張力と重力とについて
(2018年1月22日執筆)
(2018年1月31日加筆補正)
1 鉛直抗力及び重力の二つの基本形態
「鉛直抗力」の伝達には、二つの基本形態があります。
一つは、「鉛直抗力」が「下」から、すなわち床や地面から、直接物体Aに作用する場合。
もう一つは、「鉛直抗力」が逆に「上」から、すなわち天井等から直接物体Aに作用する場合。
以上二つの基本形態があります
まず「下」から鉛直抗力が、例えば床からその上にある物体Aに作用する場合。
この場合、基本的に床の「一点」から、その一点を通じて物体Aに鉛直抗力が作用します。
その結果、物体Aの内部に「加速度伝搬の遅延」が生じ、順次その物体Aの「下方」へと、「慣性力」が凝縮して行きます。そしてその物体の「下方」に凝縮した慣性力が、その物体Aの「重力」となります。
他方、天井や、あるいは物体Aを持ち上げた人間の「手」などを通じて、鉛直抗力が物体Aに作用する場合、その鉛直抗力は物体Aに対し、「上」から作用することとなります。
この場合においても、基本的に「手」の「一点」から、その一点を通じて物体Aに鉛直抗力が作用します。
その結果、物体Aの内部に「加速度伝搬の遅延」が生じ、順次その物体Aの「上方」へと「慣性力」が凝縮して行きます。そしてその「物体の「上方」に凝縮した慣性力が、その物体Aの「重力」となります。
ここでこの「鉛直抗力」の伝達経路の違いにより、「重力」が、物体Aの「下方」に生じる場合と、「重力」が、物体Aの「上方」に生じる場合との、二つの場合があることとなります。
すなわち「鉛直抗力」と同様、「重力」にも「二つ」の基本形態があることとなります。
2 重力における二つの基本形態における共通点
このように、「鉛直抗力」の伝達経路の相違により、「重力」の基本形態も相異なる「二つ」の形態に分かれますが、ここで重力のこの二つの基本形態の間に、「共通点」があります。
まず、この二つの基本形態において、「鉛直抗力」は物体Aに「直接」・「一点」に作用しています。
また、物体Aに鉛直抗力が作用するその「作用点」・「接触点」に、「重力」が生じています。
このように、鉛直抗力及び重力の二つの形態のいずれにおいても、鉛直抗力が物体Aに作用するその「作用点」で重力が生じるのであり、ここでは「重力現象」が「重力の本質」と密接不可分な形で現出しています。
しかし、「張力」における「重力現象」を扱うやいなや、「重力現象」と「重力の本質」との「乖離」が生じてきます。
つまり「重力の本質」が「重力現象」の背後に隠れ、「重力現象」を観察しただけでは、「重力の本質」をつかむことが難しくなります。
この「現象」と「本質」との「乖離」は、何も「重力」に限ったことではなく、むしろ「普通」のことです。まっすぐな棒を水に入れると、曲がって見える、あるいは地球の自転により、太陽が昇り下りするように見える、等々こういうことは日常不断にあり、現象の背後にある「本質」を把握する努力が必要となる所以です。
3 単張力と重力
「張力」を考察する以上、物体Aを「吊るす」ことが基本となります。
したがって、「張力と重力」との関係を考察するに際しては、この「第2形態」との関係で考察を行うこととなります。
ここで、物体Aを天井から、一本の「ひも」Sで天井から「吊るす」こととします。
そしてこのひもの先の物体A側をP点、天井側をQ点とします。
すると、この物体Aを天井から吊るすやいなや、物体AのP点に「重力」が生じます。
ここで「ひも」が「一本」ですから、ここにかかる「張力」を「単張力」と表現します。「ひも」が「二本」となる場合には「複張力」として、後ほど分析します。
さて、この「単張力」において生じる「重力現象」は、重力の「基本的第2形態」と、非常に似通ってはいますが、決定的に異なる点があります。
それはP点とQ点との「位置関係」です。
重力における基本的第2形態においては、P 点とQ点とが「直接」に「接触」していました。
すなわち「重力点」であるP点と、「鉛直抗力の起点」であるQ点とが、「接触」していました。
しかし今や、このP点とQ点との間に「ひも」Sが介在しています。
つまり、「重力点」であるP点と、「鉛直抗力の起点」であるQ点とが、「乖離」してしまったのです。
たったこれだけのことですが、このことにより多彩な「張力重力現象」が生じてくるのです。
4「引力」、「鉛直抗力」、「重力」との相互の関係について
ここで張力と重力作用との分析に移る前に、繰り返しになりますが、引力、鉛直抗力そして重力との関係について、改めて述べさせて頂きます。
物体Aを天井から吊るした場足、物体Aはまず「引力」で落下します。
この「落下」を食い止めるのが「鉛直抗力」です。
すると引力とこの鉛直抗力とが「吊り合い」ます。
これにより、物体Aは「落下」せず、物体Aは「静止」します。
ここに2種類の力が、物体Aに作用しています。
一方は「空間的力」であり、「引力」です。
「引力」は、物体Aに「引力加速度」を与えようとします。
他方、「鉛直抗力」は「物的力」であり、物体Aに「物的加速度」を与えようとします。
ここで、重力の「本質論」で述べたように、「引力加速」は「慣性力」を生ぜず、「物的加速」のみが、「慣性力」を生じます。
したがって、この場合において、物体Aについて、鉛直抗力による「慣性力」は生じるが、引力による「慣性力」は生じません。したがって、両方の力が均衡する場合において、一方の鉛直抗力の側にのみ「慣性力」が生じます。
そして物体Aの内部に生じた「慣性力」が、鉛直抗力との接点に凝縮したものが「重力」となります。
このことを、「引力」同志の「吊り合い」と比較すると、このことはより良く分かります。
ここに地球と月とがあり、その引力の「均衡点」に小惑星があるとします。
その均衡点において、地球の引力と月の引力とは、等しい大きさで、また互いに逆方向に、その小惑星に作用します。
この場合、この小惑星に対し地球の引力が「重力」を生じることはありません。
逆に、月の引力がこの小惑星に対し「重力」を生じることもありません。
結果、この小惑星自体の「引力」を別とすれば、地球も月もこの小惑星に対して「重力」を与えず、この小惑星は「無重力」となります。この場合、いわゆる「重さ」は生じません。
「引力」と「引力」との「吊り合い」は、このようなものとなります。
この点が、「引力」と「鉛直抗力」との「吊り合い」と、「引力」同士の「吊り合い」との、決定的な「違い」です。
このように「重力」は、「引力」を父とし、「鉛直抗力」を母としながらも、そしてその双方の面影を携えながらも、その双方から一定「独立」した存在として、独自の道を歩むのです。
5 「張力」の生成と伝達
さて物体Aを「ひも」Sで天井から吊るしました。
すると今や物体Aに「慣性力」が生じ、それが「凝縮」したP点に「重力」として結晶しています。
他方、「鉛直抗力」は天井の起点Qから、順次「ひも」Sに浸透し、物体AのP点へと到達します。
ここで「ひも」S自体に生じる「慣性力」は微小なものとして無視します。
この天井のQ点には、「地球全体」から「微小鉛直抗力」が合流し、鉛直上方へと向かう一本の「合力」、すなわち「鉛直抗力」が生じます。
そして、「ひも」Sは、天井のQ点に凝縮する「鉛直抗力」を、物体AのP点へと「伝達」するだけの役割を担います。
こうして、天井の起点Qに凝縮した「鉛直抗力」は、「ひも」Sを伝って物体AのP点に到達し、そこから物体Aに「内部」へと浸透する中で「慣性力」を生じ、その慣性力が物体AのP点へと凝縮し「重力」となります。
こうして生じた「重力」が逆に「ひも」Sを押し下げようとします。
この結果、「ひも」Sには、「上方」へと向かう「鉛直抗力」と、「下方」に向かう「重力」との、「二つの力」が「同時」に「逆方向」に作用します。
この結果、この双方の力に対抗するために、「ひも」Sに「張力」が生じます。
今、物体AのP点に生じた重力が、「ひも」SのP点側の先端部分S1を押し下げようとします。これに対して、そのS1部分において、「鉛直抗力」が「ひも」S1を引き上げようとします。すると「ひも」S1は、その部分から引き裂かれないように、その部分のさらに「上」の「ひも」S2部分に「張力」を生じます。
しかその「ひも」S2部分も、そこで引き裂かれないように、さらにその上のS3部分に「張力」を生じます。
そして、「ひも」Sの各部分が互いに「張力」を生じ合い伝達し合ううちに、「張力」は最終的に、「鉛直抗力」の起点Qに到達します。
かくして、P点に生じた「重力」の「作用」は、「ひも」Sの各部分における「張力」を通じて、最終的に鉛直抗力の起点Qへと「伝達」されます。
他方また「鉛直抗力」の「作用」もまた「ひも」Sの各部分における「張力」を通じて、最終的に物体AのP点へと「伝達」されます。
ここに重要な結論が生じます。
すなわち、物体Aにおいて「慣性力」が生じるのは、物体Aの「内部」であり、それが「重力」として結晶するのは物体AのP点である。しかしこのP点に生じた「重力」の「作用」は、「ひも」Sの「張力」を通じて、P点とは「離れた」Q点へと伝達される。
このように「張力」を媒介として、「重力」から「重力作用」が生じ、この「重力作用」が「張力」を媒介として、遠く離れた地点へと「伝達」される。このことが非常に重要な内容となってきます。
そして、「重力」の「発生場所」から遠く離れた地点にも、「張力」を媒介として「重力作用」が及ぶため、「張力現象重力」においては、「重力作用」が「重力」そのものに見え、その結果、「重力の本質」が見えづらくなることとなります。
他方、「重力」と「張力」とにより、「重力作用」が生じる結果、この「重力作用」を様々な方面に活用できることとなります。
6 重力と重力作用
以上のように、「ひも」Sで吊るされた重力は、まずは「張力」と吊り合い、次には、「張力」と「張力」同士が吊り合い、最終的には「張力」と「鉛直抗力」とが吊り合うこととなります。
この結果、「重力」自体は物体AのP点に凝縮しますが、その「重力作用」は順次「ひも」Sを通って、「鉛直抗力」の起点である天井のQ点へと「伝達」されます。
その結果、このP点からQ点に至る、その「任意の点」において、そこに生じる「重力作用」の「力の大きさ」は、「重力」の「大きさ」と「等しく」なります。
したがって、このP点からQ点における「全ての点」において、「重力作用(力)」の大きさは、「重力」の大きさと、「等しく」なります。
その結果、ここで例えばこの物体Aの質量が1㎏であり、そこに生じる「重力」が1㎏重であるとすれば、このP・Q間のどの位置でその「重力作用(力)」の大きさを測っても、「等しく」1㎏重となります。
これは、このP・Q線上の1カ所だけでなく、2カ所、3カ所と測定点を増やしても、同じ結果となります。
そして、この物体のAが鉛直に吊り下げられていることから、この「重力作用(力)」の「方向」も「等しく」なります。
すなわち、物体Aを「単張力」で吊っている場合において、P・Q間の線上における「重力作用(力)」の大きさは、「ベクトル」においても、「重力」と「等しく」なります。
以上により、新たに重要な結論が導かれます。
すなわち、「単張力」で吊り下げた場合において、「重力」自体はP点の1点に凝縮しているが、その「重力作用(力)」は、P・Q間の「線上」に存在し、その「大きさ」と「方向」、すなわち「ベクトル」は、物体Aに生じる「重力」の「ベクトル」に等しい、との結論が導かれます。
7 重力作用の応用
このように「重力」のベクトルと、「重力作用」のベクトルとが、全く「同一」になる結果、「重力」の「本質」は「現象」の背後に隠されてしまい、「本質」の把握がますます困難となります。
しかし他方では、この「重力作用」と「重力」とのベクトルの同一性を利用して、物体Aの質量を簡便に計測する事ができるようになります。
すなわち「吊りはかり」が、それに該当します。
まず天井から「ワイヤ」で、「吊りはかり」と吊るします。
そしてその下に、また物体Aを吊るします。
すると、ワイヤ等の重さを差し引いて考えると、この「吊りはかり」が計測する「重力作用」の大きさと物体Aの「重力」の大きさは、全く同じとなります。
このように、人はこの「重力作用」を大いに活用することができます。
8 複張力現象重力について
以上「単張力」における張力現象重力についての考察を終えたところで、いよいよ「複張力」における重力現象の分析へと進みます。
「複張力」が「単張力」と異なる点は、天井における「鉛直抗力」の「起点」が1カ所ではなく、2カ所あるという点です。
ここで、鉛直抗力の「新たな起点」を「起点R」とします。
この「複張力」における「重力現象」、すなわち「複張力重力現象」においては、「単張力重力現象」と関連しつつも、「単張力重量現象」とは異なる、「新たな」重力現象が生じます。
そして、この「複張力重力現象」の分析においては、「重力」そのものよりも、むしろその「重力作用」の方が重要となる局面が生じます。
ここにおいて、「重力」そのものは物体Aにおいて生じているが、その「重力作用」は、Q点・R点に及んでいる、と一々記述して行くと、煩雑でありまた正確を期するがあまり複雑となり、文章の意味が分かりづらくなってしまいます。
そのため、「重力作用」ではなく「重力」が、あたかもQ点・R点に生じるかのような記載をする場合があり得ます。
「重力の本質論」としては、間違った記載ではありますが、「現象重力論」を、簡便に分かりやすくするためには、止むを得ない場合もあるかとも思います。しかしこの場合においても、「重力の本質論」は、しっかりと捉えておく必要があります。
8 重力の分割について
さてこの節で解明すべきことは、物体Aの位置をP点、鉛直抗力の起点をそれぞれQ点・R点とした場合に、「重力」(重力作用)が、如何にQ点とR点に、分割・分配されるのか、ということです。
それを考察するために下図を参照ください。
(図)
【文書に図面をうまく貼付できないため、ご面倒ですが、参照図(張力)をご参照ください。】
ここでは、P点に物体Aがあり、この物体Aを「ひも」でQ点及びR点から引っ張っているとします。
そしてこのP点が「静止」した状態で、その鉛直上方の天井部分をO点とします。
そして、このOQ間の距離をa、OR間の距離をbとします。
S点及びT点は、作図上の必要から設けたもので、図のとおりです。
ここで、物体Aにかかる「引力」はUです。この引力に対してQ点及びR点から伝搬してくる「鉛直抗力」が、この物体Aを支えます。
起点Qから伝搬してくる鉛直抗力は、「ひも」PQを伝わって伝搬してきます。
したがって、ここに伝搬してくる「鉛直抗力」は、この「ひも」PQの「張力」の「方向」に影響を受けます。
起点Rから伝搬してくる鉛直抗力は、「ひも」PRを伝わって伝搬してきます。
したがって、ここに伝搬してくる「鉛直抗力」は、この「ひも」PQの「張力」の「方向」に影響を受けます。
「ひも」PQと「ひも」PRの張力は、それぞれ、水平成分と鉛直成分とに「分解」できます。
そして、「ひも」PQと「ひも」PRの「水平方向成分」は、互いに「逆方向」で「同じ大きさ」になります。
もし、この両成分が、互いに逆方向で同じ大きさでなければ、P点における左右の力は「吊り合わず」、物体Aは「静止」できません。
ここで物体Aは「静止」しています。したがって、この左右の力は、すなわち両張力の水平成分は、互いに吊り合っています。
次に、「ひも」PQ及び「ひも」PRにおける「鉛直成分」ですが、この双方の「鉛直成分」の「合計」が、とりも直さず「鉛直抗力」となります。
そしてこの「ひも」PQに生じる「鉛直抗力成分」をP1,とし、「ひも」PRに所汁「鉛直抗力成分」をP2とすると、図のようになります。
ただし、鉛直抗力成分P1につういては、その値をより明確に示すために、あえて鉛直抗力成分P2の「下」にも書き加えています。
これは、ここに鉛直抗力成分P1が生じるという意味ではなく、単に鉛直抗力成分P1の値を、図上に明示するためだけのものです。
そしてこの鉛直抗力成分P1及びP2を合計したもの、すなわち「総」鉛直抗力をPとすれば、このPの値は「引力」Uの値となります。そしてその「方向」は、引力とは「逆方向」です。
ここでまず、三角形PSRに注目します。そして、P点から線文RSに垂直に線を引き、その線と線分RSとの「交点」をT点とします。
そして線分STの値をP1′とし、線分RTの値をP2′とします。
ここで、三角形PSRの「内側」に、「小三角形」があり、その小三角形と三角形PSRとが「相似」であることが分かります。
そしてこの小三角形のうち、線分RS側の「辺」の大きさが、鉛直抗力P1+鉛直抗力P2の合計、となっています。
したがって、P1:P2=P1’:P2’ となります。
したがって
P1÷P2=P1’÷P2’
P1×P2’=P1’×P2
ゆえに P2’=P1’×P2÷P1 ・・・・①
となります。
また図より、三角形QSRと三角形PSTとは「相似」です。
したがって、線分QR:線分RS=線分PT:線分TS となります。
したがって、
線分QR÷線分RS=線分PT÷線分TS ・・・・②
となります。
ここで、線分QR=線分OQ+線分OR=a+b です。
また、線分RS=線分TS+線分TR=P1’+P2’ であり、
線分PT=線分R=b で、線分TS=P1’ です。
したがって、②式より
(a+b)÷(P1’+P2’)=b÷P1’ ・・・・③
となります。
③式より
(a+b)×P1’=b×(P1’+P2’)
a×P1’+b×P1’=b×P1’+b×P2’
よって
a×P1’=b×P2’ ・・・・④
これに、式①を代入しますと
a×P1’=b×(P1’×P2÷P1)
=b×P1’×P2÷P1
ゆえに
a=b×P2÷P1
したがって
a÷b=P2÷P1 ・・・⑤
また同じことですが、⑤より
a:b=P2:P1
=P2÷(P2✕P1):P1÷(P2✕P1)
=1÷P1:1÷P2 ・・・・⑥ 【 逆比(逆数の比)関係 】
となります。
これを「鉛直抗力」を主体として考えると、天井Q点及びR点に生じる「鉛直抗力」の大きさは、天井のO点とQ点及びR点との「距離」によって定まり、O点からの距離が大きければ大きいほど、そこにかかる「鉛直抗力」は 小さくなり、逆位O点からの距離が小さければ小さいほど、そこにかかる「鉛直抗力」は大きくなることが分かります。
ここから重要な結論が導かれます。
すなわち、起点Q及び起点Rに供給される「鉛直抗力」の値の「比」は、O点から各起点(起点Q及び起点R)までの「距離」に依存し、その「距離」の値の「逆比」(逆数の比)となる。以上です。
9 「二重重力」について
このように、供給される「鉛直抗力」が、起点Qを経由するものと、起点Rを経由するものと、「二重」になる結果、これによってP点に生じる「重力」もまた「二重」となります。すなわち、P点には「二重重力」が生じます。
ここで起点Qから伝搬する「鉛直抗力」によって生じる「重力」をP1とし、起点Rから伝搬する「鉛直抗力」によって生じる「重力」を重力P2とし、物体Aによって生じる「総重力」をPとすれば、
総重力P=部分重力P1+部分重力P2
となります。
それとともに、起点Q及び起点Rに生じる「重力作用」の大きさも、これらの「部分重力」の大きさによって、それぞれ決定されます。
このように、「複張力」の作用により、O点から各起点までの距離の「逆比」によって、P点における「重力」が「分割」され、これれに従って、Q点及びR点に「重力作用」が「分配」されます。
10 側面複張力重力現象について
以上は、物体Aを、その「上部」のP点から吊り下げる場合について、考察してきました。
この場合については、単張力であれ複張力であれ、「重力」は物体Aの「上部」に凝縮してきました。
他方、物体を「床」においた場合などについては、物体Aの「重力」は物体Aの「下部」に凝縮してきました。
それでは、この物体Aを、物体Aの「側面」で牽引すると、その時「重力」はどのようになるかについて、考察をしてみます。
具体的には、「安定」のためにこの物体Aを、物体A自体の中央よりやや上よりの「P①点」及び「P②点」で、吊るすこととします。
そして起点Q点から物体AのP①点へ、起点Rから物体AのP②点へ、それぞれ「ひも」でつながり、吊り下げられているとします。。
するとこのP①点及びP②点を通じて、それぞれの「鉛直抗力」が流入してくるはずです。
そしてこのP①点及びP②点によって区画される「面」を「P①P②面」、略して「P面」とすると、この「P面」より「上部」の物体Aについては、「下から上」へと「鉛直抗力」が流入してきます。
この結果、この物体Aの「上部部分」の「重力」は、このP面へと凝縮してきます。
他方、このP面より「下部」の物体Aについては、「上から下」へと「鉛直抗力」が流入してきます。
するとこの場合においても、この物体Aの「下部部分」の「重力」は、同じくP面へと流入してきます。
この結果、この場合物体Aの「全重力」は、物体Aの「P面」に凝縮します。
そして、このP面に凝縮した「重力」が物体AのP①点とP②点とに、それぞれ分割されます。
そして、この分割された「重力」の「重力作用」が、P①点から起点Q点、P②点から起点R点へと「分配」・「伝達」されていきます。
以上、「張力現象重力論」にはまだまだ、興味ある課題がありますが、一旦「張力重力現象」を後にして、次の課題に進みたいと考えます。