が起こっているからです。確かにこの「てこ」には、「ひも」もなく、ひもに吊るされた「さお」もありません。

 しかしその「ひも」の役割を、すなわち「張力」を生じる役割を、この「変形てこ」自体が担っているのです。またこの「変形てこ」には、「さお」がありません。しかしこの「さお」の役割を、すなわち「引力」と「張力」の「合力」を「受け止める」役割を、この「変形てこ」の「角」の部分が、つまり支点に接する部分が担っているのです。

 この「変形てこ」が「安定」するのは、「重心」の位置を「支点」より「下」に置くからです。

 このように、「重心」の位置を、「支点」の「下」に配置するというタイプの「安定機構」があります。

 このような「変形てこ」を利用するものに、「振り子式はかり」があります。ヨーロッパのクリスマスマーケットなどで見かけます。

 

 次には、この「安定」を得るために、「ロバーバル機構」という、一種の安定機構を使用する方法があります。実は、この「ロバーバル機構」は、多くの「はかり」において、その中心的役割を担っています。しかしこのページだけで、ロバーバル機構について説明をし、なおかつその「本質」について解明することには無理があります。そのため、このロバーバル機構については、別途ページを設けてその解明を行うこととします。

 

 最後にポピュラーな方法として、「安定機構」として「おもり」を利用する方法があります。

 この「おもり」を利用する方法について、次に考察を進めて行きます。

 

13 「おもり」を利用した「安定機構」について

 

 「おもり」を利用した「計測てこ」の代表が、「てんびん」です。

 「てんびん」では、その「指針」が、「おもり」の役割を兼ねています。

 次の図が、「てんびん」の概念図です。

 分析の簡便化のために、O点から各P点、Q点<R点への「距離」はすべて「同じ」としています。ここではその「距離」を「a」と表現しています。

 また物体Aの「質量」をW1、物体Bの「質量」をW2、「おもり」の「質量」をW3、とします。

 

(図13)

 

【文書に図面をうまく貼付できないため、ご面倒ですが、参照図(てこ)をご参照ください。】

 

 さて、「てんびん」は極めて「鋭敏」です。

 左右のバランスが少し崩れただけで、すぐに「指針」が反応します。

 そして、もしP点側の質量がやや大きければ、この天秤は「反時計回り」に回転しようとします。すると、「指針」に付いた「おもり」も「反時計回り」に回転・上昇します。

 そしてこの「おもり」が、てんびんの「基準点」から離れれば離れるほど、今度は逆に、この「おもり」に生じる「時計回り」への「回転力」が大きくなります。

 その結果、この「おもり」は揺れながらも、一定の「位置」へと収れんしようとします。ここでこの「収れん」する「位置」を「収れん点」と呼ぶこととします。

 するとこの「収れん点」を元に、測定者は荷重した物体の「質量」を計算することができます。

 

 さて、ここで物体Aと物体Bとを、それぞれP点とQ点とに載せるとします。

 そしてまず、物体Aの質量と物体Bとの「質量」は等しく、W1=W2 であるものします。

 すると、この「てんびん」は「水平均衡」するはずです。

 そうしておいて、次に微小質量ΔWをP点に加えると」、このてんびんは反時計回りに「回転」を始め、そうするうちに「指針」の「おもり」と「吊り合う」はずです。

 

 するとこれは、先ほどの「変形てこ」の場合と同じこととなります。

 すなわち「てんびん」においても、「てこの原理」(実際にはむしろ「さおの原理」)が、働くこととなります。

 

 さて以上のことにより、物体Bの「質量」W2があらかじめ分かっているならば、「収れん点」を読み取ることにより、物体Aの質量W1を、計算できることとなります。

 

 以上、「計測てこ」においては、「てこの原理」といいっても、基本的には、結局「さおの原理」を用いていることとなります。

 

14 「力学てこ」における「てこの原理」について

 

 「力学てこ」は、「てこ」を重いものを動かすのに使用する場合の「てこ」を指すものとします。

 そしてここでは3種類の「てこ」のうち、基本となる「第1種てこ」について、考察を進めます。

 

 この「力学てこ」の分析に際しては、まず「力学てこ」の「均衡」について考察を進め、そののちに「力学てこ」の「不均衡」について、考察を進めていくこととします。

 

 このため、まず前掲の「図2」を再掲します。

 

(図2)

 

【文書に図面をうまく貼付できないため、ご面倒ですが、参照図(てこ)をご参照ください。】

 

 

 この図を眺めていてまず分かることは、この「てこ」が、「支点」の部分で左右に分かれようとしていることです。

 このてこの「左側部分」は左下方に落ちようとし、このてこの「右側部分」は右下方に落ちようとしています。

 すると、次に分かることは、この支点部分に「左右への分裂」を避ける「何らかの力」が働いていることがわかります。

 まずは、左右への分裂を避けるために、「張力」が働いているはずです。

 しかし、いったん「張力」が働くと、その「てこ」が曲がろうとするために、この「てこ」の下側にはこの「曲がり」を避ける「何らかの力」が働くはずです。

 したがって、この「てこ」には、同時に、「押力」も働くはずです。

 この状況を、拡大し極端にすると次のような図となります。

 

(図14)

 

【文書に図面をうまく貼付できないため、ご面倒ですが、参照図(てこ)をご参照ください。】

 

 これは、結局「計測てこ」と「同じ結果」となります。

 したがって、ここにはいわゆる「てこの原理」が成立します。

 ただ「計測てこ」と「異なる点」は、その「使用方法」です。

 「計測てこ」は「安定」・「均衡」しなければ、意味を成しませんでした。

 しかし、「力学てこ」はその必要がないのです。むしろ「不均衡」な状態の方が望ましいのです。

 

 このように、「計測てこ」と「力学てこ」とは、その使用方法が違います。

 その結果、「力学てこ」には、「計測てこ」ではあまり問題にならなかった点が、大きな問題となります。

 「計測てこ」では、物体Aと物体Bとの「吊り合い」とその関係についてのみ考察すれば、基本的にはそれで足りました。「計測てこ」における「てこの原理(さおの原理)」についても、その「吊り合い」の観点からのみの考察で足りました。

 しかし、「力学てこ」については、解明すべき「新たな問題」が生じます。

 すなわち「力学てこ」は、「何故」「大き力」を生じることができるのかという問題です。

 

 この問題は、実は「重力」の問題と深く結びついています。

 したがって、「力学てこ」の「本質」をさらに分析するためには、ここに作用している「鉛直抗力」、「重力」、「重力作用」について、分析を進めて行かなければなりません。

 

15 「力学てこ」について

 

 ここで「具体的」」に見てみます。

 物体Aの「質量」を2㎏とし、物体Bの「質量」を1㎏とします。

 また aを1m、bを2m とします。これは吊り合います。

 

 次に物体Aの「質量」3㎏とし、物体Bの「質量」を1㎏とします。

 また aを1m、bを3m とします。するとこれも吊り合います。

 

 さらに、物体Aの「質量」を4㎏とし、物体Bの「質量」を1㎏とします。

 また aを1m、bを4m とします。するとこれもまた吊り合います。

 

 そうこうするうちに「奇妙」なことに気が付きます。

 物体Bの「質量」は、相変わらず1㎏のままです。

 そして、aは単に「距離」が変わっただけです。 

 にもかかわらず、「距離」が変わっただけにもかかわらず、物体Aの荷重点Pは、「1kg」、「2㎏」、「3㎏」、「4㎏」・・・と、「異なる大きさ」の「質量」を支えることができるのです。

 

 とすれば、いったい「何が」この物体Aの荷重点Pを支えているのか、「どんな力」がこの荷重点Pに生じているのか、が問題となります。

 

 この問題を解決するために、またいったん「計測さお」の分析へと戻ります。

 ただし、今回はこの「計測さお」を、「計測さお」としてではなく、「力学さお」として考察します。すなわち単なる「吊り合い」だけを問題とするのではなく、その「背後」にあるこの「吊り合い」全体を「支える力」の分析へと進みます。

 

 

16 「力学さお」について

 

 ここで「図10」を変換して、次のような図を作成します。

 そしてこの図を「鉛直抗力解析図」と呼ぶこととします。

 

(図14)

 

【文書に図面をうまく貼付できないため、ご面倒ですが、参照図(てこ)をご参照ください。】

 

 この「鉛直抗力解析図」でまず分かることは、まず物体Aを引っ張っている「張力」が、「水平方向」と「垂直方向」とに「分解」できる、ということです。

 これは、物体Bについても同様です。

 

 したがって、それぞれの中に、この物体Aと物体Bとを、「支える力」が隠され、含まれていたのです。

 したがって、次にはこの「張力」の分析を行うこととなります。

 

 しかし、このままでは「張力」の分析が、複雑となります。

 したがって、以前「張力」の分析した張力の「性質」を利用して、P点及びQ点に作用している「張力」を、「鉛直抗力解析図」に示してあるように、「支点R」の位置まで「移動」します。

 すると物体Aに生じる「張力」は、今度は「支点R」の右側に表示され、物体Bに生じる「張力」は、「支点R」の右側に表示されるところとなります。

 

 ここでようやく、この二つの「張力ベクトル」の「合成」を行うことできることとなります。

 この「張力ベクトル」の合成を見て分かることは、まずび「張力ベクトル」の「水平成分」は互いに「打ち消し合って」います。

 他方、この「張力ベクトル」の「鉛直成分」は、互いに「合体」して、「一本」の「垂直ベクトル」となっています。

 

 ここで「垂直ベクトル」を「F」とし、物体Aに生じる「張力」の「垂直成分」をF1とし、物体Bに生じる「張力」の「鉛直成分」をF2とすれば、次のことが分かります。

 すなわちこの「鉛直抗力解析図」の上部部分がが、「平行四辺形」を成していることにより、

 

F=F1+F2  ・・・・ ⑬

 

となることが分かります。

 

 ところで、この「F」とは何でしょうか?

 それは、物体Aと物体Bとを、その「根底」から「支える力」です。

 すなわち、「引力」によって「落下」しようとする物体Aと物体Bとを、「共に」空中に佐々得ようとする「物的な力」です。

 すなわちこの「F」は「鉛直抗力」なのです。

 

 これにより「鉛直抗力」が「分解」され得ることが、改めて明らかとなりました。

 

 ここで先の②式を再掲します。

 

 a×W1=b×W2  ・・・・ ②

 ここで 引力U1:引力U2=質量W1:質量W2 です。

 

 他方、「鉛直抗力」は、この「引力」と「逆方向」に「同じ大きさ」で働きますから、

 

  鉛直抗力(-F1):鉛直抗力(-F2)=引力U1:引力U2 となります。

 

 これを整理しますと、

   鉛直抗力(-F1)÷鉛直抗力(-F2)=引力U1÷引力U2=質量W1÷質量W2 となります。

  よって、 鉛直抗力(-F1)÷鉛直抗力(-F2)=質量W1÷質量W2 となります。

  よって、 鉛直抗力F1÷鉛直抗力F2=質量W1÷質量W2 となります。

  これを変形すると

       質量W2=質量W1÷鉛直抗力F1×鉛直抗力F2 となります。

 

  これを ②式に代入すると

      

       a×W1=b×W1÷F1×F2

   よって

       a×F1=b×F2   ・・・・⑭

 

   となります。

 

 ここで⑬式を再掲し、改めに⑭式と並べてみます。すると次のようになります。

 

  F=F1+F2     ・・・・ ⑬

a×F1=b×F2   ・・・・ ⑭

 

 実は、この⑬式と⑭式とが「セット」で、「一つ」の「てこの原理」の「本質」を成しているのです。

 

 「てこの原理」(ここでは「さお」と「てこ」(狭義)の「双方」を含めた「てこの原理」(広義))の「本質」とは何か。それは次のように定式化されます。

 

 「てこの原理」の「本質」とは、「鉛直抗力」の「分配」であり、その「分配」が⑬式に従って行われること、と定式化することができます。

 

 通常「てこの原理」というと、②式のみが取り上げられます。

 確かに「実務上」また「実用上」はこれで十分です。

 しかし「てこの原理」の「本質論」となると、そうはいきません。

 ⑬式を考察してこそ、「てこの原理」の「根底」に触れた、ということができます。

 

 

 「てこの原理」の「本質」が、「鉛直抗力の分配」にあることが解明されたので、これによる「重力」及び「重力作用」については、その解明が非常に容易となりました。

 「鉛直抗力」Fが、上記の法則に従って、物体AにF1、物体BにF2の「延長抗力」が供給される結果、これに応じて、物体A及び物体Bに「重力」が生じるのです。

 そして、この「重力」による「重力作用」が、「ひも」あるいは「棒」を通じて、「支点」へと伝達され、その「支点」において「統合」され、この支点に「重力作用」による「重み」が生じるのです。「

 したがって、「重力作用」の観点からみると、この「鉛直抗力」の「分配」は、「重力作用」の「統合」として表れてきます。

 

 

 以上の考察を終えた後で、いよいよ先ほどの「力学てこ」についての考察に戻ります。

 

 

17 「力学てこ」と「鉛直抗力」について

 

 「力学てこ」の概念図を図示すると、次のようになります。

 

(図15)

 

【文書に図面をうまく貼付できないため、ご面倒ですが、参照図(てこ)をご参照ください。】

 

 ここで、「支点O」から「鉛直抗力F」が流入しますが、さきほどの「てこの原理」により、左右の物体Aに鉛直抗力F1、物体Bに鉛直抗力F2が「分配」されます・

 それにより、物体Aに「重力W1」が、物体Bに{重力W2}が生じます。

 そのそれぞれの「重力」は、「力学てこ」の左右をとおって、「重力作用」として、「支点R」に伝達されます。

 その「支点R」では、それらの「重力作用」が「一つ」に「統合」されます。

 結果「支点R」には、その「重力作用」の統合の結果、「支点R」一点に「重み」が生じます。

 

 以上について、具体例に即して考察します。

 ここで物体Aの質量が2㎏、物体Bの質量が1㎏であり、aが1m、bが2mとします。

 

 すると、この質量合計2㎏+1㎏=3㎏ の質量を支えるのに必要な「鉛直抗力」は、3㎏重です。そしてこの3㎏重の「鉛直抗力」が左右に「分配」されて、物体Aには2㎏重、物体Bには1㎏重の「鉛直抗力」が届きます。

 すると、物体Aには、2㎏重の「重力」が生じ、物体Bには1㎏重の「重力」が生じます。

 この2㎏重と1㎏重の「重力作用」が、「支点R」に到達し、そこで「統合」され、結果「支点R」に、3㎏の「重力作用」が生じます。

 すなわち、「支点R」に3㎏重の「重み」が生じます。

 したがって、「力学てこ」自体の重さを除けば、その「支点R」でのその「重み」を「はかり」で計測すれば、この「3㎏重」に対応して「3㎏」と表示されます。

 

 以上、P点に3㎏、Q点に1㎏を荷重すれば、支点Rでの「はかり」の値は4㎏、

 P点に4㎏、Q点に1㎏を荷重すれば、支点Rでの「はかり」の値は5㎏、

 

 以下同じ、となります。

 

 

 要するに、「力学てこ」における「てこの原理」とは、この例では、「P点」にかかる荷重を「支点R」に「移す」という作用のことです。

 そしてその「移し方」が、②式に沿って行われる、ということです。

 

 これがために「力学てこ」は、「重いもの」を「容易」に動かすことができるようになるのです。

 要するに「力学てこ」とは、「てこの原理」をお応用して、本来「人間の手」等によって支える「重み」(重力作用)を、「支点R」が、結局は「大地」が、支えるその「支え方」に他なりません。

 

 以上をもちまして、「張力」を主体とした「てこの原理」についての、「本質的な解明」は終了します。

 

 後、補足的に「弾力」における「てこの原理」について、少しばかり解明を行います。

 

18 「弾力」と「てこの原理」について

 

 これまで、「張力」を中心に、「押力」を補助的に、考察を進めてきましたが、実は「弾力」についても、「張力」同様、「てこの原理」が、一応成立します。

 しかし、「張力」と違い、「弾力」は「ひずみ」を前提とするものです。

 したがって、ここにおける「てこの原理」は「近似的」なものとなります。

 

 「板ばね」などの「弾力」の大きさは、そのひずみの大きさに一定「比例」します。

 そして、その関係を応用すれば、「てこの原理」における②式と同様な関係が導かれますが、これはあくまで「近似的」なものであり、「張力」におけるような精密なものではありません。

 したがって、この「弾力均衡」を、「計測てこ」に応用することは適切ではありません。

 しかし、「力学てこ」の目的は、「小さな力」で「大きな力」を生じることにあるのですから、少々の違いは問題ではありません。

 

 実際、「力学てこ」においては、「張力」、「押力」、「弾力」が「一体」となって作用していると言えます。

 

 以上をもちまして、「てこの原理」についての「本質的な解明」は終了いたします。