作用・反作用の法則(運動の第3法則)について

 

 

 

 

 

(1)作用・反作用の法則(運動の第3法則)について

 

 

 

 ニュ-トンの運動の第3法則は、「作用・反作用の法則」とも呼ばれています。

 

 いわく、「2物体が互いに力を及ぼし合うとき、それらの力は向きが反対で大きさが等しい」(ウィキペディア)

 

 一般には、物体Bが物体Aに作用()と及ぼしたとき、それと同じ大きさで反対方向の作用(反作用・反作用力)が物体B自身に働く、と理解されています。

 

 いわば、「押せば押し返される」、という関係です。

 

 これは現代物理学の基礎中の基礎ですが、非常に「分かりにくい」ものでもあります。

 

 

 

 何故分かりにくいのでしょうか?

 

 様々な原因があります。

 

一つには、この「作用・反作用の法則」を「あらゆる」物理現象に適用することにはそもそも無理があることです。

 

 物象世界は「力学」的関係によってのみ成り立つものではないでしょう。

 

 例えば「化学反応」を「作用・反作用の法則」によって説明することは出来ません。

 

 つまり「作用・反作用の法則」には、「適用限界」があるのです。

 

 しかし一般にはこの「適用限界」について語られることなく、「作用・反作用の法則」が教えられるので、「作用・反作用」の意味内容が全く不明瞭となってしまうのです。

 

 したがって「作用・反作用の法則」は「力学的関係」において成立する、とまず成立要件を明確にすべきだと考えます。

 

 

 

 しかしまた、「力学的関係」が成立すれば、「全て」「作用・反作用の法則」が成り立つのか、と考えれば、そう単純でもありません。

 

 世界は「立体的」です。特定の方向にばかり作用するというものでもありません。

 

 例えば「粘土」を押さえつけると、粘土はつぶれ「変形」します。つまり、「粘土」に対して、「横方向」に力が作用します。

 

 このように、「力学的関係」においても、教科書どおり、「作用・反作用の法則」が、働くものでもありません。

 

 

 

 加えて、「作用・反作用の法則」を分析すると、「作用・反作用の法則」そのものも種々の「タイプ」があり、「一様」ではありません。

 

 以上のことが合い混ざりあって、「作用・反作用の法則」は非常に分かりづらいものとなっています。

 

 

 

 しかし、「作用・反作用の法則」が「分かりづらい」根本的要因は何といっても、「作用()」を加えた「反対方向」に「反作用()」が働く、という点にあります。

 

 通常の感覚では、「力」を加えた方向に「力」が「作用」するはずです。それが、「逆」に「反対方向」に「作用」(反作用)する、この点が非常に「分かりづらい」のです。

 

 

 

 しかしそうであっても一定の力学的関係においては、「作用・反作用の法則」が成立することは厳然たる事実です。

 

 すなわち、「作用・反作用の法則」は「一定の力学的関係」においては.厳然と存在し、現代力学の「根幹」を成す、ということができます。

 

 

 

 

 

(2)作用・反作用の法則と万有引力の法則について

 

 

 

 かくして、「一定の力学的関係」において、「作用・反作用の法則」が成り立ちますが、このことを前提として、次には「作用・反作用の法則」の「タイプ」について分析を進めます。

 

 

 

 まず「作用・反作用の法則」を考察するにおいて、「どのような力」が、「作用・反作用」に関わっているかが問題となります。

 

 「慣性力」を分析する際に考察した「力」は、まず「空間的力」である「引力」と「慣性」すなわち「慣性基力」との関係でした。

 

 そしてこの関係からは「慣性力」が生じないことが明らかとなりました。

 

 次に分析したのが、「張力」・「押力」(弾力)等の「物体的力」と「慣性」(慣性基力)との関係でこの関係から「慣性力」が生じることが明らかとなりました。

 

 

 

 したがって、「作用・反作用の法則」を分析するに際しても、「空間引力」と、「物体的力」である「張力」等とを、「区別」して考察したく思います。

 

 

 

 さて、まず「空間的力」である「引力」については、「万有引力の法則」から、自ずと「作用・反作用の法則」(的な法則)が導かれます。

 

 何故ならば、二つの物体AとBとが、互いに「引力」を及ぼし合うとき、それらの力は「向きが反対で大きさが等しいからです。

 

 すなわち「万有引力は、「作用・反作用の法則」の「定義」である「2物体が互いに力を及ぼし合うとき、それらの力は向きが反対で大きさが等しい」という命題を満たしています。

 

 ただし、この「万有引力」における「作用・反作用の法則」は、これから分析する「物体的力」における「作用・反作用」の法則とは、一定様相が異なります。

 

 したがって、この意味では、「万有引力」における「作用・反作用」は、本来の意味からは、ずれているかも知れません。

 

 しかし、実際上は、「万有引力」においても「作用・反作用の法則」が働くと考えると何かと便利です。

 

 したがってここでは、「万有引力」におけ「作用・反作用」と「物体的力」における「作用・反作用」」とが、一定「異なっている」ことを前提として、「万有引力」における「作用・反作用の法則」(的な法則)を認めるものとします。

 

 

 

 

 

(3)物体的力と作用・反作用の法則について

 

 

 

 以上のように、「万有引力」における「作用・反作用の法則」(的な法則)

 

を分析することは、容易でした。

 

 困難なのは、「物体的力」における「作用・反作用の法則」の分析です。

 

 「引力」においては、「万有引力の法則」そのものから「作用・反作用の法則」(的な法則)が導かれます。加えて、「引力」は「引」力であって、「引かれる」方向にしか作用しません。

 

 すなわち「引力」によって「押し返される」ことはないのです。

 

 しかし、「物体的力」における「作用・反作用」においては、物体は作用した力とは「反対方向」に「押し返される」のです。

 

 これは「何故か?」ということが、「物体的力」における「作用・反作用」の根本問題となります。

 

 

 

 

 

(4)運動の第2法則と運動の第3法則との関係について

 

 

 

 「慣性」・「慣性力」の世界は広大ですが、「作用・反作用」の世界も広大で、その全てについて考察することは出来ません。

 

 したがってここでは、単純な形態の「作用・反作用」について、まず分析し、 そこから「作用・反作用の法則」の「本質」を分析したいと思います。

 

 そしてその「本質」の分析の後に、「作用・反作用の法則」の幾つかの「現象形態」について、分析を行ないたいと思います。

 

 

 

 さて、「作用・反作用の法則」の重要な内容として「押し返される」という現象があります。

 

 「押し返される」という現象というと、まず「ばね」が思い起こされます。したがって「作用・反作用の法則」を考察する前に、まずは「ばね」について、考察を行ないたいと思います。

 

 

 

① ばねを手で押します。すなわちばねに「押す力」を加えます。すると「ぱね」から「力」を感じます。すなわち「反作用」を感じます。

 

 

 

② 「押す力」と「ばねの力」が「均衡」します。ここでも「ばねの力」を感じます。すなわち「反作用」を感じます。

 

 

 

③ 手で「は押す力」を緩めます。すると「ばね」が「反発」してきます。ここでも「ばねの力」を感じます。すなわち「反作用」を感じます。

 

 

 

 以上3とおりの場合いついて、それぞれ「反作用」を感じます。

 

 しかし、そのそれぞれについて、「作用・反作用の法則」の「現れ方」が異なるのです

 

 

 

 すなわち手やばねの「運動方向」が異なるのです。

 

 したがって、「作用・反作用の法則」といっても、「3つの形態」、あるいは「3つの段階」があることが分かります。

 

 

 

 以上のことを踏まえて、「作用・反作用の法則」の最も「単純」な場合、すなわち球体同士の「単衝突」について、分析を行ないます。

 

 ここに物体Aと物体Bとがあるとします。

 

 そして物体Aの「質量」をm、物体Bの「質量」をmとします。

 

そしてmとmの「値」が「同じ」だとします。

 

そして、物体Aが、等速度vで物体Bに接近し、衝突するものとします。

 

 

 

① 物体Aが、物体Bに接近していきます。

 

② 物体Bが物体Aに接触します。

 

③ 物体Aが物体Bを押して行きます。

 

④ 物体Aの「速度」が、遅く成るとともに、物体Aの速度が速く成っていきます。

 

⑤ 物体Aと物体Bの「速度」が「等しく」成りつつあります。

 

 

 

 以上の②から⑤の間に、物体Aと物体Bとの間に「力」が作用しています。そしてどうやら「作用・反作用の法則」も働いているようです。この場合、物体同士が押し合いすなわち「力」を加え合い、そして両者の「速度」が「同じ」になって行くのですから。

 

 

 

 確かに、これも「作用・反作用」の1局面とは言えるでしょう。

 

 しかし、これが「作用・反作用」の「全て」ではありません。

 

 そもそもこれは、「作用・反作用の法則」を持ち出さなくても、次のように「運動の第2法則」から説明できます。

 

 

 

 運動の第2法則より

 

 f =ma=m×÷  ・・・① です。ここでmは物体の「質量」、aは「加速度」を表します。

 

 したがってfの力をt秒間作用させると、物体の速度はvになります。

 

 

 

 ここで同じ力をt秒間m+mの物体に作用させると、

 

 f=(m+m′)×(m+m′)×′÷t …② となります。

 

 

 

 式①より、m×÷t=f ・・・③ です。

 

 ここで②式と③式とより、

 

 m×÷t=f=(m+m′)×′÷

 

 ∴m×v=(m+m′)×÷v ・・・④ となります。

 

 したがって

 

 v′÷v=m÷(m+m′)となります。

 

 ∴v=m÷(m+m′)×v ・・・⑤  となります。

 

 

 

 したがって、fの力で速度がvに成った物体Aが物体Bを動かして、「共に」同じ速度で運動するに到った場合、その「共通速度」vは、v′=v×÷(m+m′)となると考えられます。

 

 逆に、物体Aと物体Bと「共通速度」が「同じ」に成った場合物体Aと物体Bとに働く力は「同じ」であると言えます。

 

 

 

 何故ならば、次のとおりです。

 

 等速度vの物体Aが静止している物体Aと接触し、t秒の間に、自らは減速しながら物体Bを加速し、物体Aと物体Bとの「共通速度」がvとなったとし、その間に物体Aが受ける力をf、その時の加速度をαとし、物体 Bが受ける力をf、その時の加速度をβとすれば

 

 

 

 f=mα=m×(-v

 

 ∴ft=mv-mv ・・・⑥

 

 

 

 ここで⑤式より

 

 v=m÷(m+m′)×

 

 ∴v=(m+m′)÷×・・・⑦

 

 

 

 ⑥式と⑦式とより

 

 ft=mv-mv

 

  =mv-m×(m+m′)÷m×v

 

  =mv′-(m+m′)×

 

   =mv-mv-mv′

 

 ∴ ft =-m ・・・⑧

 

 

 

 考察の前提条件より

 

 f=m′β=m′×v′÷t 

 

∴ m′v′=f′t ・・・⑨

 

 

 

 ⑧式と⑨式とより

 

 ft=-m=-f

 

∴f=-f・・・⑩

 

 

 

 したがって、物体Aが物体Bを押している間に作用する力は、互いに正反対であり、かつ、同じ大きさであると言えます。

 

 すなわち「作用・反作用の法則」が成立します。

 

 以上のようにここまでは、運動の第2法則から、「作用・反作用の法則」が導かれます。

 

 そして実際上、「作用・反作用の法則」が、ここまでで完結する場合もあります。

 

 物体Aと物体Bとが衝突し、その後「一体となって」運動する場合などが、それに当たります。

 

 

 

 

 

(5)運動の第3法則の運動の第2法則からの分離について

 

 

 

 しかし、ここで終わってしまっては、「作用・反作用の法則」は、「運動の第3法則」ではなく、「運動の第2法則」に包含されてしまいます。

 

 わざわざ運動の「第3」法則を考える必要も無くなります。

 

 

 

 何かが欠けています。

 

 何が欠けているのでしょうか?

 

 押せば「押し返される」力が欠けています。

 

 一般に、「作用・反作用の法則」は、単に、物体Aが物体Bを「押した」場合、単に自らが「減速」するのに止まらず、「押し返される」ことまでをも含みます。

 

 この「押し返される」現象は、「運動の第2法則」からは説明出来ません。

 

 ここに「作用・反作用の法則」が、運動の「第3法則」である意味があるものと考えます。

 

 

 

 ここでやや複雑ですが、物体Aと物体Bとの「弾性衝突」について分析を行って行きます。

 

 ここで考察の便宜のために物体Aと物体Bとの「間」に、「ばねC」があるものとします。

 

 そしてまた考察の便宜のために、この「ばねC」には、「質量」がないものとします。

 

 

 

 そうした上で、物体Aが静止している物体Bに、ばねCを介して、衝突する場合を考えます。

 

 物体Aの質量をm、物体Bの質量をmとします。

 

 物体Aの衝突前の速度をvA1とし、物体Bの速度をvB1とします。したがってvB1=0です。

 

 

 

 物体Aと物体Bとが、ばねCを介して接触し、物体AがぱねCを介して物体Bを押して行きます。

 

 物体AがばねCを押し、ばねCが物体Bを押して行きます。

 

 すると「二重の作用」が生じます。

 

 物体Aの速度を持った「慣性基力」と、静止し続けようとする物体Bの「慣性基力との間に挟まれて、ばねCは「縮んで」いきます。

 

 しかし.縮んだばねCは、縮んだが故に「反発力」も有します。

 

 したがってばねCは、その「反発力」でもって物体Bを「押そう」とします。

 

 その結果、ばねCに押されて物体Bは「加速」して行きます。

 

 

 

 これをまとめると、物体Aが、ばねCを介して、物体Bに衝突する時、物体Aは「減速」し、ばねCは「縮み」、物体Bは「加速」します。

 

 

 

 この結果、物体Aと物体Bとの「速度」が「一致」する時点に到達します。

 

 すなわち、物体Aと、ばねCと物体Bの「速度」が、「共通速度」となる時点に到達します。

 

 

 

 この「共通速度」に到達するや否や、もはや物体Aは、これ以上、ばねCをも物体Bをも「押す」ことができなくなります。

 

 すなわち、物体Aと物体Bとの関係に限れば、物体Aと物体Bとの間に作用する力は、「ゼロ」となります。

 

 しかし、この時ばねCはすでに「縮宿」しています。

 

 すなわち「力」が、「反発力」が蓄えられています。

 

 

 

 かくしてこの時、ばねCの「反発力」が作動し、今度は逆に、物体Aと物体Bとの双方を「押し返して」行きます。

 

 ここに、物体A・BとばねCの関係が「逆転」します。

 

 この時、「作用・反作用の法則」が「作動」するものと「想定」されます。

 

 「作用・反作用の法則」によれば、

 

「2物体が互いに力を及ぼし合うとき、それらの力は向きが反対で大きさが等しい」ところとなります。

 

 

 

 この場合、物体Aと物体Bとが「直接」に力を及ぼし合っているのではありません。

 

 むしろ、物体Aと物体Bとが「直接には」、力を及ぼし合わなくなった結果、ばねCの反発力が作動するに到ったものです。

 

 しかしそうであっても、今やばねCの「反発力」が作動しました。

 

 この結果、このばねCの「反発力」は、物体Aと物体Bとの「双方」に及んでいます。

 

 結果、「ばねCを介して」、物体Aと物体Bとは「互いに力を及ぼし合って」いきます。

 

 そしてその力は当然ながら、「向きが反対」です。

 

 ここでこの「力」は「ばねC」から生じています。

 

 このばねの「力」は、ばねの「縮み」に起因しています。

 

 このばねが「均質」であれば、ばねが「収縮」から「反発」に転じる時に生じる力は、ばねの両端において「等しい」はずです。

 

 かくして.「ばねCを介して」、物体Aと物体Bとが互いに力を及ぼし合うとき、その大きさは「等しい」こととなります。

 

 

 

 このように物体Aと物体Bとの間に、「ばねC」があるものと想定すると、「作用・反作用」の法則がうまく説明できます。

 

 

 

 以上により、「作用・反作用の法則」には、大きく「2段階」あることが分かります。

 

 「第1段階」は、物体AがばねCを介して物体Bに衝突し、結果、物体Aが「減速」し、ばわCが「縮み」、物体Bが「加速」する段階です。

 

 その「第1段階」の「終点」が、「第2段階」の「始点」となります。

 

 そして、この「終点」・「始点」において、物体Aと物体Bとの速度は「同じ」になり「共通速度」に達し、ばわCの「縮み」は「最大」となります。

 

 ここまでの段階においても「作用・反作用の法則」は成立します。

 

 しかし、この段階における物体Aと物体Bとの間の「作用・反作用」は、「運動の第2法則」からでも導くことができます。

 

 

 

 したがってこの段階においては、「作用・反作用の法則」ではあっても、運動の「第3」法則とまでは言えません。

 

 この段階における「作用・反作用の法則」は、運動の「第2法則」に包含されています。

 

 

 

 しかし「作用・反作用」の「第2段階」では、この運動の「第2」法則からは説明ができません。

 

 「作用・反作用の法則」の第2段階では、何らかの「反発力」が作用しています。

 

 この「反発力」は、運動の「第2」法則からは生じません。

 

 このため物体Aと物体Bとの間に「ばねC」を想定し、この「ばねC」を

 

想定することにより、「作用・反作用の法則」の「第2段階」をうまく説明することができたのです。

 

 これにより、「作用・反作用の法則」の「第2段階」では、「作用・反作用の法則」は、運動の「第2」法則から分離・独立し、運動の「第3」法則と成ったのです。

 

 

 

 

 

(6)現象形態における作用・反作用の法則の分析について

 

 

 

 以上、「作用・反作用」の「第1段階」と「第2段階」について、考察を行ないましたが、同じ「作用・反作用の法則」であっても、「第1段階」と「第2段階」とでは、その性状がかなり異なります。

 

 したがって分析上の混乱を避けるために、「作用・反作用の法則」の「第1段階」を「作用・反作用I型」、「第2段階」を単に「作用・反作用」あるいは「作用・反作用Ⅱ型」と呼ぶこととします。

 

 これにより「作用・反作用の法則」は、「作用・反作用I型」と、「作用・反作用Ⅱ型」を含む「広義」の「作用・反作用の法則」と、「作用・反作用Ⅱ型」にのみ関わる「狭義」の「作用・反作用の法則」とがあることとなります。

 

 

 

 さてここで、「狭義」の「作用・反作用の法則」すなわち「作用・反作用の法則Ⅱ型」を考察するに当たり、「ばねC」を想定してきました。

 

 しかし、「現実には」、物体Aと物体Bとの「外側」に「ばねC」は有りません。

 

 そうであるならば、この「ばねC」に相当する「作用」・「力」は、「どこ」から生じるのかが、問題となります。

 

 そしてこの問題は取りも直さず、「作用・反作用の法則」の「本質」とは何かという問題となります。

 

 

 

 ここで「作用・反作用の法則」の「本質」についての分析へと移行していくことになるのですが、まずその前に、この「作用・反作用」の「現象形態」について、今少し考察を行ないたいと思います。

 

 

 

 ここで再び、球体Aと球体Bとの「弾性衝突」に戻ります。

 

 今度は今少し分析析を精密にして行きます。

 

 このためやや「複雑」とはなりますが、以下のとおりです。

 

 

 

 ここでは、鋼球と鋼球同士の衝突や、ビリヤ-ドの球同士の衝突、あるいは野球のバットとボ-ルの衝突やゴルフのクラブヘツドとボ-ルの衝突のような場合、つまり単体と単体同士の「単衝突」について考察をすることとします。

 

 

 

 さて、物体Aの質量をmとし、物体Bの質量をmとします。

 

 物体Aが、静止している物体Bに衝突するものとします。

 

 「衝突前」の物体Aの速度をvA1とし、物体Bの速度をvB1とします。

 

 したがって、vA1=0です。

 

 「衝突後」の物体Aと物体Bの「共通速度」をそれぞれvA2と、vB2とします。

 

 したがって、vA2=vB2です。

 

 次に、「衝突」によって、物体Aが失った速度をvA3とくし、物体Bが得た速度をvB3とします。

 

 すると、vA3=vA1-vA2で、vB3=vB1+vB2  です。

 

 次に、「衝突」による「作用・反作用」によって生じる物体Aの速度をvA4とし、物体Bの速度をvB4とします。

 

 

 

 最後に「衝突後」に、物体Aと物体Bとが「等速運動」に復帰した時点における、物体Aの速度をvA5とし、物体Bの速度をvB5とします。

 

 したがって

 

  vA5=vA2+vA4 ・・・①

 

  vB5=vB2+vB4 ・・・②  です。

 

 

 

 ここで先に計算した際に、速度vの物体Aが静止している物体B、に接触し、共に「同じ」速度で運動するに到った場合における「共通速度」vは、

 

=m÷(m+m′)×  でした。

 

 したがってここでは、vA1=v  vB1=0

 

 またv=vA2=vB2  ですので

 

 

 

 vA2=vB2=m ÷(m+m′)×vA1  となります。

 

 整理すると vA2=vB2 であって、刈る

 

 vA2=m ÷(m+m′)×vA1 ・・・③

 

 vB2=m ÷(m+m′)×vA1  ・・・④

 

 

 

 ここで一旦、この時点での物体A及び物体Bの「運動量」を計算してみます。  

 

 すると

 

物体Aの「運動量」は、m×vA2=m×÷(m+m′)x×vA1

 

物体Bの「運動量」は、m′×vB2=m′×÷(m+m′)×vA1

 

故に物体Aと物体Bの「運動量」を合計すると

 

×vA2+m′×vB2=m×(m+m′)÷(m+m′)×vA1

 

=m×vA1となります。

 

 

 

 他方、当初の「運動量」もvA1×m+vB=vA1×m+0=vA1×mでしたので、物体Aと物体Bとは、その「共通速度」において、当初の「運動量」m×vA1を「保存」しているところとなります。

 

 

 

 さて、ここで物体Aについて、当初の速度がvA1でしたが、物体Aが、ばねCを介して、物体Bを加速し、物体A自身は減速し、その速度がvA2となりました。

 

 

 

 とすると、vA1の速度のうちvA3=vA1-vA2分の速度に相応する力が、ばねCに蓄積されたこととなります。

 

 一般に、物体が速度vでばねに正面衝突した場合××の運動エネルギ-が、一旦ばねの一種の位置エネルギ-として蓄積され、その後正反対の方向に同一の運動エネルギ-で跳ね返されます。結果、速度vで入射した物体は、速度-vで反射されることとなります。

 

 

 

 ここではvA3に相当する速度がばねCに蓄積され、その後反射されたのですから、その反射速度は-vA3となります。

 

 したがってvA4 =-vA3=-(vA1-vA2)=-vA1+vA2となります。

 

 ここで③式より、vA2=m÷(m+m′)×vA1でした。

 

 ゆえに

 

 vA4=-vA1+m÷(m+m′)×vA1

 

    =-vA1(1-m÷(m+m′))

 

    =-vA1(m+m′-m)÷(m+m′)

 

     =-vA1×′÷(m+m′) 

 

    =m′÷(m+m′)×(-vA1) ・・・⑤

 

 

 

 他方、ここでこの時の「反射時間」をtとし、この「反射」の際において物体Aに生じる力をfとし、その時の「加速度」をαとします。

 

 またこの「反射」の際において物体Bに生じる力をfとし、その時の「加速度」をβとします。

 

 すると、この「反射時間」は、物体Aも物体Bも、「同じ」tです。

 

 したがって

 

  f=mα=m×vA4÷      であり、

 

  f=m′β=m′×vB4÷t  です。

 

 

 

 ここで「作用・反作用の法則」により、

 

 f=-fです。

 

 よって

 

  ×vA4=-m′×vB4 です。

 

 よって、

 

 vB4=-m÷′×vA4  です。

 

 

 

 ここで式より

 

 vA4=m′÷(m+m′)×(-vA1) です。

 

 よって

 

 vB4=(-m÷m′)×(m′÷(m+m′)×(-vA1))

 

    =(-m)÷(m+m′)×(-vA1)

 

       =m÷(m+m′)×vA1 ・・・⑥

 

 

 

 

 

 ここで物体Aと物体Bとの「運動量」について求めてみるものとします。

 

 すると物体Aの運動量は

 

 m×vA4=m×(-m′÷(m+m′)×vA1) ・・・⑦ です。

 

 他方物体Bの運動量は

 

 mvB4=m′×÷(m+m′)×vA1 ・・・⑧ です。

 

 

 

 ここで物体Aと物体Bの双方の運動量を合計すると

 

 ⑦+⑧及び⑤式と⑥式とにより

 

 運動量=m×vA4+m′×vB4

 

   =m×(-vA1×′÷(m+m′) )

 

    +m′×(m÷(m+m′)×vA1)

 

   =((m×(-m′))+(m′×m)×vA1÷(m+m′)

 

   =(-mm+mm′)÷(m+m′)×vA1

 

   =0÷(m+m′)×vA1

 

   =0 となります。

 

 

 

 すなわち、相方の「運動量」が「相殺」されていることが分かります。

 

 

 

 次に、物体Aについて、その最終速度を計算します

 

 物体Aについて、その「最終速度」vA5は、前述のとおり

 

 vA5=vA2+vA4 ・・・①(再掲) です。

 

 ここで前述のとおり

 

 vA2=m ÷(m+m′)×vA1 ・・・③(再掲)

 

 また vA4=-vA1×′÷(m+m′)  ・・・⑤(再掲)

 

 ですので、

 

 vA5=vA2+vA4

 

    =m÷(m+m′)×vA1-m′÷(m+m′)×vA1

 

  =(m-m′)÷(m+m′)×vA1  ・・・⑨

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次に物体Bについて、その「最終速度」vB5は

 

 物体Bについて、その「最終速度」vB5は、前述のとおり

 

 B5=vB2+vB4 ・・・②(再掲)  です。

 

 ここで前述のとおり

 

 vB2=m ÷(m+m′)×vA1  ・・・④(再掲)

 

 また 

 

 vB4=m÷(m+m′)×vA1 ・・・⑥(再掲)

 

 ですので、

 

 vB5=vB2+vB4

 

    =m÷(m+m′)×vA1+m÷(m+m′)×vA1

 

    =2m÷(m+m′)×vA1 ・・・⑩   となります。

 

 

 

 ここで物体A及び物体Bの「運動量」を計算してみます。

 

 ここで、物体Aの「運動量」は、式⑨より

 

   物体Aの運動量=m×vA5

 

          =m×(m-m′)÷(m+m′vA1

 

          =(mm-mm′)÷(m+m′)×vA1 ・・・⑪

 

 

 

 また物体Bの「運動量」は、式⑩より

 

   物体Bの運動量=m′×vB5

 

          =m×2m÷(m+m′)×vA1  ・・・⑫ です。

 

 

 

 ゆえに物体Aと物体Bの相方の「運動量」と足すと、

 

 総運動量

 

    =物体Aの運動量+物体Bの運動量

 

  =m×vA5+m′×vB5

 

    (mm-mm′)÷(m+m′)×vA1+m×2m÷(m+m′)×vA1

 

    (mm-mm+2mm′)÷(m+m′)×vA1

 

  =(mm+mm′)÷(m+m′)×vA1

 

  =m(m+m′)÷(m+m′)×vA1

 

  =m×vA1

 

 

 

 したがって「衝突前」の「運動量」m×vA1と「衝突後」の「運動量」とは「一致」し、「衝突」の「前・後」において、「運動量」は「保存」されていることが分かります。

 

 

 

 

 

(7)作用と反作用の法則における公式とその応用について

 

 

 

 これまでの考察により、ビリヤ-ドの球同士の衝突のような場合における、「作用・反作用」の公式は次のようになります。

 

 

 

 vA5=(m-m′)÷(m+m′)×vA1  ・・・⑨(再掲)

 

 vB5=2m÷(m+m′vA1  ・・・⑩(再掲)

 

 

 

 これをビリヤ-ドの球に当てはめてみます。

 

 ビリヤ-ドの球同士は、「同じ」質量なのでm=mです。

 

 ここでv= 1、m=m1とします。

 

 

 

 すると

 

 vA5=(l1)÷(11)×1=0

 

 vB5=2×1÷(11)×11

 

 となります。

 

 

 

 すなわちビリヤ-ドの球同士が「衝突」すると、速度1で進行している球Aが、球Bに「衝突」すると、球Aは「停止」し、球Bは速度1で運動を始めることが分かります。

 

 これにより、「鋼球」同士の衝突や、ビリヤ-ドの球同士の衝突については、合理的に説明ができます。

 

 

 

 次に、野球のバットやゴルフのクラブが、「弾力」のあるボ-ルを高速で打撃するような場合を考えてみます。

 

 

 

 試しにクラブヘツドの質量を6、ボ-ルの質量を1、クラブの速度を1として、上記の公式に当てはめてみます。

 

すると

 

 vA5=(6-1)÷(6+1)×1=5÷7=0.

 

 vB5=2×÷(6+1)×11÷7=1.

 

 

 

 すなわちゴルフのクラブヘツドの速度は1から0.7に「減速」します。

 

 この時、この「減速」が一定の「衝撃」として、「手」に伝わります。

 

 

 

 他方、ゴルフボ-ルは、クラブヘツドの1.7倍の速度で飛んで行きます。

 

 ただし、これは「完全弾性衝突」した場合の数値であって、実際上は1.5倍程度に収まるものと考えられます。

 

 

 

 次に、野球の「バント」のように、静止しているバットにボ-ルが、当たる場合を考えます。

 

 ボ-ルの質量を1、バットの質量を6、ボ-ルの速度を1として、先の公式に当てはめてみます。

 

 

 

 すると

 

 vA5=(1-6)÷(1+6)×1=-0.

 

 vB5=2×1×(1+6)=0.

 

となります。

 

 

 

 すなわち、ピッチャ-が投げたボ-ルはバットで「跳ね返り」ますが、その速度はボ-ル初速の0.7倍に「減速」しており、結果、ピッチャ-の手元に届く前に地面に落下し、「ゴロ」となります。

 

 他方、バットの速度は、0から0.3に「加速」し、バッタ-は、この「加速」を「衝撃」として、「手」に感じます。

 

 

 

 以上により、運動する物体が静止している物体に対して、「完全弾性」体が「単衝突」する場合における「作用・反作用」ついての考察を終えます

 

 

 

 次には、「静止」している物体同士における「作用・反作用」について考察を行ないます。

 

 これは、水面上のボ-トAから手で他のボ-トBを押すような場合に当たります。

 

 ただし、ここでは、ボ-トと身体の質量に対して、「手」の質量が充分に小さいものとします。またここでも、ボ-トAとボ-トBとの間に「ばね」Cが存在するものと仮定します。

 

 

 

 ここでボ-トAから、バネCを介して、ボ-トBを「ゆっくりと」押すとします。

 

 するとバネCは、「縮み」つつ、ボ-トAとボ-トBの「双方」に対して、「押し返し」ます。

 

 この結果、このばねの力を受けて、今度はボ-トAとBとが、それぞれ「反対方向」に動き始めます。

 

 その結果ボ-トAとボ-トBとの「距離」が離れて行きます。

 

 この結果、「手」がもはやボ-トBを押すことができない段階に到達し、ここで「作用・反作用」も終了します。

 

 

 

 ここで「手」が、「ゆっくりと」ボ-トBを押すと、「ばね」Cが充分に「縮む」前に、ボ-トAとBとが「運動」を始めます。

 

 その結果、ボ-トAとBとを「押す」力も「弱く」なり、ボ-トAとBとの運動「速度」は「ゆっくり」となります。

 

 他方、「手」が「速く」ボ-トBを押すと、「ばね」Cが充分に「縮み」、その後ボ-トAとBとが、「運動」を始めます。 

 

 その結果、ボ-トAとBとを「押す」力も「強く」なり、ボ-トAとBの運動「速度」は「速く」なります。

 

 

 

 しかしいずれにしても、「ばね」Cの両端に区別はありません。

 

 したがって「ばねC」Cの両端に働く力の大きさは「等しく」、その作用方向はそれぞれ反対方向となるはずです。

 

 したがって、ボ-トA側に働く力をfとすれば、ボ-トB側に働く力は-fとなるはずです。

 

 

 

 ここでボ-トAの質量を乗員を含めてmとし、ボ-トBの質量をmとします。

 

 またボ-トAに生じる加速度をα、ボ-トBに生じる加速度をβとします

 

この加速度が作用する時間をtとし、t秒後のボ-トAの速度をvA、ボ-トBの速度をvBとします。

 

 

 

 するとf=mα=vA÷

 

    -f =m′β÷

 

 

 

 したがって、mα=m×vA÷t=-m′β÷t=-m′×vB÷

 

 

 

 したがって、m×vA=-m′×vB

 

 したがって、vB=-m÷×vAとなります。

 

 

 

 ここでボ-トAの質量mを2、ボ-トBの質量m1、ボ-トAの速度vAを1として上記の式に代入すると

 

vB=-2÷1×1=-2 となります。

 

 

 

 すなわち、「ばね」Cによってボ-トAが速度1で跳ね返される場合、ボ-トBは速度2で進んでいくこととなります。

 

 

 

 

 

(8)作用・反作用の法則と原子構造について

 

 

 

 以上で、「作用・反作用の法則」における現象論的考察を終えます。

 

 ここで明らかになったことは、最も単純な状態においてすら、作用・反作用の法則の現象形態は実に多種多様であるということです。

 

 

 

 これらの現象形態は、一見矛盾し合っているようにさえ見えます。

 

 物体Aと物体Bとに「力」が及ぶ結果、AとBとがくっついて運動する場合もあれば、同じ方向に進む場合も有り、互いに反対方向に進む場合もあり、一方が「静止」する場合すらあります。

 

 表面上、これらの互い相矛盾し合う諸現象にもかかわらず、その諸現象の内部において、一定の力学的範囲において「作用・反作用の法則」が貫徹していることが明らかとなりました。

 

 

 

 それではこの多様な諸現象の内部で働いている「作用・反作用法則」の「本質」は何なのでしょうか?

 

 ということで、次には「作用・反作用の法則」と「本質」について、分析・考察を進めて行きたく思います。

 

 

 

 これまでの考察において、物体Aと物体Bとの間に「ばね」Cの存在を「仮定」すると、「作用・反作用の法則」を合理的に説明・理解することができました。

 

 しかし現実には、一般に物体Aと物体Bとの間に「ばね」Cは「見えません」。

 

 したがって、そもそも物体Aと物体Bとの間に「ばね」Cを「仮定」する事自体が、論理の飛躍であり間違っているのではと思われることでしょう。

 

 しかし、この問題は物体AとBとを「マクロ」に見ているだけでは解決ができません。

 

 すなわち、物体の「内部構造」にまで、考察を深めなくてはなりません。

 

 

 

 一般に物体は、原子・分子から成り立っています。

 

 そして、原子は電子及び原子核から成り立っています。

 

 そして、その原子核はまた陽子と中性子から成り立っています。

 

 ここに「ヒント」があります。

 

 

 

 物体Aと物体Bとの間に「力」が働くとは、一体どういう状況でしょうか?

 

 「作用・反作用」が成りたつ為には、まずは「押す」(あるいは引っ張る)という運動が必要です。

 

 例えば、転がる球が別の球を「押す」ように。あるいは「静止」したボ-トから他のボ-トを「押す」ように。

 

 ここで「押す」とは何でしょうか?

 

 それはまずもって物体と物体との「距離」を「縮める」ことです。

 

 

 

 物体Aも物体Bもともに「原子」から構成されています。

 

 ここで、この物体Aと物体Bとの「距離」が「縮まれ」ば、一体どうなるでしょうか?

 

 物体Aと物体Bとを構成する各原子の外殻に、まず「電子」が存在します。

 

 ここで物体A・B間の「距離」が「縮まれ」ば、まず「電子」の「軌道」が圧迫されます。

 

 そしてこの「圧迫」によって、電子軌道が「歪み」ます。

 

 しかし、電子は自己の通常の軌道を「回復」しようとします。

 

 そして、この電子軌道の「回復」作用は、電子軌道による「反発」となり、物体を「押し戻そ」うとします。

 

 すなわちこの電子と電子軌道とが「ばね」の役割を果たすものと考えられます。

 

 一般的に、「物体的力」における「力」の伝搬は、まずはこの「電子軌道の歪み」によるものと考えられます。

 

 

 

 ここで、問題解決としたいところですが、実はこれだけでは、「作用・反作用の法則」について、説明し切ることができません。

 

 確かに「軽微」な力の作用だけであれば、「電子軌道の歪み」だけで、事足りると考えられます。

 

 しかし、物体と他の物体との「衝突」などという激烈な事象の場合、電子軌道の歪み「だけ」で、「作用.反作用の法則」を説明することは困難です。

 

 何故ならば、電子の質量に対して原子核の質量が大き過ぎるのです。

 

 物体同士の衝突では、互いに互いを弾き飛ばし合ったりします。

 

すなわち、それぞれの物体の「原子核」が激しく運動します。

 

 この時、この原子核に比べて「圧倒的に」質量の小さい電子が、原子核を弾き飛ばすと考えるにはやはり無理があります。

 

 必ず、何か別の要素があるはずです。 その「答え」は「原子核」そのものにあるはずです。 原子核は、陽子あるいは陽子及び中性子とから成り立っています。すなわち、あらゆる「原子核」には「陽子」があります。陽子もまた電子と同じく「電荷」を持っています。ただし「電子」の電荷がマイナスなのに比し、「陽子」の電荷はプラスとなっています。

 

 ここに「ヒント」があります。

 

 

 

 原子Aと原子Bとの衝突について考えてみます。原子Aと原子Bとが「衝突」します。原子同士が押し合い、まずは電子軌道が歪みます。これは、原子核にとっては、電子のバリアが一部突破されたことを意味します。この電子のバリアが互いに突発されることにより、原子Aと原子Bの「原子核」同士が、互いに「接近」します。しかし、どの原子核にも「全て」陽子が存在します。陽子にはプラスの電荷があります。つまり、この「衝突」により、原子核Aの陽子と原子核Bの陽子とが「接近」します。

 

 これにより陽子と陽子との間に「ク-ロンの法則」が作動します。原子A内の陽子と原子Bとの間に「電気的斥力」が作動します。 すなわち、ここでは「電子」に替わって、あるいは電子に加えて、陽子間の「電気的斥力」が「ばね」の役割を果たしています。

 

 

 

 ちなみにク-ロンの公式によれば、この電気的斥力は、原子核A内の陽子Aと、原子核B内の陽子Bとの電荷の積に比例し、その陽子間の「距離」の自乗に反比例しています。これは「万有引力の法則」と酷似しています。

 

 したがって、この「作用・反作用の法則」の分析に先立って、まずは「万有引力の法則」を分析したことは、あながち「的はずれ」ではなかったこととなります。

 

 

 

 この「万有引力の法則」と「ク-ロンの法則」とは酷似しています。

 

 しかし、違いもあります。もちろん、「質量」と「電荷」とは違っています。

 

 また万有「引力」と電気的「斥力」という点でも違っています。しかし、何といっても「万有引力」と「ク-ロン力」とでは、その「強さ」が決定的に違います

 

 万有引力は強いように見えて、ク-ロン力に比べれば比較にならないほど「弱い」力なのです。万有引力は、天文的大きさの物体にとっては大きな作用を有します。しかし、原子核レベルの大きさでは、「万有引力」の影響は無いのに等しいのです。他方、このク-ロン力は、原子核レベルの小さな範囲内でも絶大な力を発輝します。

 

 すなわち陽子間の「僅かな」距離の変化が、大きなク-ロン力を生み出します。

 

 これにより、「衝撃」に際して、「瞬時」に陽子同士は互いを弾き飛ばし合うことができます。

 

 

 

 

 

(9)作用・反作用の法則の本質とクーロン力について

 

 

 

 以上により、「作用・反作用の法則」の「本質」は「ク-ロンの法則」に基づく「クーロン力」であり、そこには「電子」のみならず「陽子」が深く関わっていることが明らかとなりました。

 

 この「作用・反作用の法則」の「本質」の解明により、この「作用・反作用の法則」の「適用範囲」も明らかとなりました。

 

 すなわち、特殊な例外を除いて、「作用・反作用の法則」は、「ク-ロンの法則」が作動する範囲でのみ、適用できるということです。

 

 すなわち、「電荷」を持たない物質、例えばニュ-トリノや中性子は、一般的に「作用・反作用の法則」の適用範囲外だということです。

 

 このため、ニュ-トリノや中性子は原子核と何らの作用も反作用も生ぜず、原子核内を透過します。

 

 ただしニュ-トリノや中性子が原子核自体に衝突した場合は別です。しかしこの「原子核衝突」は、一般の「作用・反作用」とは異なる別の事象です。そこに働く力は「量子力学」的な力であって、ニュ-トン力学における「作用・反作用」とは別の事象と考えられます。

 

 

 

 したがって一般的に、「作用・反作用の法則」の「本質」は「ク-ロン力」にあり、その「適用範囲」は、この「ク-ロン力」が作動する範囲内である、ということになります。

 

 

 

 

 

(10)作用・反作用の法則と張力・押力について

 

 

 

 さて、「作用・反作用の法則」の「本質」が解明できたので、その応用へと移ることができます。

 

 ここに「棒」があります。

 

 この「棒」の「質量」を度外視すれば、したがってこの「棒」に関する「慣性」、「引力」、「鉛直抗力」、「重力慣性力」を度外視すれば、このひもの「両端」を押さえた際に、この「棒」の「両端」にかかる力は、その「大きさ」は「等しく」、その「向き」は互いに「逆」となります。

 

 何故ならば、「棒」とは分子の連鎖、したがって原子の連鎖に他ならないからです。

 

 したがって、少なくともこの「棒」が一定程度均質であるならば、この「棒」の「内部」に作用する力は「均一」となるはずです。

 

 何故ならば、この「棒」を構成する各原子の各電子同士は、また各原子の陽子同士は、互いに「押し合って」いるからです。

 

 この「押し合い」を通じて、すなわち各原子の「作用・反作用」を通じて、原子間相互の力は「ならされて」行きます。すなわち「均等化」されて行きます。

 

この結果、「棒」のどの部分を取つても、「同じ」力が作用していることとなります。

 

 

 

 したがって、「棒」の「両端」にも「同じ」大きさの力が作用し、その方向は互いに「逆」方向ということになります。これは「金太郎飴」と似ています。金太郎飴の両瑞が「同じ」なのは、金太郎飴内部の各部分が「同じ」だからです。

 

 しかし更に良く見てみると、金太郎飴の手前側の顔が右向きならば、その反対側の顔は左向き、すなわち「逆」となっています。これは顔という「一つ」の絵に、表と裏の「両面」があるからです。「作用・反作用」もこれと同様です。「作用・反作用」は、これ自体「一つ」の物理現象なのです。これを「一方」から見ると「作用」となり、「他方」の側が「反作用」として認識されることとなります。

 

 

 

 これは「ばね」においても同様です。したがって「ばね」の両端には、「同じ」大きさの力が、互いに「逆」方向に働くこととなります。またこれは「ひも」においても同様です。「ひも」の両端を引っ張ります。するとその「ひも」の内部の各原子の電子が引っ張られます。電子間の相互作用により、「ひも」内部の力は均等化しようとします。

 

 

 

 また、電子が一方に引っ張られると、結果としてその反対側の電子バリアは薄くなります。その結果、その原子内の陽子は隣接する原子内の陽子に接近します。この陽子同士の接近により電気的斥力が生じ、陽子同士は押し戻されます。

 

 このような電子同士や陽子同士の電気的斥力や、また陽子と電子間の電気的引力の絶えまない相互作用によって、棒と同様、「ひも」においてもその内部における力は平準化し、その「ひも」のどの部分を取っても「同じ」力が作用することとなります。この結果、「ひも」の「両端」においても、「同じ」大きさの力が、互いに「逆」方向に働くこととなります。

 

 

 

 「ひも」におけるこの「張力の均等化」は、簡単な実験で確認することができます。「輪ゴム」を幾つか繋いで引っ張ってみます。すると各「輪ゴム」の「伸び」が均一であることが確認できます。この「張力の均等化」により、「ひも」は、A点に生じた力をB点に伝達することができます。

 

 

 

 おもりを「ひも」のA点につないで、「ひも」のB点を手で持ちます。するとA点で生じた「重力慣性力」が、「ひも」を伝わり、「手」に伝わります。手に「直接」おもりを持っているのではないにもかかわらず、手はその「おもり」の「重さ」を感じます。このように「ひも」は、また「張力」は、力を「伝達」することができます

 

 

 

 これは「棒」であっても基本的には同じです。そして、その根本にあるのは、電子及び陽子の相互間に作用する電気的斥力、あるいは電気的引力、両者を合わせて「ク-ロン力」だと言うことができます。

 

 

 

 以上によりニュ-トンの「運動の第3法則」である「作用・反作用」の法則」についての考察を終え、次の課題へと進むこととします。