揚力の本質について

 

 

 

(1)ベルヌーイの定理について

 

「作用・反作の法則」の分析を一応終えたところで、次にこれを基礎として「揚力」の分析に進みたいと思います。

 

 

 

「揚力」の「本質」については、様々な見解があります。

 

中でも有力なのが「ベルヌーイの定理」を、「揚力」の本質と捉える見解です。

 

そのため、「揚力」の本質を分析するに際して、まずはこの「ベルヌーイの定理」について考察を進めたいと思います。

 

 

 

ここで水などの流体が、導管Aを流れ、次に導管Bを流れるものとします。

 

そして導管Aの方が導管Bに比べて口径が大きいものとします。すなわち導管Aの方が導管Aに比べて「太い」ものとします

 

また、「ベルヌーイの定理」では、この導管Aと導管Bとの相互の「高さ」も問題となりますが、ここでは考察の便宜の為、この導管Aと導管Bとは、「同じ」高さにあるものとします。

 

その上で、導管A、B内の「内圧」をそれぞれPa、Pbとし、導管A、B内の流速をそれぞれVa、Vbとします。また流体の「密度」をρ(ロー)とします。

 

すると「ベルヌーイの定理」より、

 

Pa+1÷ρVa=Pb+1÷ρVb=(一定)・・・① となります。

 

(※ここでVaは流速Vaの自乗を、Vbは流速Vbの自乗を表すものとします。)

 

 

 

これを一般化すると

 

+÷ρ =(一定)…②  となります。

 

 

 

ここでこの②式の「意味」を考えます。   

 

そのため、この①式に若干手を加えてみます。

 

ここでρ(ロー)とは「密度」です。密度とは、その流体の質量をその流体の体積で割ったものです。そしてその「単位」は、一般的には「kg/3(キログラム毎立方メートル)で表されます。したがって、「質量」をm、「体積」をUと表わすと、ρ=÷Uとなります。

 

 ※ 体積をV(volume)で表したいところですが、すでにVの記号は速度(velocity)で使用しているので、止むを得ずUという記号を使用します。

 

 

 

 

 

したがって、①により、Pa+÷ρVa=一定であり、またρ=÷Uであることにより次のようになります。

 

P+1÷×÷×=k となりますが、この式の両辺に体積Uを掛けると次のようになります。

 

P×U=÷×××=×U・・・③

 

 

 

となりますが、ここでこの「P×U」の「意味」を考えてみます。

 

 

 

この為、一旦この③式を離れて、直立した円筒形の大きな「水筒」を考えます。

 

ここでこの水筒の断面面積をSとし、そこに「水」を入れて行きます。ここでこの水筒内の水面の高さがhとなった時点でこの注水を一旦止め、これを「基準」とします。

 

さてこの上で、さらに注水し、水の高さがh+△hとなったとします。

 

すると、この「新たに」注水した水の質量をmとすると、基準面にかかる力fはf =×g (gは重力加速度)となります。

 

この力が、水筒の底面に「追加荷重」としてかかります。

 

ここで「底面」の面積はSです。この面積S追加荷重fがかかります。したがって、追加水圧をPとすると、圧力の定義により、P=÷Sです。

 

したがって、f=×Sです。

 

ここでf=mgなので

 

mg=×Sとなります。この両辺にΔhをかけます。

 

するとmgΔ=××Δhとなりますが、体積U=S×Δhなので、mg=×Uとなります。ここでmgΔhは、追加注水した水の「位置エネルギー」です。

 

したがって、P×Uとは、水の「位置エネルギー」が、水圧のエネルギーに転化したものだということになります。

 

ここで「エネルギー保存の法則」により、位置エネルギー+運動エネルギー=一定です。

 

したがって、式③は、すなわち「ベルヌーイの定理」は、結局は「エネルギー保存の法則」の流体版であることとなります。

 

 

 

エネルギー保存の法則といえば、「振り子」を思い起こします。振り子は断えず位置と速度とを変えますが、その位置エネルギーと運動エネルギーとの「和」は、常に一定です。

 

 

 

「ベルヌーイの定理」は、この「エネルギー保存の法則」を、「密閉」された「導管内」の流体に応用したものです。

 

その限りにおいては、「ベルヌーイの定理」は成立するものと考えられます。

 

しかし、導管の一方が広く空間に向かって開いている「開口管」についても、「ベルヌーイの定理」が、成り立つのかどうかを、検討してみます。

 

 

 

(2)ベルヌーイの定理の検証について

 

ここでこの①式を変形すると次のようになります。

 

Pa-Pb=÷ρVb-1÷ρVa・・・④

 

この④式より、導管A内の内圧Paが導管B内の内圧Pbより、大きければ、その「差」により、導管B内の流速Vbは、導管A内の流速Vaより「速く」なることか分かります。

 

この結論は、私達の日常の経験と「合致」します。

 

故にこの④式は一応正しいものとして、結論付けられます。

 

 

 

次に同様にして、①式を次のようにも変形できます。

 

すなわち、

 

÷ρVb-1÷ρVa =Pa-Pb・・・⑤

 

この式は、④式の両項を、それぞれ「逆」にしただけのものです。

 

しかしただそれだけのことで、④式と⑤式との持つ「意味」は全く異なってきます。

 

 

 

これが「等式」の怖いところです。

 

「等式」でA=Bとする場合、それはAとBとの「相関関係」を表わします。

 

しかし、この「相関関係」は必ずしも「因果関係」ではないのです。

 

したがってA=Bと書かれている場合、A(AならばB)が成り立っても、必ずしも「B(BならばA)が成り立つとは限らないのです。

 

 

 

ここで⑤式の「意味」を分析します。

 

すると⑤式の意味するところは、導管B内の流速Vbが導管A内の流速Bより速くなれば、導管B内の内圧Vbは導管A内の内圧Vaより小さくなる、ということになります。

 

しかしこれは、私達の日常の経験と一致しません。

 

「バケツ」に水を入れ、その底部側面に小穴を開けます。するとその小穴から水が噴き出します。

 

バケツにさらに水を入れると、バケツ底面での「水圧」が増します。するとその水はさらに勢いよく噴出します。

 

この時、水の「水位」すなわち水面上位の持つ「位置エネルギー」は、まずバケツ底部における水圧に転化し、この水圧はさらに、噴出する水の「運動エネルギー」に「全て」転化します。

 

したがって、この噴出する水には、位置エネルギーも水の圧力エネルギーも、もはや残っていません。全てのエネルギーが「運動エネルギー」に転化しています。

 

したがってこの噴出する自体にはもはや「内圧」が無い、ということになります。

 

噴出する水の「速度」を決定するのは、まずは「水位」であり、次にはバケツ内の「水圧」(圧力エネルギー)です。

 

したがって水位が高ければ噴出する水の速度は「速く」、水位が低ければ、水の速度は「遅く」なります。

 

しかしいずれの場合においても、噴出する水の「内圧」は零となります。

 

したがって、流速の大小が内圧の大小を決定することは、一般的にはありません。

 

 

 

したがって流速が速くなったが為に、水圧が低下することも空気圧が低下することもありません。

 

もし流速が速くなったが為に気圧が低下するならば、高速で走行する新幹線内の気圧も低下することとなりますが今のところそのような経験をしたことがありません。

 

 

 

よって④式は正しく、⑤式は誤りということとなります。

 

 

 

しかし、一見⑤式が成立するかのような現象が部分的には生じ得ます。

 

例えば「霧吹き」です。

 

霧吹きでは、容器に水を入れ、そこに細管を立て、その細管の開口部に高速の空気を送りこみます。すると、細管の中の水が吸い上げられて水と空気とが混じり合い霧となります。

 

これは一見ベルヌーイの定理によるものに見えます。

 

しかし前述のとおり、ベルヌーイの定理では説明できません。

 

結論から言えばこれは、高速の空気の流れによって、細管内の空気が巻き込まれ、高速の空気の流れに乗ってその空気が流出して行く結果です。この空気の流出によって細管内の空気が減少し、そのため細管内の気圧が下がり、大気圧との差により水が押し上げられます。   

 

そしてこの水が霧となるのです。

 

これは、空気に粘性があるからこそ、すなわち空気問に一定の「接着力」があるからこそ起こり得る現象です。したがって空気など流体に粘性が「無い」ことを前提とする「ベルヌーイの定理」によるものではありません。

 

ちなみにこの「粘性」は空気と空気、空気と水、水と水、等の間にも存在します。

 

したがって、高速の水流が、細管を通じて細管内の水を引き込むこともあります。

 

これも一見「ベルヌーイの定理」によるものに見えますが、ベルヌーイの定理によるものではありません。

 

 

 

(3)ベルヌーイの定理は揚力を生じない

 

以上により、飛行機の「揚力」が「ベルヌーイの定理」によるものとは、到底考えられません。

 

一般に流布されている見解では、「翼」の断面を見るに、翼の上部の流線の方が下部の流線より長い。したがって上部流線の方の速度が、下部流線の速度より速い。したがって翼の上部の気圧は下部の気圧より低い。したがって上向きの力が作用し、これが「揚力」となる、とします。

 

しかし、これまでの分析のとおり、流速が速くなるから気圧が下がるというものでもありません。

 

 

 

またさらに決定的なのは、翼の「形」です。

 

翼の「形」は、「頂点」部分がかなり「前方」に偏っています。

 

この結果、空気の流れから見て、前方は「急な」登りとなっており、後方が「緩やかな」降りとなっています。

 

これを「逆」にするとどうでしょうか?

 

空気の「流速」は通常の翼と「同じ」です。

 

しかし、「揚力」が発生するでしょうか?

 

逆形翼の場合、翼の上部前方が「緩やか」となっています。

 

すなわち前方部分の「面積」が大きくなります。

 

したがって空気の「抵抗」が増します。そしてこの翼前方斜面の「角度」により、空気抵抗は、翼を「押し下げ」ます。すなわち「揚力」ではなく、逆に「降力」を生じます。

 

以上により、飛行機の「揚力」は、「ベルヌーイの定理」に基づくものでは「無い」と結論づけられます。

 

 

 

高校の頃、飛行機の揚力や、回転するボールの進行方向が曲がるのは、ベルヌーイの定理によるものだと教わりました。

 

私は、これがどうしても納得できませんでした。

 

そもそも流速が速くなったら気圧が下がる、という点が理解できませんでした。

 

またこのベルヌーイの定理と揚力との関係が全く理解できませんでした。

 

しかし、他の人はどうやら理解できているように見えます。

 

そして、自分だけは何故理解できないのかと、思いました。

 

しかし、理解できなくて良かった、と思います。

 

ベルヌーイの定理を揚力の本質とする見解は、結局は間違いであったのですから。

 

 

 

(4)分子間引力について

 

しかし、ここで新たな疑問が生じます。

 

それでは飛行機は「何故」飛ぶのか?

 

すなわち「揚力」とは何か、また「揚力」はどのようにして生じるのか、という疑問が生じます。

 

飛行機の「揚力」を生み出すものは「翼」です。この「翼」と「空気」との関係が「揚力」を生み出します。

 

したがって、「揚力」を分析する為には、この「翼」と「空気」との「関係」を分析しなくてはなりません。

 

ここで「翼」も「空気」も共に「分子」から構成されています。

 

したがって「揚力」を分析する為には、遠回りでも、この「分子」とその分子間の「関係」を分析しなくてはなりません。

 

一般に物体を構成する「分子」は互いに力を及ばし合い、作用し合っています。これは程度の差こそあれ、固体、液体、気体それぞれに共通です。

 

また、力の及ぼし方も様々であり、共有結合、イオン結合、金属結合、水素結合、静電気による結合、ファンデルワース力による結合等があり、まだ未解明のものもあると考えられます。

 

 

 

共有結合とは、原子と原子とが互いに電子を供給し合い、これによって互いの原子が結合し合うもので、かなり強力な結合となります。ただし1個の原子が2個分の電子を他の原子に提供して結合する気前の良い共有結合もあります。ちなみに「共有結合」は、原子核と原子核とが「電子」を「共有」することによって結合する結合です。

 

それでは、電子の「共有」によって「何故」原子核と原子核とが「結合」するのでしょうか? ここに二つの原子核AとBとがあり、原子核A内には陽子aがあり、原子核Bには陽子bがあり、そして「共有電子」をcとします。

 

すると原子核A内の陽子aはプラスの電荷を帯びているため、マイナスの電荷を帯びている共有電子cと引き合います。同様にして、原子核B内の陽子bは共有電子cと引き合います。結果、共有電子cを「媒介」として、互いには何発しあうはずの陽子aと陽子bとが、「引き合い」ます。その結果、陽子a(及び中性子)によって構成される原子核Aと陽子bを(及び中性子)によって構成される原子核Bとが、引き合い「結合」するものと考えられます。

 

 

 

またイオン結合は、塩の分子のように、ナトリウムのプラス性と塩素のマイナス性とにより結合するものです。金属結合は各原子が全電子を共有し合うものです。

 

このように、微小の世界ではその結合や反発において、「電荷」に基づく「クーロン力」が大きな役割を果たしているものと考えられます。他方、いわゆる「万有引力」は、巨大な質量を有する天体間等では大きな役割を果たしますが、微小の世界における物体同士の間では極わずかな力しか及ぼしえません。

 

以下の考察では、微小の世界に働く「分子間引力」を軸に分析を進めて行きますが、この「分子間引力」とは「万有引力」とは異なります。この「分子間引力」については、まだ謎がありますが、基本的にはこの「クーロン力」によるものであろうと考えられます。

 

 

 

さて、このように様々な「結合」がありますが、ここでまず注目すべきは「水素結合」です。「水」分子は2個の水素原子と1個の酸素原子とにより構成されます。ここで水素はプラス性を持ち、酸素はマイナス性を持ちます。また水素は酸素に比べて小さく、酸素は水素に比べて大きいです。この水素と酸素とが結合すると、完全な「球体」ではなく、「いびつ」な形となります。

 

この結果、水分子1個において、水素側はプラスとなり、酸素側はマイナスとなります。

 

ところで、プラスはマイナスと引き合い、プラスとプラス、またマイナスとマイナスとは互いに反撥し合います。そしてプラスとマイナスとが引き合う結果、水分子同士は結合し合います。私達が飲む「液体の「水」はこのようにして形成されます。

 

しかし、この水分子同士の「分子間引力」を上回る熱エネルギーが供給されるとこの分子間の鎖は切れて、水分子は「気体」となり、自由に飛び回るようになります。

 

しかし、この「分子間引力」が無くなったのではありません。

 

熱運動の力が、「分子間」引力を上回っただけです。

 

したがって局所局所では、この「分子間引力」が作用し続けます。

 

 

 

さて、この「水分子」間に作用する「水素結合」は、「分子間引力」の典型的な例ですが、全ての分子は程度の差こそあれ「いびつ」です。分子「全体」としては、電気的に「中性」であったとしても、その分子の各「部分」は必ずしも「中性」ではなく、ある部分は「+」が優勢であり、他の部分は「-」が優勢となり得ます。したがってたとえ電気的には「中性」な分子であっても、電気的な「分子間引力」が作用する余地があります。また「ファンデルワース力」については、分子内の一定の量子的な「ゆらぎ」によって、「中性」な分子同士においても瞬間瞬間においては「電気的」に結合し合うことが、解明されつつあります。またまだ未解明の「分子間引力」も存在すると考えられます。

 

 

 

さて、ここで「揚力」の分析に必要な「結合」とは何か、ということになります。

 

ここで「共有結合」や「イオン結合」また「金属結合」などの「強力過ぎる」結合は問題となりません。「空気」による「揚力」を生じる結合は、「空気」に相応しく、「一時的」かつ「連続的」なものでなくてはなりません。また何十トンもの飛行機を「持ち上げる」だけ「強力」なものでなくてはなりません。これはある意味互いに矛盾し合った条件ではあります。

 

 

 

それでは次にこのような条件に合う「分子間引力」が、そもそも「存在」するのかが、問題となります。

 

これを解明するカギとなるのが、「ヤモリ」です。

 

ヤモリ」は乾いた壁にも貼り付きます。

 

「ヤモリ」の手には無数の「繊毛」が生えており、これが「壁」との「吸着力」を生み出すのです。

 

すなわち「微細」なもの同士には、「固体」であっても「強力」な「分子間引力」が働くのです。またこの「分子間引力」は、「一時的」なものです。これは、壁の上のヤモリの素早い行動を見れば良く分かります。

 

これを一般化すれば、「分子間」が充分に「接近」できれば、互いに強力な「分子間引力」が作用する、ということになります。

 

通常私達が壁を触って粘着しないのは、手の「表面」が粗過ぎて、壁表面の分子に充分に接近出来ないからです。

 

しかし、この壁と手の問に「水」が入れば、手と水、水と壁とが互いに接近し、より接着し易くなります。

 

すなわち「ベタベタする」という状態となります。

 

しかし、水と水との結合はそれほど強くないので、手で壁を押すと、水分子同士の結合が切れて、手は壁から離れ、壁と手に水が残ることとなります。

 

 

 

このことから次のことが分かります。

 

分子同士が「接近」し合うと「強力」な「分子間引力」が作用する。

 

「繊毛」は繊細である。したがって分子間距離を縮めることが出来る。したがって「繊毛」には「強力」な「分子間引力」が生じる、と言えます。

 

なお一般に「動物」の身体は、細胞によって構成され、その細胞は共有結合その他の結合により構成されており、その細胞同士も密着しています。それがゆえに「外力」に抗して自らの身体を保持できるのです。すなわち「動物」の身体の「内部」には全体として強力な「結合力」が生じています。しかし、「動物」と「外部」との結合は一般には強くありません。外部との「結合」が強すぎれば、「動物」は身動きが取れません。

 

したがって、一般に動物の手などは、壁等には吸着しません。

 

しかしヤモリはその「繊毛」を通じて、壁等に吸着することができるのです。

 

 

 

さてここで、水や空気は「繊毛」よりさらに「繊細」です。したがって水や空気には「繊毛」以上に強力な「分子間引力」が作用し得るはずです。しかし、「繊毛」が共有結合その他により、強く結合しているのに、水分子間また空気分子間の結合力はそれほど強くありません。

 

したがって水と壁、空気と翼とが、仮りに強力な「分子間引力」で結合したとしても、肝心の水分子間や空気間の結合力は「繊毛」ほどは強くありません。

 

したがって、このままでは水で壁を引っ張ることはできないし、また空気で飛行機を引っ張り上げることは「出来ない」ということになります。しかし、現実には飛行機は「空気」の力を借りて飛んでいます。何かプラスアルファの要素が必要となります。

 

 

 

ここで、単純には空気を引っ張って飛行機を持ち上げることが出来ないのは、空気間に働らく分子間引力・分子間吸着力の作用が、「持続的」なものでは無く「瞬間瞬間」のものであることによります。空気分子間の吸着力は絶えず生まれ、絶えず消えています。

 

このため、「空気の鎖」が絶えず生まれ絶えず消えていますが、この為「空気の鎖」は極く「近距離」にしか作用しません。距離が離れるとともに、この「空気の鎖」の影響は急速に減少し、一定距離以上は全く無関係となります。

 

しかし、一定の距離内では、この空気同士は互いに繋がり合います。

 

したがって空気はばらばらの「気体」でありながら、一定の条件の下では、一定の「固まり」「一定の集団」、「空気層」として運動していきます。

 

 

 

(5)「空気の衣(ころも)」について

 

子供のころ、走行する電車の窓は夏には開いていました。

 

その後冷房の普及とともに、電車の窓は閉ざされてしまいました。

 

しかしコロナウィルスが蔓延する中で、今電車は窓を開けて走っています。

 

すると窓の外から、久しく聞くことのなかった音が聞こえてきます。

 

電車が「柱」の側を通るたびに、「シュッ シュッ」と音がするのです。

 

電車が高速で柱の側を通過するたびに、動かない柱から「風切り音」がするのです。

 

子供のころ、私はこれが不思議でなりませんでした。

 

「動かない」柱が「何故」風を切るのか、このことが不思議でした。

 

今はそれが分かります。

 

空気中の物体は、一般に「空気の衣(ころも)」をまとっているのです。

 

人も、自動車も、電車も同じです。

 

電車が高速で走ると、その電車は「空気の衣」とともに走るのです。

 

そして、その「空気の衣」が柱に触れると「シュッ シュッ」という「風切り音」が生まれるのです。

 

すなわちこの音は、電車がまとう「空気の衣」が柱に触れて発する「衣(きぬ)ずれ」の音だったのです。

 

このように空気中のあらゆるものは「空気の衣」をまとっています。

 

 

 

また地下鉄に乗ろうとして階段を下りていくと、突然下から風が引き上げてきます。

 

そしてホームに降り立つと、電車の音が近づきやがてライトが見え間もなく駅に電車が滑り込んできます。風が吹いたのは、狭いトンネルで空気の衣が圧縮されて遠方へと届いたからです。

 

軽自動車が右折のため信号待ちをしています。するとトラックが通るたびに、一瞬軽自動車がトラックに吸い寄せられます。このトラックにより、軽自動車を取り巻く空気の衣が引っ張られたからです。

 

暑い中扇風機で顔に風を当てると、涼しくなります。

 

扇風機の風により、顔の周りの湿気を含んだ空気の衣が引きはがされ、新鮮な空気が送られるからです。

 

以上、私たちや空気中の全てのものは、見えない「空気の衣」に包まれています。

 

 

 

ここで「翼」に戻ります。

 

翼前面から「風」が吹いてきます。

 

この風の中の空気分子が「分子間引力」により「翼」に吸着します。この空気分子に隣接する空気分子が吸着します。さらにこの空気分子に隣接する空気分子が吸着します。このようにして次々と空気分子が吸着して行き、一定の「空気層」を形成し、「翼」表面を吸着しながら流れていきます。

 

しかし、これだけでは何の「揚力」も発生しません。

 

ここに「翼」の「形」が「決定的」な意味を持ちます。

 

まさしく、この空気の「分子間引力」と「翼」の「形」により、強力な「揚力」が生み出されることとなります。

 

 

 

  1. 慣性抵抗と粘性抵抗について

 

ここでこの「揚力」の分析に先立ち、水や空気など「流体間」に働く「分子間引力」また、「流体」と翼等の「固体」に働く「分子間引力」について今少し分析・考察を、行ないます。

 

 

 

「作用・反作用の法則」でみたように、分子同士が「押し合う」場合も、「引き合う」場合も、分子間に「作用・反作用の法則」が成立します。そして、この「作用・反作用の法則」の本質・中核を成すものが「クーロン力」でした。

 

そしてこの分子同士の「押し合う」作用を「分子間反発力」とし、この分子同士の「引き合う」作用を、「分子間引力」とします。

 

さて、物体が「落下」する場合には一定の「抵抗」が生じます。

 

ここでは分かり易くする為、落下する物体を「固体」とします。

 

そしてこの固体が空気などの「流体」中を「落下」する場合に、この流体から「抵抗」を受けます。

 

そしてこの「抵抗」には、「慣性抵抗」と「粘性抵抗」との二種類の「抵抗」があります。

 

そしてこの「慣性抵抗」は、分子間の「衝突」によるものであり、固体分子が流体分子に「衝突」し、固体正面の空気分子を「分子間反発力」により下方にはね飛ばすことにより生じます。この時「作用・反作用の法則」が作動し、固体分子に「上向き」の力を与えます。これが「落下」における「慣性抵抗」となります。

 

「ムササビ」という動物は、前足と後足との間に「飛膜」を有し、この「飛膜」が広げることで、落下に対する「慣性抵抗」を得て空中を滑空することができます。

 

 

 

 

 

また「粘性抵抗」は、固体分子と流体分子との間に「分子間引力」が作用し、さらにその空気分子が隣の空気分子に粘着し、次々とその「粘着」が「伝搬」していくことによって生じます。

 

この「粘着」によって、固体分子は一定の空気層を引っ張り「押し下げ」ます。この時「作用・反作用の法則」が作動し、固体分子に「上向き」の力を与えます。これが「落下」に対して、「粘性抵抗」となります。

 

ある種の「クモ」は、気候が良く「上昇」気流が生じている日に、「空中」に向かって「糸」を足らします。

 

するとこの「糸」と空気との間に「粘性抵抗」が生じます。

 

クモの糸は、「引力」により「落下」しようとしますが、この「粘性抵抗」によりこの「落下速度」が低減します。

 

他方、このクモの糸の周りの空気は上昇して行きます。

 

結果、総体としてクモの糸は「上昇」して行きます。

 

するとこのクモは、さらに糸を吐き続けます。

 

そしてこのクモの糸が一定の「長さ」になった時、このクモは「上昇気流」とクモの糸の「粘性抵抗」の力を借りて、遠方へと飛び去って行きます。

 

ここで重要なのは、この「粘性抵抗」とともに、クモの糸の「長さ」です。

 

ちなみにこの「粘性抵抗」自体は非常に「微弱」なものです。しかしこの「微弱」な力も、糸が長ければ、その糸の長さに比例して「強力」なものとなります。この「クモ」は、糸を「長く」する事によって「微弱」な力を「強力」な力に「転換」したのです。このことは後に「揚力」を考える上でもとても重要です。

 

 

 

(7)慣性揚力について

 

さて「落下抵抗」についての考察を終えたところで、いよいよ「揚力」の分析へと取り掛かります。

 

ここで「落下抵抗」に、「慣性抵抗」と「粘性抵抗」との二種類あったことにより、「揚力」にも、「慣性揚力」と「粘性揚力」との二種類があるものと考えられます。

 

 

 

まず「慣性揚力」について考えてみます。

 

こちらの方はごく簡単に理解ができます。

 

一枚の「板」を、風に向かって直角に立てます。

 

すると先ほどの「慣性抵抗」により、この板は空気分子を前方にはね飛ばしながら、板自体はその「反作用」により後方に下がります。

 

ここでその「板」を除々に「水平」にして行き、風に対して前方を少し上げて「斜め」の角度とします。

 

すると空気分子は板の分子に跳ね飛ばされて、「前方斜め下方」へと運動して行きます。 ここに「作用・反作用の法則」が作動し、板自体は「反作用」により「後方斜め上方」へと動きます。この時「慣性揚力」が生じます。すなわちこの「後方斜め上方」への運動における、「上方成分」が「慣性揚力」となるのです。

 

この場合における板と水平とが成す角度を「仰角」(ぎょうかく)と言います。

 

「紙飛行機」においては、この「仰角」が非常に重要です。

 

紙飛行機はまず「翼面」を広くすることにより、「落下」に対して「慣性抵抗」を得ます。次に翼の成す「仰角」により、「慣性揚力」を得ます。

 

かくして「紙飛行機」は、一定の距離を滑空することができます。

 

 

 

この「慣性揚力」は、「スプーン」においても生じます。

 

スプーンを取っ手の部分を持って、頭の部分を垂らします。

 

そこでスプーンの凹面部分に「水」を流します。

 

すると水分子とスプーン分子との間に「反発」が生じ、スプーンは凸面側に動きます。

 

これは「上方向」ではなく「横方向」なので、正確には「慣性揚力」ではなく「慣性押力」なのですが、原理としては同じです。

 

ここでもしベルヌーイの定理がこのスプーンに当てはまるならこのスプーンは凹面側に動くはずです。

 

しかし、実際にはスプーンは凸面側へと動きます。

 

この点から見ても、「揚力」の根拠をベルヌーイの定理に求めるのは無理かあると考えら

 

 

 

(8)粘性揚力について

 

さて「慣性揚力」の分析を終えたところで、「粘性揚力」の分析へと取り掛かります。

 

しかし、「慣性揚力」と異なりこの「粘性揚力」の分析は一筋縄では行きません。

 

何故ならば、分子同士の「反発力」に比べて、分子同士の「吸着力」は極めて「弱い」のです。

 

したがってここに生じる「謎」は、「何故」「微弱」な「分子間引力」から「強力」な「揚力」が生じるのか、という点に尽きます。

 

 

 

さてこの「謎」を解明する為には、遠回りするようでも、以前の「定角力」の分析に戻らざるを得ません。

 

この定角力とその定角力のもたらす「反作用」にこそ、この「謎」を解く「鍵」があります。ということで、一旦「定角力」の分析へと戻ります。

 

 

 

ここに水平方向に「等速直線運動」をする物体があるとします。

 

そしてこの物体に対し、例えば「引力」のように鉛直方向から「力」が作用するとします。

 

ここでこの物体が持つ「等速直線運動」しようとする力を「慣性基力」と、この「等速直線運動」を曲げようとする「引力」等の力を「変角力」とします。

 

すると、この「慣性基力」と「変角力」との「結合」によって、「定角力」が生じます。

 

この「定角力」によって、物体は「一定」の軌道「のみ」を運動して行きます。

 

そしてこの運動軌道は「放物線」を形成しますが、「定角力」による軌道であるため、この「放物線」を「定角曲線」あるいは「定角軌道」と呼びます。

 

そしてこの「定角曲線」は、「曲率」を有します。

 

この「曲率」は、「定角指数」によって定めます。

 

この「定角指数」を定めるためには、まず「基準点」を定める必要かあります。

 

そしてこの「基準点」における「t」が「定角指数」となります。

 

水平方向に発射された物体Aが地球Bの「引力」の影響を受けて運動する時、以上のような「定角軌道」上を運動して行きます。

 

 

 

さてここからが「本題」となります。

 

以上、地球Bの引力を受けて、と記載しましたが、実際には、物体Aと地球Bとの間に力を及ぼし合っているのです。

 

ここで「作用・反作用の法則」の「定義」について、これを「広義」に捉えれば「万有力」も「作用・反作用の法則」の対象となります。またこれを「狭義」に捉えれば「クーロン力」が「作用・反作用の法則」の本質ということになります。

 

ここでは考察の便宜の為に、「広義」の意で、「万有引力」を「含めて」作用・反作用の法則と揚力の関係を考察します。

 

 

 

さて「作用・反作用の法則」を考察する上で、地球は大き過ぎるので、その「反作用の影響がよく分かりません。

 

したがって、まずは物体Aと「同じ」質量の物体Bとについて考察します。

 

そして、物体Aとそれに少し離して物体Bとを配置し、「同時」に「同速度」で「同方向」に発射します。そしてこの物体Aと物体Bとは、「絶えず」「同じ力」で引き合っているものとします。

 

 

 

すると物体Aと物体Bとには、その「双方」に「同じ」「変角力」が作用します。

 

その結果、物体Aが「定角軌道」を運動する一方、物体Bも同様の「定角軌道」を運動して行きます。しかしその運動軌道は、「鏡」のように「対称」形となります。

 

そしてやがて両者は相互の「重心」の位置で衝突します。

 

これを物体Aの側から見ると、物体Aの運動が「作用」であり、物体Bの運動が「反作用」であるように見えます。したがって、物体Aに「定角力」が生じているならば、物体Bにもその「反作用」として「定角力」が生じているはずです。

 

ただし前述のとおり、物体Bの「定角軌道」は、物体Aの「定角軌道」と「対称」形となっています。したがってこの物体Bに生じる「定角力」を、「定角反力」と呼ぶこととします。

 

 

 

ここで物体Aと物体Bとの質量を「同じ」としましたが、物体Aと物体Bの質量が違っても、当然同様な関係が成立します。

 

ここで物体Aが軽く、物体Bが重いとします。そしてこの両者はいずれ相互の「重心」しておいて「衝突」します。

 

したがってこの場合、軽い方の物体Aの方が物体Bに比べて「大きく」カーブして行きます。すなわち物体Aの「定角指数」が物体Bの「定角指数」より「大きく」なります。

 

 

 

ここで物体A・Bが共に「等速直線運動」をする場合を考察しました。

 

次に物体Aのみが「等速直線運動」をし、Bは「静止」している場合を考えます。そしてこの物体Aと物体Bとが、互いに対面している間だけ、相互に何らかの「引力」が生じるものとします。ただし、この際物体Bに生じる「回転モーメント」は、無視できるか、あるいは「打ち消し」できるものとします。

 

 

 

すると射出された物体Aは、物体Bと「対面」している期間は、物体Bとのこの「引力」により、「定角軌道」上を運動して行きます。

 

他方物体Bは「全体として」物体Aに引き寄せられて行きます。

 

ここでもし、物体Aが上にあり、物体Bが下にあれば、物体Bに一定の「上向き」の力、すなわち「揚力」が生じることとなります。

 

しかし問題はこの「揚力」が「空気」によって生じる場合、一般的にはこの力はあまりに「弱く」とても「引力」には打ち勝てないということです。

 

 

 

  1. 粘性揚力と物体の形状との関係について

 

ここで問題をさらに「具体的」に考えてみます。

 

ここに一枚の「板」があります。

 

この板の上面に対して水平方向に「風」を送ります。するとこの板付近の空気分子は、「分子間引力」により「吸着」して行きます。

 

この時この各空気分子は「下向き」の「定角軌道」を取ります。

 

これに対して「反作用」により、板分子には上向きの力が作用します。すなわち「微弱」な「揚力」が生じます。

 

しかし次の瞬間、この状況は一変します。

 

各空気分子が、「定角軌道」上を進行するため、いずれは「板分子」に衝突します。

 

この衝突の結果、空気分子は板分子に対して、「降ろす力」すなわち「降力」を生じます。

 

この結果、一瞬生じた「揚力」は、この「降力」によって打ち消され、ただでさえ弱い「分子間引力」の作用も打ち消されてしまいます。

 

このようにして、ただの「板」の状態では言うべき程の揚力は生じません。

 

 

 

次に薄い「紙」について考えてみます。

 

この「紙」の上面に水平方向から「風」を送ります。すると「一瞬」「分子間引力」の作用により紙がこの風に吸い寄せられます。その結果、この紙がめくれ上がります。このめくれ上がった紙に風が直撃します。すると紙は水平に戻ります。すると今度はまた紙が風に吹い寄せられます。以後このくり返しです。

 

「旗」が「パタパタ」とはためくのは、この原理です。

 

これでは「揚力」が生じようもありません。

 

 

 

ここで分かることは、「分子間引力」には、「一瞬」紙を吸い寄せる力はある。しかしこの力が「持続」しないところに問題があります。

 

とすればこの力が「持続」できれば、「強力」な力となるのではないか、ということになります。

 

ただの「板」に「何故」強力な揚力が生じないか?

 

それは、空気が「分子間引力」により「定角軌道」を描き、その「定角反力」によって、「一瞬」揚力が生じるにもかかわらず、その「定角軌道」の先に「板」があり、そこに空気分子が「衝突」する為に、折角の「揚力」が打ち消されてしまうからです。

 

 

 

さて、ここからが重要な「飛躍点」です。

 

まさに「ここがロドスだ。跳べ!」の局面です。

 

この空気分子の先に板があり、この板の存在が揚力の支障となるならば、この板を、定角軌道上に配置しなければ良い。

 

実に単純な結論です。

 

それではどうすればよいか?

 

これも実に単純な結論です。

 

空気分子は定角軌道を描きます。すなわち「放物線」を描きます。

 

とすれば、この「板」の「形」を「放物線」にすれば良い

 

そうすれば、空気分子はこの板に「衝突」することなく、かつ、流入する空気層とこの板との間の「距離」を一定にすることができます。

 

かくして、「翼」の断面の上部を見ると、その「頂点」から後ろは「放物線」の形状を為しています。

 

これにより「翼」は「慣性抵抗」を最小限にします。

 

同時に「翼」は「空気層」に対して、「翼」の全放物面において、「絶えず」「密着」し、その事によって「強力」な「分子間引力」を「保持」します。

 

 

 

(10)粘性揚力と速度との関係について

 

しかしそうであっても、「飛行機」の速度が遅く、したがって翼のうける風速が弱ければ、やはり充分な「揚力」を生み出せません。

 

ここで先に考察したように、定角力は速度の自乗に比例します。

 

ということは、定角反力も速度の自乗に比例するということになります。

 

加えて、風速が大きくなると、これに比例して、「翼」への吸着に参加する空気分子数も増えます。とすると、揚力=定角反力×(単位時間当たりの)吸着空気分子数 ですが、定角反力が速度の自乗に比例し、吸着分子数は速度に比例するのですから、結局「揚力」は、「速度の3乗に比例する」ということになります。

 

以上により、飛行機の「揚力」は、その速度と共に、非常に「強力」となって行きます。

 

かくして、「重たい」飛行機が軽い、しかし無数の高速の空気分子の力を借りて、大空を飛翔することとなるのです。

 

 

 

しかし飛行機の速度が「超高速」となれば、翼に進入する空気分子の流れが、ますます「直線」に近づきます。

 

この状態において「翼」の「定角指数」が変わらないとするならば、空気分子の成す「定角指数」と翼の持つ「定角指数」との「乖離」が生じてきます。

 

この結果、やがて空気分子の流れは翼面から「剥離」し、結局翼は「揚力」を失い、飛行機は「失速」します。

 

この為、超高速で飛行する飛行機は、翼の「定角指数」を「小さく」する必要があります。すなわち翼を「薄く」する必要があります。

 

 

 

他方、飛行機の飛行速度が低下していく場合、一方では「定角反力」が減少しつつ、他方では単位時間当たりに吸着する空気分子数が減少していきます。この結果「揚力」が急速に減少し、この場合も揚力の低下により、やはり「失速」する可能性があります。

 

このため、飛行機は低速時に「フラップ」を張り出し、「翼面積」の増大で翼上面に生じる「粘性揚力」の減少を補います。同時に、フラップは「降下」に対して、「慣性抵抗」および「慣性揚力」を生じます。これにより飛行機は、一定の速度低下にもかかわらず、一定の「揚力」を維持しつつ滑走路に着陸することができます。

 

 

 

これでめでたしとしたいところですが、実は若干の補足が必要です。

 

一般に飛行機の重心は、翼の「頭頂部」付近にあります。

 

そしてこの「頭頂部」より「後方」の部分に揚力が生じることとなります。

 

この結果、「モーメント」の作用により、この翼と飛行機とは、この頭頂部付近を中心に「回転」しようとします。

 

この為この「回転」を抑える為に何らかの「工夫」が必要となります

 

この為一般的には飛行機の胴体は「ニンジン」型となります。すなわち前方に「太く」、後ろになるにしたがって「細く」なっています。

 

飛行機の形状をこのようにすると、容易にこの「回転モーメント」を抑えることができます。これにより翼面は持続的に「水平」を保つことができます。

 

 

 

(11)揚力の本質について

 

以上により、飛行機の「揚力」の原理・本質についての考察を終了し、この「揚力」の原理を他に応用してみたいと思います。

 

 

 

さて、流体が定角運動をする場合には、これに対応する固体の形状は「放物線」であるのが、一番効率が良いわけです。

 

しかし一定の範囲では、放物線と円とは「近似」しています。

 

したがって「揚力」は球体や球状体でも生じます。

 

パラシュートはその広がりによって「落下」に対して、「慣性抵抗」を生じます。同時に「上部」が「球状」となっている為、一定「粘性揚力」を生じます。

 

フリスビーは主に落下に対する「慣性抵抗」によって滑空するといえるでしょう。

 

またスプーンの凸面に水流を当てても、「粘性揚力」の原理でスプーンは凸面方向に動きます。

 

回転するボールも同じです。

 

回転によって風速が相対的に速くなった部分により強く「定角反力」が作用します。すなわち「粘性揚力」が作動します。その結果、ボールは回転に風速が速くなった部分の方向へと曲がります。

 

 

 

したがって「(粘性)揚力の要素」とは何かと言えば、以下の3点につきることとなります。

 

すなわち、①「分子間引力」が作用すること。②物体の「形状」が、「定角曲線」(放物線)もしくは定角曲線に「近似」した「円曲線」等であること。③「分子間引力」の作用を飛躍的に強化する一定の「速度」があること。

 

以上、「分子間引力」、「定角曲線」、「速度」の3者が結合するとき、「(粘性)揚力」が生じることとなります。

 

すなわち、「分子間引力」・「定角曲線」・「速度」の3要素の結合が、「(粘性)揚力の本質」ということになります。