遠心力について

 

はじめに(遠心力の「類型」について)

 

一口に「遠心力」といっても、その「言葉」は様々な意味で使われています。

ここでは、そのうちの4種類の「遠心力」について、考察を進めていきたく思います。

ただしここでは、考察の簡素化のために「円運動」に関する「遠心力」のみを考察することとします。

 

まず第1のパターン

① 「地球の自転による『遠心力』によって、同じ質量の物体でも、赤道に近いほど重さが軽くなる。」と述べる場合

 

第2のパターン

② 「人工衛星が円軌道を採るのは、『遠心力』と引力とが吊り合っているからだ。」と述べる場合。

 

第3のパターン

③ 「回転する宇宙ステーションの中では、『遠心力』により重力のような力が生じる。」と述べる場合。

 

第4のパターン

④ 「回転するコマが倒れないのは、『遠心力』の作用による。」と述べる場合。

 

以上、4種類の「遠心力」について、それぞれその本質について、考察を進めていきたく

思います。

 

以上4種類の「遠心力」は、それぞれ「共通点」もありますが、本質的な違いもあります。

それぞれの「遠心力」の「本質」については、後ほど考察の中で明らかにしていきますが、①と②については、そもそも遠心「力」では「無い」ということです。①と②については、遠心「力」に見えるが、遠心「力」ではない遠心「作用」だということです。

 したがって、①と②については、「遠心力」ではなく「遠心疑似力」と呼ぶこととします。

 

 他方、③については、現実に「力」が生じています。具体的には、回転運動によって、「向心力」と「慣性力」が生じます。この「慣性力」がすなわち「遠心力」なのです。したがって、③についてはそのまま「遠心力」と呼ぶこととします。

 

 ④については、「円運動」(回転運動)に関して生じてはいますが、「遠心力」とは異なる別種の「慣性力」です。したがって、これを「遠心類似力」と呼ぶこととします。

 

 

 ちなみに①の「遠心疑似力」と②の「遠心疑似力」とでは、その「遠心疑似力」が生じる主要な原因が、それぞれ異なっています。

 ここで①の「遠心疑似力」を「遠心疑似力Ⅰ型」と名付けます。そして②の「遠心疑似力」を「遠心疑似力Ⅱ型」と名付けます。

 そしてこの「遠心疑似力Ⅰ型」と「遠心疑似力Ⅱ型」そのどちらも、後に述べる「遠心疑似加速」と「引力の回転」の影響を受けます。

 そして「主として」この「遠心疑似加速」の影響によって「遠心疑似力」を生じるものを「遠心疑似力Ⅰ型」とし、「主として」「引力の回転」の影響によって「遠心疑似力」を生じるものを「遠心疑似力Ⅱ型」とします。

 

 具合的には、地上に物体Aが存在し、地球の「自転」によって、地球の自転とともに円運動をしている場合は、この「遠心疑似力Ⅰ型」に相当し、ここに生じている「遠心疑似力」は、主に「遠心疑似加速」の影響によるものです。

 これに対して、ロケットのように物体Aの速度が高速度となり、ついには地表すれすれを「周回」するに至った場合などは、この「遠心疑似力Ⅱ型」に相当し、この時に生じている「遠心疑似力」は、「引力の回転」の影響によるものです。

 ここで、「遠心疑似加速」や「引力の回転」という概念と言葉が出てきましたが、これについては、のちほど詳しく述べることとします。

 

 以上のことを前置きとして、まずは①の「遠心疑似力Ⅰ型」(遠心疑似加速型)の分析に進みたいと思います。