遠心類似力について(本文)
(1)はじめに
慣性の世界は実に広大で、その全てにわたって考察し尽すことは出来ません。
したがってここでは、慣性の最も単純な形態を主軸に慣性世界の分析を進めて行きたく思います。
具体的には、ニュートンの「運動の第1法則」である慣性の法則と、「運動の第2法則」であるf=maの、その最も単純な「組合せ」を主軸に分析を行ないます。
すなわち、物体の運動における等速直線運動とこの等速直線運動と直角に作用し続ける力との関係について考察を行います
これは、水平方向に初速vで投射された物体が、引力の影響を受けて落下していく場合などが、これに該当します。
そしてこの場合、その物体の運動軌道は「放物線」となります。
(2)等速直線運動について
そこでまずは、この「等速直線運動」について分析します。
一般に物体は、外力を加えたられ場合には加速して行き、そのその後この外力が停止すると、「等速直線運動」の状態に移行します。
ここでその「等速直線運動」について分析すると、その「等速直線運動」には、少なくとも3つの解明を要する内容があることが分かります。
すなわち、
① 物体の運動は、何故「直線」なのか?
② 物体の運動は、何故「持続」するのか? すなわち何故「運動」し続けることができるのか?
③ 物体の運動は何故「一定」なのか?すなわち「等速」なのか?
こうした疑問が生じてきます。
このうち①については、「空間の抵抗」により物体は「直進」する、と一応理解が出来ました。
しかし、②についてはさらに難題です。
「運動」し続ける物体に、今や「外力」は働いていません。
それなのにこの物体は「運動」を続けます。
この物体の回りには、今や「空間」しかありません。
とすれば、「抵抗」が「空間」から生じるとするならば、運動の「動因」もまた「空間」から生じると考えても良いのでは無いか? と、こうした考えが浮かんで来ます。
しかし、この問題を解決するには空間についての分折と知識とが必要です。
したがって当面はこの問題は、問題提起程度に留めて置きたく思います。
しかし、もしこの物体の「動因」が「空間」にあるとするならば、「運動」に対して「空間」は、「抵抗」としての「消極的側面」だけではなく、「動因」としての「積極的側面」と、相異なる両面を持つこととなります。
こう考えると、③の「等速」性も一応理解ができます。すなわち、物体に対して「空間」から、「積極的側面」の作用と、「消極的側面」の作用とが、同じにあるいは僅かな時間差をおいて作用し、その作用が「均衡」する状態において「等速」となるのだ、と一応の理解は出来ます。
(3)加速度運動について
次にf=maについても、一定の分析を行ないます。
一般に、外力が作用するとき、物体は「加速」します。
この「加速」においても、物体の「慣性」は、三通りの作用を行ないます。
第1の作用(運動への抵抗)。 物体の「慣性」は、この外力の「加速」に対して、「抵抗」を与えます。そしてこの「抵抗」も「空間」から生じるものと考えられ、この「空間」の「抵抗」が、「加速」に対する「物体」の「抵抗」すなわち「慣性」として、現象するものと考えられます。
第2の作用(速度の増大と保持)。 この「外力」によって、物体の「速度」は「増加」します。
すなわち、「加速前」の「速度」に対して、「加速中」は「新たな」「速度」を生じ、「加速後」は、その「加速前」の「速度」に「加え」て、この「加速」によって生じる「新たな」「速度」を、「保持」します。
つまり、加えられたこの「外力」は「消滅」するのではなく、「新たな」「速度」として、「保持」されます。すなわち「慣性」において、「外力」が「速度」に「転換」されて、保持されます。この結果、「加速前」の「速度」に、「加速中」に生じた「新たな速度」が加えられ「蓄積」・「保持」されます。
第3の作用(力の発動)。 そして「速度」として「保持」された「外力」は、この物体の「減速」において、再び「力」として発動されます。この時この「力」は、この物体を減速させようとする他の物体に対して、「力」を加え、その他の物体を「加速」しつつ、自らはその「他の物体」から「反作用」を受けて「減速」していきます。
このように「慣性」は、「運動」に対する「抵抗」として作用するだけではなく、「運動」において「速度」を「増加」・「保持」する作用を持ち、また「減速」において、「力」を生じるという三つの側面を有します。
(4)等速直線運動と加速度運動との結合について
こうした「等速直線運動」と、この「等速直線運動」に対して「直角」に作用し続ける「外力」によって、物体の軌道は「放物線」となります。
この放物線は、一定の引力の下で、文字通り「物を放つ」時に生じるものです。
ここでは思考の簡便化の為に、「水平方向」に物体を、初速vで「放つ」ものとします。
すると、物体Aは、地球Bの引力の下で、放物線軌道を描きながら「落下」して行きます。
この様子を側面から観察すると、物体Aの軌道が「放物線」であることが良く分かります。
しかしそれでは、この物体Aは、「等速直線運動」を止めたのでしょうか?
また、「鉛直方向」への落下を止めたのでしょうか?
この物体Aは、放物線軌道を取りながらも、実は「等速直線運動」も「鉛直落下」も、そのどちらも止めてはいないのです。
しかし、「等速直線運動」も「鉛直落下運動」も、共に「直線」運動です。
他方、「放物線」は「直線」ではありません。
とすると、物体Aは「直線運動」をしながら、「放物線運動」をしている、ということになります。
これは一見矛盾しているかのように見えます。
しかし、実際上は何ら不合理な点はありません。
この物体Aの運動を「上空」から観て見ましょう。
すると物体Aは、紛れもなく「等速直線運動」を持続しています。
次にこの物体Aの運動を「正面」から観て見ましょう。
すると、物体Aは「直線上」を「鉛直落下」し続けていることが分かります。
最後に、物体Aの運動を「側面」から観ると、物体Aの軌道が「放物線」であることが分かります。
このことを総括すると、次のようになります。
放物線運動とは、等速直線運動とこれに直交する等加速度運動との統一・結合であり、等速直線運動とも等加速度運動とも異なる第3の存在でありながら、その内部に、等速直線運動と等加速度運動とを保持している、と。
これは「化合」と似ています。
水素と酸素とは互いに異なっています。
そして水素と酸素とが「化合」すると「水」になります。
水の性質は水素とも酸素とも「異なって」います。
しかし、「水」分子の中に、水素と酸素とは、共に消滅せず、「存在」しています。
「等速直線運動」と「等加速度運動」の「結合」の結果生じる「放物線運動」も、この「化合」のようなものです。
(5)慣性基力について
さてここで、「等速直線運動」については、一定の分析を加えて来ましたが、「放物線運動」分析の前提として、「鉛直落下運動」について、今少し分析を加えたく思います。
物体を静止状態から「落下」させると、地球の引力に引かれて「鉛直方向」に「落下」して行きます。
ここで地球の引力加速度gを9.8m/s2とします。
すると、1秒後にはその物体は、「必ず」落下始点から4.9m下に存在します。
これは一見「当たり前」のことのように思われます。
しかし問題は、それが「何故か?」ということです。
「何故」「必ず」そこに在るのかが問題です。
この問題を「解く」為には、「慣性」とは何か、について今少し分析を深める必要があります。
「慣性」とは何か?「慣性」とは、それ自体がひとつの「力」です。
言い換えると、「慣性」には、それ自体「力」としての側面を有します。
この「慣性」自体の有する「力」は、万物の中でも最も「基本的」な力です。
そしてこの「慣性」の「力」を「基礎」として、「慣性力」が成立します。
すなわち「慣性」とは、「基本的」で「基礎的」な「力」です。
したがって、「慣性」自体が有する「力」を、「慣性基力」と呼ぶこととします。
「慣性」について「慣性基力」と表現することは、まず何よりも「慣性」そのものが「力」であることを表わしています。
同時に、「慣性」について「慣性基力」と表現することで、「慣性」と「慣性力」とを厳密に「区別」することができます。
一般に、慣性と慣性力とは、厳密に区別されていません。
慣性も慣性力も、しばしば同じものであるかのように扱われています。
しかし、慣性と慣性力とは、互いに深く関わっており、慣性を基礎として慣性力が成立しますが、本質において慣性と慣性力とは異なっています。
この慣性と慣性力との「違い」は、物体の「落下」において顕著となります。
物体が「自由落下」する時、物体に「慣性力」は生じません。自由落下する飛行機や、周回する人工衛星の中では「無重力」となることがこのことを実証しています。
他方、「慣性」についてはどうでしょうか?
自由落下する物体は、なお「慣性」を有しています。
何故それが「分かる」のでしょうか?
自由落下している飛行機の中で、空中に二つの「球」(たま)が浮かんでいるとします。
この二つの球に「同じ」大きさの「力」を加えた場合、「質量」の小さい、すなわち「慣性」の小さい球ほど大きく「加速」され、速度が速くなるからです。
この様に「慣性」と「慣性力」とは、互いに異なっています。
(6)慣性基力と引力との均衡点について
さてそれでは、この「慣性」が、物体の「落下」運動とどう関わっているのか?
ここで、「慣性基力」という概念が威力を発揮します。
まずは地球Bの「引力」が物体Aを、地球の中心方向に、すなわち「鉛直」方向に引っ張ろうとします。
しかし、物体Aは「慣性体」です。
したがって「慣性基力」を有します。
そして、この「外力」たる「引力」に対して「抵抗力」を発動します。
すなわち「慣性基力」を発動します。
しかし「持続力」たる「引力」の作用によって、物体Aは除々に地球の中心へと引っ張られて行きます。
すなわち、物体Aは、一方では「慣性基力」によってできるだけ止まろうとし、他方では「外力」たる「引力」によって動かされようとします。
ここにこの「慣性基力」と「引力」との相克と均衡とが生じ、その結果「慣性基力」と「引力」との「均衡点」が生じます。
そしてこの「均衡点」自体が、時間の経過とともに「移動」して行きます。
このことにより、落下から1秒後に「何故」物体Aが落下始点4.9m下に「必ず」存在するのか、が明らかとなります。
すなわちその落下から1秒後における、「慣性基力」と「引力」との「均衡点」が、「そこ」に「在る」からです。そして物体Aはその「均衡点」において「安定」します。
これに「落下」運動における一種の「静止」です。
「静止」状態において物体は「安定」しています。
静止している物体を、「その位置」から「移動」させるには「外力」を加えなくてはなりません。
「均衡点」上の物体についても同様です。
均衡点上の物体を、上下左右何れの方向に動かすにも「新たな」「外力」が必要です。
この意味において、均衡点上の物体の状態は、「静止」状態に近いと言うことが出来ます。
しかし「落下」運動においては、この「均衡点」自体が、時間の経過とともに移動して行きます。
この結果、落下から2秒後における「均衡点」は、落下始点から19.6m下に存在するところとなります。
(7)均衡点と外力との関係について
ここで「均衡点」という言葉を使いました。
何故「均衡点」と言うかといえば、この「均衡点」において、「慣性基力」と「引力」とが、「均衡」し、「安定」するからです。
この「安定」は、「落下」しながらの「安定」です。
そして、この「安定」を崩そうとすれば、「新たな」外力が必要となります。
これが故に「均衡点」と表現するのです。
それでは、もしこの「外力」の大きさが変動したらどうなるか?
ここでは「外力」である「引力」が変動したらどうなるか?
例えば「引力加速度g」が9.8m/s2の2倍の19.6m/s2となればどうなるか?
すると1秒後の物体の位置は、落下始点から9.8m下となります。
逆に、「引力加速度g」が、4.9m/s2となればどうなるか?
すると1秒後の物体の位置は、落下始点から2.5m下となります。
このように「外力」の大きさによって、落下における「均衡点」は移動します。
「外力」が大きくなれば、落下始点と1秒後の「均衡点」との「距離」はより「大きく」なり、「外力」が小さくなれば、落下始点と1秒後の「均衡点」との「距離」は「小さく」なります。
(8)均衡点と引力との関係について
しかし、ここで問題が生じます。
ここでは「引力」だけが「均衡点」の位置に影響し、肝心の「慣性基力」が、「均衡点」の位置に、全く影響しないように「見えます」。
何故ならば、ガリレオの実験により、1秒後の物体の位置は、物体の「質量」に関わらない、ことが明らかになっているからです。
落下による「均衡点」の位置が、物体の「質量」、したがって「慣性」・「慣性基力」に関わらないとしたら、そもそも落下する物体に「均衡点」そのものが存在しないのではないか、との疑問が生じます。
この問題を解決するためには、「引力」そのものの分析をさらに進める必要があります。
(9)引力と引力加速度との関係について
まずは「万有引力」の公式に戻ります。
万有引力の公式によれば、そこに生じる「引力」をfとすると、次のようになります。
すなわち、
f=G×m×m′÷r2
となります。ちなみにGは「万有引力定数」です。
ここでmを物体Aの質量とし、m′を物体Bの質量とします。
そして、物体Aも物体Bもともに宇宙空間にあるものとします。
すなわち互いの引力以外には他のいかなる「外力」の影響も受けない環境にあるものとします。
ここで考察の便宜のために、G=1、r=1とします。
すると f=m×m′ と簡略化されます。
ここで物体Aの引力加速度をgとし、物体Bの引力加速度をg′とします。
すると f=mg であり f=m′g′となります。これを変形すると
g=f÷ m、g′=f÷m′となります。
ここでm=1、m′=1とすると
f=G×m×m′÷r2=1×(1×1)÷12=1となり
g=f÷ m=1÷1 =1、g′=f÷m′=1÷1=1 となり、g、g′とも同じ値となります。
次に、m=2、m′=2としてみます。
するとf=G×m×m′÷r2=1×(2×2)÷12=4となります。
したがって、
g=f÷ m=4÷2=2、g′=f÷m′=4÷2=2となり、gとg′とも同じ値とはなりますが、m=1、m′=1の場合と比べて、g、g′の値が、それぞれ2倍となっています。
すなわち物体Aと物体Bとの「引力」は「4倍」になったが、物体Aと物体Bに生じる「引力加速度」は4÷2=2となり、gの値は「2倍」に留まったこととなります。
このことは、物体A(また物体B)に生じる「外力」たる「引力」は「4倍」となり、本来ならばこの「引力」に「比例」して、「引力加速度g」もまた「4倍」になるべきところ、「何らか力」が、これを一定押し止めたこととなります。
ここでm=1の場合とm=2の場合とを比較すると、「質量m」が「2倍」となっています。
この為、この「質量m」が、「引力加速度g」減少に影響を与えているものと考えられます。
しかし、「質量m」についての「引力」については、既に考慮済みです。したがって残るのは「質量m」の「慣性」しかありません。したがって、この「質量m」の「慣性」・「慣性基力」が、「加速度g」の「減少」の要因となったものと考えられます。
このように「引力加速度g」は「外力」たる「引力」と、「質量」が有する「慣性基力」の相克・統一によって決定します。
物体Aはこの「引力加速度g」の支配の下で運動(加速運動・落下運動)して行きます。
加速運動中の物体Aは、この引力加速度gの支配の下で、各瞬間瞬間について、その「均衡点」を通過して行きます。何故ならば「引力」と「慣性基力」とが、その「均衡点」において「均衡」し、その結果、その物体が「安定」するからです。
ここでいう「安定」とは、「静止状態」における「安定」と同様に、「他の」外力を加えられない限り、その「位置」を変えない状態を言います。
(10)絶対引力関係と相対引力関係について
次にm= 1、m′=2としてみます。
するとf=m×m′=2
g=f ÷m =2÷1=2
g′=f÷m′=2÷2=1
となります。
以上の結果
質量1の物体Aの引力加速度は2となり、質量1の物体Bの引力加速度は1となります。
すなわち、「軽い物体ほど速く加速し重い物体ほど遅く加速」します。
「引力」におけるこの関係を「絶対引力」関係と呼ぶことをします。
「軽い物体ほど速く加速し重い物体ほど遅く加速する」?
これは「ガリレオの実験」と矛盾するではないか?と思われるかも知れませんが、心配は要りません。
ガリレオの実験に戻ります。
ここに物体Alと物体A2があり、物体Alの質量をm、物体A2の質量をm′、物体Alの引力加速度をg、物体A2の引力加速度をg′とします。また地球Bの質量をMとし、物体Alと物体A2とはそれぞれ地球Bとで絶対引力関係にあるものとします。
そして、この絶対引力関係の中で、物体Alに生じる引力をfとし、物体A2に生じる引力をf′とします。
その上で、m=1、m′=2とし、これを代入します。
すると
f =m×M=1×M=M
f′=m′×M=2×M=2M
g=f÷ m=M÷1=M
g′=f′÷m′=2M÷2=M
となり、
g=M=g′
となります。
つまり、質量mが1の物体A Iも、質量2の物体A2も、結局は「同じ」値の「引力加速度」となります。
何故ならば、物体A2の「質量」が物体Alの「質量」の「2倍」となることにより、地球Bとの間の「絶対引力」も「2倍」になったが、物体A2の「質量」が物体Alの「質量」の「2倍」になる事により、「慣性」・「慣性基力」も「2倍」になったからです。
この結果、「引力」による「引力加速度」の増大分が、「慣性基力」の増大によって打ち消され、結局AIと「同じ」「引力加速度」に落ち着いたこととなります。
この結果、「軽い物体も重い物体も同じ加速度で加速(落下)する」こととなります。
これを「相対引力」関係と呼ぶこととします。
したがって、「絶対引力」関係において、軽い物体ほど速く加速され、「相対引力」関係において、軽い物体も重い物体と同一の速さで加速される、ということになります。
(11)均衡点の連鎖について
以上により、「相対引力」関係において、軽い物体も重い物体も、その「均衡点」の「位置」が変わらないのは、したがって「同時」に着地するのは、「慣性基力」が作用しないからでは無く、逆に、「慣性基力」が作用する結果であることとなります。
ここまで来て、ようやく「放物線軌道」の本質の分析に取りかかることができます。
これまでに述べたように、この「放物線軌道」とは、「等速直線運動」と「鉛直落下運動」とが、「結合」したものでした。
ここで「等速直線運動」とは、「慣性」の持つ「積極的側面」と「消極的側面」とが結合したものでした。
言い換えると「等速」直線運動とは、「慣性」の持つ、「運動」についての「能動性」と「抵抗性」という「相対立」する両面の「統一」.「均衡」であると言えます。
なぜ「均衡」と言うかといえば、「等速直線運動」をする物体は、その「等速直線軌道」上にある限り「安定」しているからです。
ここでいう「安定」とは、「外力」の介在を要しない、ということを意味しています。
このように、「等速直線運動」においても一定の「均衡」が存在し、「等速直線運動」をする物体は、「等速直線」上を「速度」と「時間」によって定められた各「均衡点」上を通過して行きます。
かくして、「等速直線運動」する物体にとって、その「等速直線」とは、「均衡点」そのものの「連鎖」であり、したがってその「等速直線」とは、等速「均衡線」に他なりません。
ここで「放物線軌道」とは、こうした「等速直線運動」と、「鉛直落下運動」の結合であり、そのいずれにおいても物体は、「均衡点上」あるいは「均衡点中」に存在するものでした。
したがって、その「等速直線運動」と「鉛直落下運動」の「結合」たる「放物線運動」において、「放物線運動」をする物体は、同じく各「均衡点」を通過して行き、その各「均衡点」において「安定」しており、その各「均衡点」の「連鎖」が、「放物線軌道」を形成するものと考えられます。
かくして、「放物線軌道」を運動する物体は、その「均衡線」上を通過します。
したがって、「放物線軌道」を取る物体は、その「均衡点」の「連鎖」が形成する「均衡線」上に在る限りにおいて「安定」しています。
これを「逆」に言えば、その「均衡線」である「放物線軌道」を外れようとするならば、「安定」を「崩す」こととなります。
この「安定」を「崩す」場合には、「静止」した物体を動かす場合のように、「新たな」「外力」が必要となります。
そして、この「外力」が加えられない限り、放物線軌道をとる物体は、その放物線軌道から1mmも外れることがありません。
このように、この「放物線軌道」をとる物体にとって、この「放物線軌道」は「厳然」たるものであって、「外力」の作用がない限り、一義的・絶対的なものです。
このように、「放物線落下」をする物体にとっての、この「放物線軌道の絶対性」こそ、これから考察する「遠心類似力」の「根本的基礎」となります。
そして.この「放物線軌道の絶対性」をもたらす要因は、この「放物線軌道」が、実は「均衡点」の「連鎖」であり、したがって「均衡線」である、ということにあります。
(12)放物線軌道の基本公式について
放物線軌道についてさらに分析・考察を進めるにあたり、まずその「前提」を再度明らかにしておきます。
当面の考察、の対象は水平方向に投射された物体が、「鉛直方向」に作用する「引力」の影響を受けて、「放物線落下」する場合における「放物線運動」です。
つまり、水平方向に投げたボールが、「放物線軌道」を描きながら「落下」するような場合です。
この時の物体の「初速度」をvとします。
そしてここで考察するのは「相対引力」です。
すなわち、物体の軽・重を問わず、「同じ」「引力加速度」を生じる場合の「引力」です。
したがってこの場合における「引力加速度」をgとすると、この「引力加速度g」は、物体の軽・重に関わらず「同じ」値となります。
当面はこうした場合に限定して考察を進めます。
まず投射地点をO(オー)とします。
次にこのO点から物体Aが速度vで、「水平方向」に運動したとしたならば、
その場合におけるt秒後の物体Aの「位置」をP点とします,
そしてそのP点から、同じくt秒間落下した場合における物体Aの位置をQ点とします。
する物体Aはt秒後には、このQ点に在ることとなります。
ここで考察の便宜のために、この物体Aが、xy座標上を運動するとします。
そしてこのO点をxy座標上の0(ゼロ)点とします。
するとまずx=vt となります。
したがって t=x÷vとなります。
またy軸への運動は、その「鉛直落下距離」をsとすれば、 s=-1÷2×g×tの2乗となります。
ここでこの式に、t=x÷vを代入します。
すると2y=g×x2÷v2となります。
これを整理すると、
2s×v2=g×x2となります。
これがこの「放物線運動」をする物体Aの「放物線軌道」についての「方程式」ですので、この「方程式」を放物線軌道の「基本公式」と呼ぶこととします。
そしてxy座標上で言えば、Q点の座標は(x、-s)となります。
そしてこの「基本公式」から、さまざまな「公式」が派生します。
(13)定角指数及び定角度数について
ここでまず、この「基本公式」においてg=1、s= 1の場合を想定します。
すると、この「基本公式」は次のようになります。
2×v2=x2
ゆえに√2×v=x
すなわちO点からP点までの「距離」は、その「初速度」に「比例」します。
するとv=1ならば x=√2
v=2ならば x=√2×2
v=3ならば ⅹ=√2×3・・・、となります。
ここでsとの比率を求めてみます。
ここでsとの比率をRとし、R=s÷xとします。
するとここではs=1なので、
v=1ならば R=1÷√2=0.71
v=2ならば R=1÷2√2=0.35
v=3ならば R=1÷3√2=0.24
となります。
これは初速度vが速ければ速いほど、その「放物線軌道」が「直線」に近づいていることを表わしています。
すなわち物体Aの「運動」における「均衡点」が、「直線」に近づいていることを示しています。
これを「角度」で見るならば、
v1=1ならばR=1÷√2=tanθ=0.71 ゆえにθ =35.4度
v2=2ならばR=2÷√2=tanθ=0.35 ゆえにθ =19.3度
v3=3ならばR=3÷√2=tanθ=0.24 ゆえにθ =13.5度
となります。
このように放物線軌道上を任意のQ点が移動する場合、点POQがなす角度θは次々と「変化」して行きます。
しかしそうであっても、初速度vと外力(ここでは引力加速度g)が定まれば、そして基準となる点Pとするならば、そのP O Qがなす「角度」は、常に「一定」となります。
例えば上記のように、初速度vが1で、引力加速度gが1であり、基準点を1とするならば、θは「必ず」35.4度となります。
このように、「一定の条件」が定まれば、その成す角度θは「必ず」一定の値となることから、この場合における角度θを「定角度数」と呼ぶこととします。
またこの角度θの場合におけるtanθを「定角指数」と呼ぶこととします。
したがって先ほどのRがR=tanθとなることから、このRが「定角指数」となります。
ここで「何故」このような面倒なことをするかと言えば、「放物線」を「識別」・「区分」・「分類」するためです。
無数に生じる「放物線」を詳細に「分析」する為には、何らかの方法でこの「放物線」を明確に「識別」する必要があります。この「識別」を手っ取り早く行なう方法がこの「定角度数」であり、「定角指数」なのです。
ここで「円」と「放物線」とを比較してみます。
「円」には全て「中心点」があります。したがって「円」はその「半径」によって「識別」することができます。
同時に「円」はその「半径」rの「逆数」によって、その「円」の「曲率」を計算することができます。
そして、この「曲率」によって、この「円」の「平坦度」を測ることができます。
そして「円」において、この「曲率」が小さければ小さいほどこの「円」は「平坦」であり、したがって「直線に近い」ことが分かります。
しかし、「円」と違って「放物線」には、「頂点」はあっても「中心点」はありません。
したがって「放物線」には「半径」がありません。
したがって、このままでは「放物線」の「曲率」を算出することができません。
それぞれの「形」が「全く同じ」である「放物線」をいかに明確に「識別」し、かつそれぞれの「曲率」を明確にするのか?
この目的のために敢えて「定角指数」という概念を導入することとしました。
したがってこの「定角指数」は、「放物線」における「曲率」を表わしています。
この「定格指数」によって、茫漠としてつかみどころのない「放物線」を明確に「識別」するとともに、その「放物線」の「平坦度」を明確にすることができます。
すなわち、「定角度数」θや「定角指数」Rが小さければ小さいほど、その「放 物線」は「平坦」であり、したがって「直線」に「近い」こととなります。
(14)定角曲線について
以上により、「定角指数」の意味と目的が明確となりました。
そして、この「定角指数」によって全ての「放物線」が「識別」・「区分」・「分類」できることとなりました。
そして次に、この「定角指数」によって識別される「放物線」を、「定角曲線」と呼ぶこととします。
ここで「定角指数」で識別される「放物線」を「定角曲線」と呼ぶには、一定の「意味」があります。
これは、「一定の条件」の下での、その「放物線軌道」の「一義性」.「絶対性」を表わしています。ここで言う「絶対性」とは、一定の条件の下では、物体は「必ず」その「放物線軌道」上を運動せざるを得ないこと、また「一義性」とは、無数に有り得る「放物線軌道」の中から、唯一「その」軌道上のみを運動すること、を表わしています。
この放物線軌道の「絶対性」・「一義性」を示す為に「定角曲線」と表現することとします。
それではこの「定角曲線」の「絶対性」・「一義性」は何に起因しているのでしょうか?
それは「力」と「力」の「均衡点」上に「定角曲線」かあり、この「均衡点」が連鎖したものがこの「定角曲線」であることに起因しています。
すなわちこの「定角曲線」とは、「慣性基力」と「外力」との「均衡」の結果生じます。
この「慣性基力」と「外力」との「均衡」の結果、「慣性基力」が「外力」に対して、「相対的に」大きい場合、この「定角曲線」は.より「直線」に近づきます。すなわち「定角指数」が「小さく」なります。
逆に「慣性基力」に比し「外力」が「相対的に」大きい場合、この「定角曲線」は「直線」から離れていきます。すなわち「定角指数」が「大きく」なります。
このように、「慣性基力」が「定角指数」の値に影響を与え、逆に「外力」が「定角指数」に影響を与える限りにおいて、物体Aが「一定」の定角軌道・定角曲線を保持・運動しようとする力あるいは作用を「定角力」と呼び、逆に、この定角軌道を変更させようとする外力を「変角力」と呼ぶこととします。
ここでこの「定角曲線」は、この「慣性基力」と「外力」たる「変角力」との「均衡」の上に成立しますが、この定角曲線を生成・保持する「定角力」は、「相対的」なものです。
具体的には、「慣性基力」が例え「一定」であっても、「外力」たる「変角力」が「相対的に」大きければ、結果的に「定角指数」は「小さく」なり、「定角曲線」は「直線」に近づきます。
逆に、「外力」たる「変角力」が「一定」であっても、「慣性基力」が「相対的に」「小さければ」、「定角指数」は「大きく」なり、「定角曲線」は、「直線か」から離れていきます。
このように「慣性基力」また「外力」のいずれか一方の大きさが「絶対的」であっても、他方の大きさが変化すれば「定角力」は変化します。この意味において、「定角力」は「相対的」なものとなります。しかし他方、慣性基力と外力との値がいったん決まれば、これによって生じる「定角力」は絶対的なものとなります。
以上により、「定角曲線」の「曲率」は、「慣性基力」と「変角力」との「相対的」関係において、「絶対的」に決定されるところとなります。
(15)静止定角力について
ここでこの「定角曲線」を分析する前に、一旦この「定角曲線」を離れて、これと「類似」した現象について分析・考察を進めることをします。
ここに長さがlm、2m、3mと3本の「棒」が有るとします。
そして、これらのそれぞれの棒は、その片方が「蝶つがい」で固定されてはいるが、この「蝶つがい」の作用によって自由に回転できるものとします。
ここで長さ1mの棒をAl、長さ2mの棒をA2、長さ3mの棒をA3とします。
そしてこれらのそれぞれの棒の他端には「重り」が付いているものとします。
さらにこの「棒」自体には「重さ」が無いものとします。
その上でそれぞれの「棒」を「水平」にし、同時に落下させます。
するとそれぞれの「棒」、それぞれの「蝶つがい」を回転軸として「回転運動」を始めます。
しかし、その「回転運動」開始直後のごく短い時間は、「鉛直落下運動」をしているものとみなせます。
ここではとりあえず、その時間を0.1秒とします。
するとA1、A2、A3の「重り」は全て、この0.1秒間に4.9cm落下します。この落下距離4.9cmをそれぞれの「棒の長さ」で割ってみます。
するとこの値は、A1については0.049、A2については0.025、A3については0.018となります。これはいわば先ほどの「定角指数」に相当します。
すなわち棒の長さが長くなるほど、1妙後における棒と水平とが成す角度は「小さく」なります。したがって棒の長さが長ければ長いほど、1秒後において棒は「水平」(対地角度0度)に近い状態を保ちます。
このことは、棒の長さが長ければ長いほど、先ほどの「定角力」に相当する力が大きいことが分かります。
ここでこの先ほどの「定角力」に相当する力を「静止定角力」と呼ぶこととします。
すると、長い棒ほど「静止定角力」が大きく、「水平」(対地角度0度)に近い状態を保つと言うことができます。
すなわち「静止定角力」とは、「外力」(ここでは「引力」)に対して、「当初の角度」(ここでは対地角度0度)を保ち続けようとする能力を表わしています。
棒を「鉛直」に立てた場合も同様です。
棒が鉛直に立っているとします。
すなわち棒が対地角度90度で立っているとします。
そしてこの棒が倒れようとする時、長い棒ほど「静止定角力」が「大きい」ため、結果、倒れにくくなります。
これを大人と子供とに当てはめてみます。
すると大人の方が子供に比べて身長が大きい、すなわち身体の長さが長いです。
この結果、大人と子供と比較して大人の方が「倒れにくい」ことが分かります。
子供は大人に比べて重心が低い、したがって一見大人に比べて倒れにくいように思われます。
しかし、実際にはこの「静止定角力」の作用により、倒れる時子供は一瞬で倒れてしまいます。
それでも大人に比べて子供は軽く、かつ身体の重心の持つ位置エネルギーが小さいため、例え倒れても比較的軽傷で済むことにはなるのですが。
この「静止定角力」は、「綱渡り」のに使用する長い棒、すなわちバランスポールにおいても作用しています。
このバランスポールが長ければ長いほど、この「静止定角力」の作用により、バランスポールはより容易に「水平」(対地角度0度)を保ち続けることができます。
人間がバランスを崩すと、その時生じる力がこのバランスポールを回転させようとします。このとき「静止定角力」が作用しますが、短かいバランスポールだと「静止定角力」が弱いため、あまり役には立ちません。
しかし、長いバランスポールだとより強い「静止定角力」が作用します。
この「静止定角力」が作用するのはほんの「一瞬」です。しかしこの「一瞬」の間に人間は身体の「重心」を移動させて「バランス」を取り戻すことができます。
この場合において、このバランスポールは同時に「てこ」の役割も果たします。すなわちより少ない力で態勢を立て直すことができます。
このように「静止定角力」は様々な局面において現れます。そしてこの「静止定角力」は無意識の内に、様々な場面において活用されています。
(16)運動定角力について
それではこの「静止定角力」を離れて、運動時における「定角力」に房ります。
この「運動」における「定角力」を「運動定角力」あるいは単に「定角力」と呼ぶこととします。
具体的には、初速vで水平方向に投射した物体Aが「放物線軌道」すなわち「定角曲線」上を運動していく場合において、「初速」が大きければ大きいほどその「定角曲線」は「平坦」となり、「直線」に近づきます。
逆に「初速」が小されば、「相対的」に「変角力」が大きくなり、「定角曲線」は、「直線」から離れて行きます。
ここで「基本公式」2v2×y=g×x2戻ります。
そして、gとyが「一定」の場合を考えます。
ここでは考察の便宜の為に、g=1、y=1とします。
すると基本公式は、
2×v2=1×x2
したがって x=√2×v となります。
これをもとに「定角指数」Rを求めてみます。
するとR=y÷x=1÷(√2×v)=1÷(√2×v) となります。 となります。
すなわち 速度vが大きければ大きいほど、「定角指数」Rは「小さく」なります。
この結果、「速度」vが大きければ大きいほど、その「定角曲線」は「直線」に近づく、という結論が導かれます。
(17)自転車の直進運動と定角力との関係について
この「結論」を、「自転車」や「バイク」の運動に当てはめてみます。
すると、速度の大きい自転車ほど「定角指数R」が「小さく」、結果、「直進性」を保つこととなります。
このことにより、自転車の「直進運動」の「謎」が解けます。
自転車の速度が遅い時、なかなか真っ直ぐには進めません。
しかし、「速度」を上げると何故か自転車は真っ直ぐに進むことができます。
これが「定角曲線」の力であり、「定角指数」減少の効果です。
速度が速ければ速いほど、自転車の「定角指数R」は小さくなります。
その結果、「直進」を妨げる「外力」に対して、より強い「直進性」を保つことができます。
何故ならば、この自転車の「定角曲線」こそは、この「外力」との「均衡線」であるからです。
もしこの「均衡線」より1mmでも外れるためには、「新たな」外力」、すなわち「追加外力」が必要となります。これが「定角曲線」の「絶対性」です。
この結果、「速度」が充分速ければ、この自転車の成す「定角曲線」はゆるいカーブを描いて行きます。
例えば、「右方向」に緩いカーブを描いて行きます。
しかし、このままでは、「直進」に「近く」ても、「直進」は出来ません。
自転車が、「全体として」直進するためには、「右方向」への運動を、適宜「左方向」への運動に「切り変える」必要があります。
このためには、一定の「追加外力」が必要です。
人間はこの「追加外力」を半ば「無意識」のうちに発輝しています。
同時に、「タイヤ」の幅が、この「追加外力」の発揮をより容易としています。
しかし、いずれにしても、「右方向」への運動を「左方向」に「切り変える」為には、一定の「追加外力」が必要です。
この「追加外力」は「ハンドルの操作」や「重心の移動」で与えることができます.
ハンドルを「左方向」に切り換えれば、結果的に右方向からの「対地抵抗」を生じます。
結果、この自転車には、右方向からの「追加外力」が加わります。
このようにして、人間は「ハンドル操作」により、「追加外力」を調整することができます。
「定角曲線」は、いかに「直線」に近づこうとも「直線」ではありません。また「放物線」の宿命として、やがて大きくカーブして行きます。
したがってこの「定角力」が作用するのは、僅かな期間です。
しかし、速度が大きくなれば、この僅かな期間がより長くなり、その期間に人間は、ハンドル操作など必要な作業を行なうことが出来ます。
かくして、自転車が右にゆっくりとカーブしているその間に、人間は「ハンドル操作」等により、「外力」を加え、「定角曲線」それ自体を「左方向」へと切り換えます。
そしてその「定角曲線」がゆっくりと左にカーブしているその間に、今度はまた「右方向」にハンドルを切り、「右方向」ヘカーブする「定角曲線」に切り換えます。
こうした操作を繰り返すことで、「全体として」自転車は「直進」します。
人間はこの操作を半ば「無意識」に行なっています。
これは人間が「立って」いる時に、重心の調整を半ば無意識に行なっているのと同じです。
しかし.自転車の「速度」が落ちてくると、この「ハンドル操作」が、しだいに困難となり、否が応でもこの「ハンドル操作」を意識せざるを得ません。
走行する自転車を、前方から観察すると、自転車が微妙に左右に揺れているのが分かります。
このように、自転車が「全体として」直進できるのは、この「定角力」の作用のおかげなのです。
(18)自転車の直立走行と定角力との関係について
また、自転車の速度が遅い場合、「直進」し辛いだけでなく、「転倒」し易くなります。
初心者は、「安全」のために「ゆっくり」走ろうとします。
これはもっともなことではありますが、結果的には「転倒」し易くなります。
自転車が転倒しない為には、やはり一定の「速度」が必要となります。
すなわち自転車で直立走行する為には、一定の「速度」が必要です。
何故でしょうか? 子供の頃、このことが不思議で、一つの「謎」でした。
この「謎」を解く「鍵」は、自転車の「運動」を上空から見ることにあります。
上空から人間の頭の動きを観察すると、この自転車が「転倒」して行く時、「頭」の動きや「重心」の動きも「放物線」を描いて行くこととなるはずです。
ここにも「定角曲線」が現われてきます。
したがって、「速度」を上げれば、「定角力」が増し、結果、その「定角曲線」は、「直線」に近づくはずです。
そのことにより、人はより容易に、ハンドル操作や体重の移動により、体勢を整えることが出来ます。
ここにおもちゃの自転車があるとします。
この自転車をいか速く直進させたとしても、すぐに倒れてしまいます。
子供の頃、これを見て、人間の乗る自転は倒れないのに、おもちゃの自転車は何故こんなにもすぐ倒れるのか、と不思議に思ったことがあります。
おもちゃの自転車は車高が低く「静止定角力」が小さいこともあります。
しかし本質的には、当たり前のことではありますが、このおもちやの自転車は自力でハンドル操作が出来ません。結果、「定角曲線」を切り換える為の「外力」を与えることが出来ません。
このため、おもちゃの自転車はかくも簡単に転倒したのです。
他方、「人間」は「ハンドル操作」が出来ます。そしてこの「ハンドル操作」により、「定角曲線」に「追加外力」を加え、「定角曲線」の方向を切り換えることが出来ます
(19)ジャイロ効果と定角力との関係について
さて自転車の「車輪」が回転し、かつその「回転速度」の増大とともに、自転車の直立走行安定性が増すことから、この自転車の直立走行安定性は、自転車の「車輪」の「回転」に基づくものだ、との考えが生じます。
この考えも全く間違いだ、という訳ではありません。
実際、この「車輪」の「回転」によって、後ほど分析する「ジャイロ効果」が生じます。
したがって、この「車輪」の「回転」が、自転車の直立走行安定性に一定の寄与はしているものと言えます。
しかし、この自転車における直立走行安定性に対する、車輪の回転の影響はかなり小さいものです。
何故ならば、もしこの「ジャイロ効果」の影響が強ければ、「ハンドル」は「車輪」の「回転面」を変えられないからです。
しかし.実生活で体験しているように、自転車での直立走行中でも、簡単にハンドルを操作出来ます。
このハンドル操作が出来ないようであれば、これはそもそも「自転車」ではありません。バイクであっても同様です。
このように、自転車が安定して直立走行できるのは、ジャイロ効果によるのは微少であり、本質的には「定角力」の作用によって直立走行安定性が保持される、と言えるのです。
しかし、自転車の直立走行安定性は、「一見」、「ジャイロ効果」によるものと見えます。またこの「ジァイロ効果」そのものが「遠心力」の作用によるものと「見えます。」
それがゆえに.自転車の直立走行安定性は、「遠心力」によるものであるとの考えが生じます。
しかし.今述べたように自転車の直立走行安定性は基本的にこの「定角力」によるものなのです。
自転車の直進運動性や直立運動性は、このように「一見」「遠心力」の作用のように見えます。したがってこのような作用を「遠心類似力」と見なすことが出来ます。
しかし、この自転車の直立運動性や直立運動性は、「遠心力」の作用の結果ではなく、「定角力」の作用によるものです。
つまり、ここで言う「遠心類似力」とは、結局は「定角力」であることとなります。
(20)定角力と速度との関係について
ここでこの「定角力」について、さらに分析・考察を進めて行きたく思います。
次にこの「定角力」と「速度」との関係の分析に移ります。
この為に.また基本公式に戻ります,
基本公式は
2v2s=gx2です。
ここでxとsとに「値」を入れることにします。この「値」はその後の考察を 容易にする値を入れるものとします。
そこでx=1、s=1÷2とします。
すると
v2=g となります。ここでv=1とすると g=1となります。
v=2とすると g=4 となります。
v=3とすると、g=9となります。
つまり、速度vが増加していくと、gの値そのものが「加速度的」に増加して行きます。
ここでxy座標を考えると、y=-sです。
したがって、v=1、g=1の時に、この放物線・定角曲線は、xy座標上の(1,一2分の1)の点を通ります。
しかし、速度を「2倍」にすると、この「同じ点である(1,-2分の1)を通るためには、「外力」gが「4倍」にならなくてはなりません。
したがって、速度v=1の物体Aの速度がv=2となる場合において、点(1,-2分の1)を通過する為には、当初の「外力」gに3gを「追加」しなければなりません。
ここで当初の「外力」を「当初外力」と呼び、「追加」する「外力」を「追加外力」と呼ぶこととします。
すると、同様にしてv=3の場合は、「当初外力」g=1に対して、「追加外力」g=8が必要となります。
このように、vが増大するにつれその「定角曲線」を保持するのに必要な「所要外力」=当初外力+追加外力はvの値の2乗に比例して増大して行きます。
これを言い換えると、「定角力」は、「速度」の2乗に比例します。
走行する自転車が、直進し、直立できるのは、この「強力」な「定角力」の作用によるものなのです。
これが為に、自転車ばかりでなく.「車輪」のない「スケート」においても、直進・直立ができるのです。
いかに上級のスケーターであっても、一定の「速度」なしに、「片足」で立ち続けることは困難です。
しかし、一定の「速度」に達すれば、「片足」で容易に「直立」することができます。
これは一定の「速度」に伴う「強力」な「定角力」によって、身体が支えられているからに他なりません。
(21)単純定角力と複合定角力について
以上、「相対引力」関係における「定角力」」の作用を見てきました。
またここでの「定角力」物体Aの運動を「一点」の運動として考察して来ました。
この「一点」に作用する「定角力」を「単純定角力」と呼ぶこととします。
しかし.現象世界はさらに多様です。
「相対引力」関係では、「質量」の作用について、特に考察する必要がありませんでした。その為「引力加速度」gも「引力」も、特に区別せずに考察できました。
しかし、一旦この「相対引力」関係から離れると、「質量」による影響が重要となります。
また「定角力」自体も、単純な「一点」だけに作用するものでもありません。
したがって「複合定角力」についても考察する必要があります。
しかし、その全てについて考察し尽すことはできません。
したがってここでは、「複合定角力」の中でも重要で、「ジャイロ効果」をもたらす「傾斜定角力」について、分析・考察を進めて行くこととします。
(22)地球ゴマと遠心類似力とについて
子供の頃、「地球ゴマ」に魅了されました。
回転軸を中心に回転するやや重みのある金属盤を、球状に薄い金属板で覆ったものです。
この金属盤が回転を始めると、この地球ゴマがなかなか倒れようとしないのです。
そして、この地球ゴマの回転面を無理に変えようとすると、この小さな地球ゴマから「異様」な且つ「強い」力が生じるのです。
私は、まずはこの「力」の「異様さ」に驚きました。「重力」の力とも違います。遊園地で体験した「回転する部屋」の遠心力とも違います。
何とも「異様」な力を感じました。
そして次に、この「小さな」地球ゴマから、かくも「強い」力が生じることに驚きました。
あたかもこの小さな地球ゴマと格闘するかのよう感じました。
そして、この「力」が何なのかと尋ねると、「遠心力」だ、ということでした。
しかし、少し長じると、この力を「遠心力」だと言うのはどうも変だ、と思いました。
まずはこの力の「感じ」が全く違います。
また力の「方向」が違います。「遠心力」は、「回転の中心」から「離れる方向」に作用する筈です。すなわち「慣性力」は、「回転面上」に存在しますが、地球ゴマの発する力は、「回転面」そのものを「回転」させようとする時に生じるものです。
したがって、「地球ゴマ」のこの力を「遠心力」によるものと考えるには相当無理があります。
しかし、そうであっても、この地球ゴマが生じる力は、円盤の「回転」に起因することは間違いありません。これは「遠心力」と「同様」です。
したがって、ここでこの地球ゴマが発する力を「遠心類似力」と呼ぶこととします。
(23)地球ゴマと傾斜・複合定角力について
さて、この「地球ゴマ」から生じる「遠心類似力」はどのようにして生じるのでしょうか?
「地球ゴマ」の力は、「地球ゴマ」の「回転面」自体を「回転」させようとする時に生じます。
これを真横から見ると、「回転軸」を傾けようとするときに、この「遠心類似力」が働きます。
ここで、この「地球ゴマ」を「上」から見ると、例えば「反時計回り」に回っているとします。
するとこれを「真横」から見ると、「右方向」に動いているように見えます。
この場合、この「地球ゴマ」の「左端」から現われた部分が、急速に「右方向」に移動して行き、「中央」部を通り、右端へと到り、そこから背面へと消えて行くのが分かります。
すなわち、「真横」から見ると、この「地球ゴマ」は、左端→中央→右端 へと「直線運動」をしていることが分かります。
ここでこの左端をP点、中央をO点、右端をQ点とします。
これを中央O点を中心に左上げ方向に「回転」させることとします。
すると.左端P点が上がり、右端Q点が下がり、中央O点は動きません。
ここでこの線分POを5分割します。
PからOまでを5分割した名部分を、中央O点から左端P点に向かって順に、P1、P2、P3、P4、P5とします。
すると、この「左上げ」回転によって、P1、P2、P3、P4、P5の各部分は「移動」しますが、この「移動」の「程度」は異なります。
P1、に比べてP5は「5倍」の距離を移動します。
しかし.この為には、P5はP1、に比し「5倍」の「加速度」で「加速」しなければなりません。
ここでP1の加速度をa1とし、同様にしてP2の加速度をa2、P3の加速度をa3、P4の加速度をa4、P5の加速度をa5とします。
すると、a1=1とすると、a2=2、a3=3、a4=4、a5=5 となります。
このように、物体Aを左上方向に「回転」するのに必要な「必要加速度」は、各部分によって異なり、かつ「傾斜状」に変化しています。
すなわち物体Aの「回転面」自体を「回転」させるのに必要な「加速度」は各部分において「一定」ではなく、全体として、回転の中心から外部に到るにしたがって、必要加速度が変化・増大しています。すなわち必要加速度の値が「傾斜」しています。言い換えれば、物体Aの「回転面」自体を「回転」させるのに必要な「加速度」は「傾斜加速度」となります。
中央О点から右端Q点に到る部分についても同様です。
また今ここで「真横」から見えているのは、物体Aの「回転面」の「一番外側」だけです。「回転面」の「内側」は、「真横」からは見えません。しかし.「上」から見ると.「回転」の「中心」を回転の中心として、無数の「同心円」上を、無数の各部分が「回転」していることが分かります。
すなわち、「見えている」外側部分以外に、真横からは「見えない」「内側部分」も回転し、そこにおける「加速度」も、やはり「傾斜加速度」となっていることが分かります。
かくして、その「外側部分」を見るだけでも、P→O→Qへと「直線運動」に対して.「各部分毎」に、それぞれの「定角力」が生じることが分かります。
O点からP点に近づくほど、また逆に、O点からQ点に近づくほど、回転面の回転に必要な「外力」は「大きく」なります。
すなわち逆に言えば、「定角力」が「大きく」なります。
かくして「定角力」も傾斜し、「傾斜定角力」となります。
しかし、事態は今少し複雑です。
何故ならば、P→O→Qへと至る「直線運動」そのものが、「直線運動」ではあるけれども、「各部分」における「速度」が異なっているからです。
真横から見た「水平方向」の「速度」はそれぞれ異なっています。
なぜならば、P5部分における運動は、右方向への運動よりも、「手前方向」への運動の方が、比率が多きいからです。
かくしてP5部分における「速度」をv5とし、同様にして速度P4、P3、P2、Plを定めると、P5<P4<P3<P2<P1 となります。
かくして.実際の「定角力」はかなり「複雑」なものとなります。
加えて、「質量」の要素が加わります。
相対引力関係においては、「質量」の影響はあまり考えなくてすみましたが、相対引力関係を離れて、一般的な考察となると、「質量」の影響の考察は欠かすことが出来ません
かくして、物体Aの名部分は、各部分における「傾斜加速度」、「直線速度」、「質量」という3つの要素の影響を受けながら、物体Aの「外側」でも「内側」でも、複雑な「複合定角力」を形成して行きます。
この結果、「どの部分」が「最大定角力」を発輝するかは、精密計算あるいは実験・計測による他なく、ここでの考察の対象外とはなります。
しかし、おそらくP点より少し内側において「最大定角力」を形成し、「全体」として「傾斜定角力」を形成していくものと考えられます。
かくして.こうして形成される複雑な「複合定角力」・「傾斜定角力」を手に感じる時、一種「奇妙」な力として、この「傾斜・複合定角力」を感じることとなるのです。
(24)ジャイロ効果について
「地球ゴマ」に生じる「遠心類似力」の「本質」が「定角力」であることにより、「小さな」「地球ゴマ」に、「何故」かくも強力な「力」が生じるのか?という「謎」も明らかになりました。
一般に、「定角力」は、速度の2乗に比例します。
結果、「速度」が一定程度に達すると「強力」な「力」となります。
それが故に、一旦回転し、回転速度が「一定」以上に達した「地球ゴマ」の回転面自体を容易には回転することができないのです。
そしてこの「複合定角力」により、回転面を容易には回転できなくなることから、「定角力」は、「定面力」に転化します。かくして、「回転速度」が速くなれば、なるほど「定面力」も大きくなり、ますます容易には、回転面を回転することが出来なくなります。
そして、回転面が容易には回転しなければ、この回転面の中軸を為す「回転軸」も、ますます傾きにくくなります。
かくして「定面力」は、「定軸力」に再転化します。
この結果、この「地球ゴマ」は「引力」に逆らいつつ、また傾きつつ、しかしなかなか倒れようとはしないのです。
しかし、「定角力」がいかに「強力」な力であっても、それ自体は「絶対的」な力ではなく、「相対的」なものです。
そもそも「定角力」それ自体が「変角力」との「相対的」な関係において成立します。
「定角力」によっていかに「定角曲線」が「直線」に近づこうとも、「この「定角曲線」は、絶対に「直線」ではないのです。
また「定角曲線」が「直線」に近いのも一時のことであって、「放物線」の宿命として、やがて「直線」からは大きく離れて行きます。
すなわち「定角力」は、「相対的」なのです。
以上により、いかに「定角力」が強くても、やがて「外力」の作用により、この「地球ゴマ」の回転面も、除々に傾いて行きます。
回転摩擦や空気抵抗があれば.「回転速度」が落ち、傾く速度はこれにより「加速」されます。
しかし、こうした回転摩擦や空気抵抗が零であっても、「外力」により「回転面」は徐々に傾いて行きます。
この傾きを止めることは出来ません。
これは「定角力」の「相対性」という「内在的」本質から生じるものだからです
しかしそうであっても、勢い良く回転する「地球ゴマ」は、「傾きながら」も、「引力」の作用に抗し、一定時間、立ち続けるのです。
これがいわゆる「ジャイロ効果」です。
(25)慣性基力と空間との関係について
こうして「引力」に抗しながら、傾きながらも立ち続ける「地球ゴマ」を見ていると、この「定軸力」、「定面力」、「定角力」の「本質」に思いを馳せます
これらの「基」をたどれば、結局「慣性基力」へと行きつきます。
支えるものが何もない。それにも関わらず、「引力」に逆らいながら、傾きつつも立ち続ける「地球ゴマ」を見ていると、「空間に力あり」と強く実感します。
一見何もないように「見える」空問、これこそが「慣性」・「慣性基力」・「慣性力」の源である、と強く実感します。
(26)定角反力と運動の第3法則について
さてここで「定角力」の分析から「定角反力」の分析・考察に進みます。
「定角反力」とは、単純に言えば「定角力」の「反作用」です。
ニュートンの「運動の第3法則」は、「作用・反作用の法則」とも呼ばれています。
したがって、次にはまず「運動の第3法則」から分析を行いたいと思います。